情報と物質の科学哲学 情報と物質の関係から見える世界像

情報と物質の関係を分析し、波束の収縮問題、心身問題、クオリア、時間の謎に迫ります。情報と物質の科学哲学を提唱。

確率回転複素ベクトルと自由粒子に対するシュレーディンガー方程式の解との形式的類似性

2022-05-23 09:06:30 | 物理学
清水明『新版 量子論の基礎ーその本質のやさしい理解のために―』、サイエンス社(2006), pp.145-148
を参考にすると、ポテンシャルの影響がない自由粒子に対するシュレーディンガー方程式解は次式で与えられます。
ψ(x,t) = exp(i(kxt)) / √2π (1)
ここで、(1)式におけるkω は物理定数、xは物理空間内の変数です。

一方、以前のブログで提案した確率回転複素ベクトルψ=Aexp(iθ)において
θ = i(kxt)とおくと、このベクトルは次式になります。
ψ(x,t= Aexp(i(kxt)) (2)
ここで、kω は定数、xは仮想空間内の変数です。

(1)式と(2)式には形式的に類似していることが分かります。

自由粒子を使って二重スリット実験を行うと干渉縞が生じます。
量子力学はこの干渉縞を波動関数ψ(x,t)の重ね合わせによる「確率の干渉」として説明しています。
その際、ボルンの確率解釈を用いています。

一方、以前のブログで確率回転複素ベクトルには確率の干渉という性質があることを示しました。
この性質を用いると二重スリット実験の干渉縞を確率回転複素ベクトルでシミュレートすることが出来ます。

以上の議論からポテンシャルの影響がない自由粒子に対するシュレーディンガー方程式解と確率回転複素ベクトルとの間には何らかの繋がりがあるのではないかと憶測しています。



確率回転複素ベクトルのイメージ

2022-05-21 15:28:31 | 物理学
以下で用いる物理用語はすべて比喩的なものです。
確率回転複素ベクトルのイメージを下図に示します。

先のブログで説明したように図中にある極小な扇形は根源現象の集合であり確率波ψ=Aexp(iθ)と1対1の関係にあります。
この確率波は、粒子源から検出器に向かって位相速度で回転しながら一定の速度で移動します。

確率波は粒子源から波状に広がるので、粒子源から検出器までの経路長が長いほど特定の検出器で粒子が検出される確率は小さくなります。
従って、確率波の振幅Aは経路長に反比例します。

二重スリット実験の場合、二つのスリットから送出される時点での確率波ψ1とψ2は同じ位相を持ちます。
しかし、スリットから検出器までの経路差に違いがあるときにはψ1の振幅A1とψ2の振幅A2に違いが生じます。
同時に、ψ1の位相θ1とψ2のθ2にも違いが生じます。

これらの違いによる確率の干渉のために特定の検出器による粒子の検出確率に違いが生じるのです。
これが最終的に二重スリットによる干渉パターンとして観測されるのです。








回転確率複素ベクトルと確率波

2022-05-19 08:51:54 | 物理学
先のブログで確率複素ベクトルと確率の干渉について提案しました。
今回は、回転する確率複素ベクトルψ=Aexp(iθ)について提案します。

回転確率複素ベクトルとは、仮想空間内で一定速度で回転しながら螺旋状にx軸方向に「移動」するものです。
これを”確率波”と名付けます。
勿論、回転確率複素ベクトルは波動関数とは無関係な概念です。

量子力学では波動関数を確率波ということがあります。
これは、ド・ブロイやシュレーディンガーが波動関数を物質波として誤解したために考えられた概念です。
この話は、H.R.パージェル(黒星榮一訳)『量子の世界』、地人選書1、地人書館(1983)に詳しく載っています。

波動関数の意味についてはボルンの確率解釈がありますが、ボルンはその理論的根拠を示しませんでした。
そこで、確率解釈を理論的に導こうとする提案が多世界解釈を用いたものを含めていくつかあるようです。
ネットで検索すればそれらの情報が得られます。

なお、回転確率複素ベクトルの詳しい性質については随時ブログにアップしていきます。




確率複素ベクトルと確率の干渉

2022-05-18 14:21:11 | 数学
半径Aの複素円を考えます。
この複素円の半径と円周を共にn等分すると複素円はn×n個の素領域に分割されます。
これらの素領域を等確率で生起する根源事象とみなします。
すると、素領域の生起確率は複素円の面積A×Aに比例します。

いま、位相θをもつ素領域が生起したとします。
これと同位相の複素ベクトルψ=Aexp(iθ)と位相θをもつ素領域とは1対1に対応します。
そこで、複素ベクトルψ=Aexp(iθ)の生起確率をA×Aで定義します。
便宜上、0<A≦1/2とします。
このベクトルを”確率複素ベクトル”と名付けます。

次に、2つの確率複素ベクトルをそれぞれψ1=A1exp(iθ1)及びψ2=A2exp(iθ2)とします。
このとき、2つの確率複素ベクトルを合成した確率複素ベクトルψに対して次式が成り立ちます。
ψ=Aexp(iθ)=ψ1+ψ2 =A1exp(iθ1)+A2exp(iθ2)
=A1cos(θ1)+A2cos(θ2)+i{A1sin(θ1)+A2sin(θ2)}

この合成されたψの生起確率は振幅Aの2乗で次式のように与えられます。A×A=A1×A1+A2×A2+2A1×A2cos(θ1-θ2)
なので合成確率複素ベクトルの生起確率は
0≦A×A≦1
となります。

特にA1=A2の場合、
合成確率複素ベクトルの生起確率=1(θ1とθ2が同位相):
合成確率複素ベクトルの生起確率=0(θ1とθ2が逆位相)
が成り立ちます。

0<A1及び0<A2がであるにも拘わらずθ1とθ2が逆位相のときに合成確率複素ベクトルの生起確率が0になるのは奇妙なことです。
この現象は、ψが複素数であることに起因しています。



有理数の剰余演算に関する分配則

2022-05-17 16:12:52 | 数学
通常の剰余演算は、正の整数に対して定義されています。
この場合、a、b、n を正の整数とするとき剰余演算に関して次の分配則が成り立ちます:
a modn = ((a modn) + (b modn))modn

以下で、有理数に対しても同様な分配則が成り立つことを示します。
m、n、p、q を正の整数とします。
すると、q /p を法とする演算は次のようになります。
m1/n1 = m1p/n1q mod(q /p ) (1)
m2/n2 = m2p/n2q mod(q /p ) (2)
m3/n3 = m3p/n3q mod(q /p ) (3)

このとき、次の関係があるとします。
m3/n3 = m1/n1+ m2/n2 (4)
ここで、両辺の剰余演算mod(q /p ) を (1)(2)(3) 式を用いて行うと次式になります。
m3p/n3q mod(q /p ) = ((m1p/n1q mod(q /p ) + m2p/n2q mod(q /p )) mod(q/p )

更に、(4)式を用いると結局次式が成り立ちます。
(m1/n1+ m2/n2) mod(q /p )
 = (( m1/n1 mod(q /p ) + m2/n2 mod(q /p) )) mod(q /p )
これが有理数に関する剰余演算の分配則です。