コラム(233):中道政治への期待
都議選の結果を見て、評論家やジャーナリストの中には「一時の熱狂によって政治が動いた場合ろくな結果を生んでいない」と評したり、「政府の要人の失言や不祥事が投票結果に響いた」とする人がいます。しかし、こうした意見は物事の本質を捉えてないばかりか、投票した圧倒的多数の有権者を愚弄する意見だと思います。
都民はなぜ既成政党を拒絶したのか
都民ファーストの会の勝利は、一過性のものではなく変革を求める都民の要請にしたがって登場した改革の力への期待です。当ブログの『既成政党による政治概念の退潮』で述べたように、既存の政党はすでに国民を幸せにする力はありません。
何事も透明性を確保できない自民党現職都議は、はっきりと都民から忌避されました。また、政権批判与党批判をだけを繰り返す野党に対しては、東京の未来を託すことができないと判断されました。議席数がわずかに増えた共産党も候補者の半数しか当選していません。
都民の選択結果が物語っているのは、様々なしがらみや、特定の組織や人のための既得権益への拒絶です。
既成政党がしっかりした政策と見識を持って都政を担っていたなら、このような結果にはならなかったということです。
既成概念の終焉
日本は、際立った歴史的転換点にあり、世界観、価値観、社会構造、政治構造が大きく変わろうとしています。また、既存の問題意識、既存の党派、既存の思想観念にこだわっていては国民としての一体感を共有することはできません。
これからは、イデオロギー、信条、宗教を越えて、国民の幸福に寄与するためのコンセンサスを形成することが求められます。この中道の視点に立ち、あらゆる人びとの共感を得る政治が必要とされていると思います。
中道とは、中途半端な妥協や、左右の単なる真ん中という意味ではありません。左右に偏ることなく、秩序と調和が取れている政治姿勢を意味します。したがって、中道は、政治的価値であるだけでなく道徳価値をも含んだ人間としての生き方にほかなりません。
もし、政治が、右に傾けば排外主義が横行し、左に傾けば反政府主義が横行し、ともに問答無用の暴力主義がまかり通るだけになります。街頭右翼や極左過激派の両極端を支持する国民はいないように、大多数の国民は、左右の主義主張にはもはや関心はなく、国家の一員として、日本人としての誇りをもって、当たり前に生きたいと思っているだけなのです。
安倍政権の危機は中道からはずれたため
安倍政権を右派政権であるという評価は左派からの印象操作にすぎません。中道であるからこそ支持率は高止まりを維持していたのです。
最近の支持率下落の理由は、中道でクリーンな政治を心がけようとする安倍総理の思いとは裏腹に、自民党の古い政治スタイルの復活を求める議員のスタンドプレイが多かったからです。側近を含めて大半の議員が自らの利権確保のために動ききます。国民のことよりも自らの欲望に主眼を置いている者が不祥事を連発させ、実はその傲慢さを国民が見抜いていたのです。
中道の時代
戦後民主主義は圧力民主主義と総称されるように、声を張り上げる特定の人が利益を享受するという、 「言い得」「ゴネ得」がまかり通っていました。最近では左右両極の主張が強く、メディアが一層煽りたてるように報道します。これが世論のように見えてしまいますが、民意は左右両極に存在するわけではありません。この不健全なシステムは是正されねばなりません。
大切なことは本当の民意を把握しなければ、国の未来を語ることはできないということです。
既成政党が権力の獲得と維持のために掲げてきた政策やイデオロギーはすでに何の意味も持たなくなりました。今求められるのは、政治が「国民の幸福のため」という共通の社会的価値観で昇華させていくことだと考えます。
そのきっかけをつくったのが今回の都議選でした。誰も手をつけなかった旧態依然の政治を打破し、都民のための政治を実現する。これこそが都民の圧倒的支持を得た理由です。逆説的に言えば、都民の選択のほうが、既成政党やメディアよりも時代の胎動を見抜いているのです。
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