情報と物質の科学哲学 情報と物質の関係から見える世界像

情報と物質の関係を分析し、心身問題、クオリア、時間の謎に迫ります。情報と物質の科学哲学を提唱。

連続体濃度は実数とは独立な概念である

2020-07-15 10:56:23 | 数学

実数の集合の濃度は、連続体濃度と呼ばれcで表示されます。
一方、実数の集合とは全く異質な無限記号列集合の濃度もcになるので、連続体濃度は実数の集合とは独立な概念であることが分かります。
以下で、そのことを証明します。

以前のブログで対角線論法には多くの欠陥があることを指摘しましたが、以下では対角線論法が正しいという仮定のもとで議論します。

(定義)有限個の基本記号を無限個並べたものを無限記号列と名付けます。
一例として2つの基本記号 A および B を任意の配列で無限個並べた無限記号列 S を次式で表します。
S = s1 s2s3....、但し、si= AまたはB。
このとき、次の定理が成り立ちます。
(定理1)
  すべての無限記号列 Sを要素とする無限集合Σの濃度|Σ|は非可算です。
  ℵ0 <|Σ|  (1)、ℵ0は自然数の濃度。
(証明)
  無限集合Σに対して対角線論法を適用します。

(定理2)
  無限集合Σの濃度|Σ|は、すべての実数の集合の濃度cに等しい。
  |Σ|= c  (2)
(証明)
  無限記号列 S において、A → 0 、B→ 1とし、先頭に小数点を付ければ2進表示の無限小数になるので、無限記号列と無限小数とが1対1に対応するからです。

(定理3)
  無限小数は、無限記号列の特別なものです。
(証明)
  無限記号列 S において、A → 0 、B→ 1とし、先頭に小数点を付ければ2進表示の無限小数になります。

(定理4)
  無限集合Σは、2値論理演算のもとで加法群になります。
(証明)自明

(定理5)
  無限集合Σに含まれる記号列の中で循環する記号列をすべて含む集合を
Σrep とすると、この循環型無限記号列集合の濃度は可算です。
|Σrep|= ℵ0
(証明)
  周期1の記号列は2つ、周期2の記号列は4つ、以下同様なので、それらに自然数を対応させることができます。

si = f (i)なる関数 f (i) があるとき、その無限記号列を定義可能な無限記号列と名付けます。それ以外の無限記号列を定義不可能な無限記号列と名付けます。
循環型無限記号列は、定義可能な無限記号列です。
有理数の集合は、循環型無限記号列集合の特別なものです。

定義不可能な無限記号列そのものを数学的命題のなかで用いることはできません。
その意味で、定義不可能な無限記号列は非論理的概念です。
これは、定義不可能な無限小数が非論理的概念であることと同様です。

(定理6)
  Σの濃度|Σ|に対して次のいずれかが成り立つとしても矛盾は生じません。
  |Σ|< c  (3)
  |Σ|= c  (4)
  |Σ|> c  (5)
(証明)
  Σに含まれる定義不可能な無限記号列が非論理的概念なので、(3)~(5)のいずれもその真偽性を証明できないからです。
言い換えれば、(3)~(5)のいずれもそれが正しいとしても、あるいは、誤りであるとしても矛盾は生じないからです。

(定理7)
  ℵ0 <|Σ|<c  (6)
を否定することも肯定することもできません。
言い換えると、無限記号列の濃度|Σ|は連続体仮説の反例になり得ます。
(証明)
  (6)式の左半分は対角線論法が正しいという仮定のもので得られた定理(1)の(1)式によります。
一方、(6)式の右半分は定義不可能な無限記号列が非論理的概念であることを用いた(3)式によります。

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時間の正体

2020-07-09 09:10:52 | 物理学・量子力学
以前のブログで「時間は情報概念の一種である」という新しい解釈を提案しました。
今回のブログではもう少し具体的な説明をします。

物質には重さや大きさなどの属性があります。
これらの属性は、秤や物差しで計ることが出来ます。
一方、時間は物質の属性ではありません。
では、時間は一体何の属性でしょうか?!
変化する物質の状態の属性の一つだと思われます。
時計で時間を計るという言葉を頻繁に使います。
でも、物質的に存在していない時間をどうやって計ることが出来るのでしょうか!
実は、“重さを計る”というときの計るという言葉と“時間を計る”というときの計るという言葉には本質的な違いがあるのです!

ニュートンの慣性法則(第一法則)は、あらゆる物体はそれに力が作用しない限り、静止または等速運動をし続けるというものです。
等速運動とは物体の移動距離を所要時間で割ったものが一定であるということを意味します。
この場合、距離と時間が比例関係にあるので比例定数を除けば両者は数値的に等価になります。
つまり、移動距離を計ればその数値が所要時間になるのです。
この事実を新しい時間概念の出発点にします。

まず、剛体で出来た無限に長いレールを作ります。
このレール上には等間隔に目盛が付いています。
この目盛の位置には物体が通過すると“カチッ”という音を出す仕掛けがあります。
いま、このレールの上で剛球を等速度で転がします。
この球がレールについている目盛を通過するたびに“カチッ”という音がでます。
ここで、移動距離はそこまでの所要時間に数値的に等価であるという事実を使います。

物質的存在である球の移動距離は、レール上の目盛で計ることが出来ます。
そのことが物質的存在ではない時間を計ることに繋がるのです!
剛球が出発点から等速でレール上を移動します。
時間目盛上の仕掛けを通過する時に出る“カチッ”という音をカウントします。
そのカウント数の合計は、球が到達した目盛を表します。
それが等価的にその位置までの経過時間になるのです。

カウント数は、物質的概念ではなく情報的概念です。
アナログ式時計のチクタク音の数は、時計の針が動いた距離を表します。
同時に、時間の経過を示しています。
等速運動する剛球による時間は、時計の時間と同じ性格のものです。

以上の分析により、時間は情報概念であることが分かります。
従って、時計は時間を計る機械ではなく、時間情報を定義して創発する機械です。

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情報と物質の科学哲学研究室