情報と物質の科学哲学 情報と物質の関係から見える世界像

情報と物質の関係を分析し、波束の収縮問題、心身問題、クオリア、時間の謎に迫ります。情報と物質の科学哲学を提唱。

池上、石黒『人間と機械のあいだ』

2024-05-29 14:52:30 | 人工知能・意識
池上高志、石黒浩『人間と機械のあいだ-心はどこにあるのか-』、
講談社(2016,12)
同書には、著者らの簡単な研究紹介と対談があります。

石黒はアンドロイドロボットの研究者として有名です。
マツコ・デラックスのアンドロイドを紹介したテレビ番組もありました。

最近は、アンドロイドの研究から機械人間オルタの研究に移行しています。
オルタの研究は、人間の顔の微妙な表情を再現することで生命とは何かを探ろうとしているようです。

池上は、複雑系の手法を用いて人工意識の構築を目指しています。
複雑系の複雑度がある閾値を超えればヒトの意識が実現できるのではないかと期待しています。

石黒は人工生命、池上は人工意識の構築を目指しています。
しかし、人工生命と生命、人工意識と意識との間には決して超えられない壁があります。

人工生命や人工意識はあくまでも機械人間によるもので、生きている生物とは本質的に違うからです。

石黒や池上など多くの研究者は、見かけが同じなら本質も同じだと主張します。
彼らは、アラン・チューリングを開祖とする機能主義者と呼ばれています。

”心理的時間の速さ”は毎日脳に入力される”新しい情報量”に反比例する!

2024-04-07 11:06:54 | 人工知能・意識
年を取るにつれて月日のたつのが速く感じられます。
どうしてそう感じるのかいつも気になっていましたが、
それを”定量的に説明できる”理由を見つけました。

それは次のような仮説です。

心理的時間の速さは毎日脳に入力される新しい情報量に反比例する」



人間と人工知能による認識には本質的な違いがある

2022-01-30 16:15:28 | 人工知能・意識
深層学習は急速に発展しています。
そのパターン認識能力は、人間のそれを凌駕しているとも言われています。
このことから人工知能は人間と同じ意味で認識しているとされています。
しかし、これは錯覚であることを以下で証明します。

便宜上、手書き数字認識の場合について考えます。

人間は、手書き数字を見てそれがどの数字であるかを判定します。
これが人間による認識と呼ばれるものです。

一方、人工知能の場合は手書き数字を二次元データで表し、そのパターンの特徴を抽出し、その結果をもとにして手書き数字がどの数字であるかを判定します。
これが人工知能による認識と呼ばれるものです。

ここで注意したいのは、人工知能には入力文字を「見る」という機能(仕掛け)がないことです。
更に、入力文字は情報処理の過程で消失することです。

従って、人間の場合のように入力を見ながら手書き数字がどの数字であるかを判定するという状況がないのです。

別な言い方をすると、人間の場合「入力文字は〇〇である」となりますが、人工知能の場合には単に「〇〇である」となって主語がないのです。

人工知能は、手書き数字のパターンが0から9までのどれに該当するかを分類しているに過ぎません。

以上の分析から分かるように、人間の「認識」と人工知能の「認識」には本質的な違いがあります。

「意識は情報処理結果の読取り現象である」説

2022-01-25 09:46:34 | 人工知能・意識
先のブログ「クオリアは感覚野による受容器情報の読み取り結果である」を参考にして今回は感覚以外の意識全体について考察します。

神経回路網で情報処理をしていることは周知の事実です。
脳は、この情報処理の結果を読み取る必要があります。
この読み取り結果が意識という現象となって現れると推測できます。

そこで、これを「意識は情報処理結果の読取り現象である」説として提唱します。

チャーマーズらの意識に関する議論は抽象的なものでしたが、今回提唱する説は意識の現象に合理的な裏付けがあることを示しています。

脳と意識とは情報を介した機能的因果関係にある

2022-01-24 09:12:12 | 人工知能・意識
ロボット内部では物質と情報とが相互作用しています。
ということは、物質と情報とが何らかの因果関係にあることを示唆します。

物質と情報とは異質な存在なので直接的な因果関係は成り立ちません。
この因果関係はロボットの機構によるものです。
ロボットの機構が物質と情報という異質なもの同士の因果関係を作り出しています。
このような因果関係を機能的因果関係と名付けます。

実は、脳と意識とはこのような機能的因果関係にあると推測できます。
この場合、脳と意識との間には直接的な因果関係は有りません。
両者の間には情報が介在しています。

脳は、情報を介して意識と機能的因果関係にあるのです。

代表的哲学者であるチャーマーズは、脳と意識とを直接的な因果関係で理解しようとするので意識をハードプロブレムと呼んでいるのです。

脳は、情報を介在して意識と機能的因果関係にあると捉えれば意識の謎はいくらか解けるのではないでしょうか。