実数の集合の濃度は、連続体濃度と呼ばれcで表示されます。
一方、実数の集合とは全く異質な無限記号列集合の濃度もcになるので、連続体濃度は実数の集合とは独立な概念であることが分かります。
以下で、そのことを証明します。
以前のブログで対角線論法には多くの欠陥があることを指摘しましたが、以下では対角線論法が正しいという仮定のもとで議論します。
(定義)有限個の基本記号を無限個並べたものを無限記号列と名付けます。
一例として2つの基本記号 A および B を任意の配列で無限個並べた無限記号列 S を次式で表します。
S = s1 s2s3....、但し、si= AまたはB。
このとき、次の定理が成り立ちます。
(定理1)
すべての無限記号列 Sを要素とする無限集合Σの濃度|Σ|は非可算です。
ℵ0 <|Σ| (1)、ℵ0は自然数の濃度。
(証明)
無限集合Σに対して対角線論法を適用します。
(定理2)
無限集合Σの濃度|Σ|は、すべての実数の集合の濃度cに等しい。
|Σ|= c (2)
(証明)
無限記号列 S において、A → 0 、B→ 1とし、先頭に小数点を付ければ2進表示の無限小数になるので、無限記号列と無限小数とが1対1に対応するからです。
(定理3)
無限小数は、無限記号列の特別なものです。
(証明)
無限記号列 S において、A → 0 、B→ 1とし、先頭に小数点を付ければ2進表示の無限小数になります。
(定理4)
無限集合Σは、2値論理演算のもとで加法群になります。
(証明)自明
(定理5)
無限集合Σに含まれる記号列の中で循環する記号列をすべて含む集合を
Σrep とすると、この循環型無限記号列集合の濃度は可算です。
|Σrep|= ℵ0
(証明)
周期1の記号列は2つ、周期2の記号列は4つ、以下同様なので、それらに自然数を対応させることができます。
si = f (i)なる関数 f (i) があるとき、その無限記号列を定義可能な無限記号列と名付けます。それ以外の無限記号列を定義不可能な無限記号列と名付けます。
循環型無限記号列は、定義可能な無限記号列です。
有理数の集合は、循環型無限記号列集合の特別なものです。
定義不可能な無限記号列そのものを数学的命題のなかで用いることはできません。
その意味で、定義不可能な無限記号列は非論理的概念です。
これは、定義不可能な無限小数が非論理的概念であることと同様です。
(定理6)
Σの濃度|Σ|に対して次のいずれかが成り立つとしても矛盾は生じません。
|Σ|< c (3)
|Σ|= c (4)
|Σ|> c (5)
(証明)
Σに含まれる定義不可能な無限記号列が非論理的概念なので、(3)~(5)のいずれもその真偽性を証明できないからです。
言い換えれば、(3)~(5)のいずれもそれが正しいとしても、あるいは、誤りであるとしても矛盾は生じないからです。
(定理7)
ℵ0 <|Σ|<c (6)
を否定することも肯定することもできません。
言い換えると、無限記号列の濃度|Σ|は連続体仮説の反例になり得ます。
(証明)
(6)式の左半分は対角線論法が正しいという仮定のもので得られた定理(1)の(1)式によります。
一方、(6)式の右半分は定義不可能な無限記号列が非論理的概念であることを用いた(3)式によります。
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