赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

②トランプ次期大統領の人事——国務長官他

2025-01-04 00:00:00 | 政治見解
②トランプ次期大統領の人事——国務長官他




前回に引き続き、日本メディアでは報じられることが少ないトランプ政権の布陣について、米政治に精通する専門家に、人隣を含めた詳しい解説をお願いしました。これほどまでに詳しい解説はないと思いますので特別に公開させていただきます。


国土安全保障省長官にクリスティー・ノーム氏

国土安全保障省長官にはクリスティー・ノーム氏が選ばれました。彼女はサウスダコタ州という小規模な州の州知事を務めている女性で、1971年生まれです。連邦下院議員を経て州知事となった彼女は、典型的なエリートキャリアとは異なり、在学中に結婚して大学を中退し、その後、子育てを経て再び大学に戻り、サウスダコタ州立大学を卒業しています。



彼女の学歴は、ハーバードやイェール、プリンストンといった名門校ではなく、地方の州立大学という地味な経歴ですが、それだけに地方で地道に政治活動を積み重ねてきた実績が際立っています。また、共和党の州知事の中でも、いち早くトランプ支持を公言した人物の一人でもあります。

ノーム氏は女性としても注目を集めており、一時は副大統領候補としても名前が挙がっていたことがあります。


CIA長官に指名されたジョン・ラトクリフ氏

トランプ政権におけるディープステートとの戦いの中で、重要な役割を担うとされるのが、CIA長官に指名されたジョン・ラトクリフ氏です。また、国家情報長官には元下院議員のトゥルシー・ギャバード氏が指名されました。この2つの人事は非常に注目に値します。



ジョン・ラトクリフ氏は1965年生まれ、テキサス州出身の法律家で、連邦検事を務めた経験を持つ人物です。彼は第1期トランプ政権の末期、2020年5月から2021年1月まで、国家情報長官としても活躍しました。MAGA(Make America Great Again)派、つまりトランプ派の間では特に信頼の厚い人物で、法務や国家安全保障分野での豊富な経験が評価されています。

ラトクリフ氏には、トランプ政権下で反トランプ姿勢が顕著だったCIAやFBIなどの情報機関を、本来の国家機関として改革するという重大な使命があります。これらの機関は、極左派やグローバリストによって影響を受けてきたとされ、それを徹底的に見直すことが求められています。


国家情報長官に指名されたトゥルシー・ギャバード氏

国土安全保障省には、もちろん情報機関の部門が設置されています。その中には、主に盗聴を専門とする国家安全保障局(National Security Agency, NSA)や、国家偵察局(National Reconnaissance Office, NRO)などの機関があります。これらの情報機関は、アメリカ全体で10以上存在しています。

これらすべての情報機関を統括するのが国家情報長官(Director of National Intelligence, DNI)です。このポジションは非常に重要で、アメリカの情報機関全体を管理し、戦略的な方向性を示す役割を担っています。

この国家情報長官に指名されたトゥルシー・ギャバード氏です。

トゥルシー・ギャバード氏については、これまでも度々取り上げてきましたが、改めてご紹介します。1981年生まれで、ハワイ州選出の元連邦下院議員を務めた人物です。彼女は2020年のアメリカ大統領選挙において民主党の予備選に出馬しましたが、民主党の現状に強い不満を抱き、党を離れることを決断しました。民主党を「腐敗しきった戦争屋の党」と批判し、かつての民主党の理念が失われていると感じたためです。



ギャバード氏は2022年10月、共和党への支持を明確に表明する以前から、トランプ氏の選挙運動を支援していました。彼女は女性として、また陸軍少佐としてイラクの戦地で勤務した経験を持つ人物です。

しかし、彼女の愛国的な活動にもかかわらず、バイデン政権下では「テロ危険人物リスト」に掲載され、空港で不当な荷物検査を受けるなどの嫌がらせを受けていました。このような対応は、彼女自身の軍歴や愛国的な姿勢を考えると、不合理かつ不条理であると言えます。


ギャバード氏が今回指名された国家情報長官の役割は非常に重要です。このポジションは、CIAやDIA(国防情報局)を含む全ての情報機関、さらには国務省をはじめ各省庁の情報部門を統括する立場にあります。インテリジェンスコミュニティ全体を管理し、日々大統領に国際情勢をブリーフィングする責任を担います。そのため、国家情報長官はCIA長官よりも高い権限を持つポジションです。

ギャバード氏は、自身が不当な扱いを受けた経験から、アメリカの情報機関の堕落や問題点を深く理解しています。彼女がこの重要な役職に就任し、情報機関全体を改革していくことは、トランプ氏らしい大胆かつ戦略的な人事と言えるでしょう。


国務長官に指名されたマルコ・ルビオ氏

国務長官にはマルコ・ルビオ氏が指名されています。今回紹介している人々や今後名前が挙がる人物は、ほとんどがトランプ派に属する人物です。共和党の中でも、単に名ばかりの共和党員(RINO, Republican In Name Only)ではなく、中身も保守派の「草の根」トランプ派の人々、つまりMAGA派(Make America Great Again派)が中心です。また、彼らはMAGA派の一般市民からも強い支持を受けている人物ばかりです。

しかし、このマルコ・ルビオ氏は例外と言える存在です。フロリダ州選出の上院議員で、非常にタカ派として知られています。特に反中国や反イランの姿勢は評価されていますが、同時にネオコン色が強い点が特徴です。ネオコン(新保守主義)とは、何かあるとすぐに戦争を選択肢に入れるような考え方を指します。また、彼は上院のミッチ・マコーネル氏のような旧エスタブリッシュメント派、つまり共和党の伝統的な権力層に近い人物でもあります。


このため、MAGA派の人々からはマルコ・ルビオ氏はほとんど尊敬されておらず、「なぜ国務長官という重要なポジションに彼が選ばれたのか」という疑問が生じています。おそらく、MAGA派と旧エスタブリッシュメント派との間で行われた妥協の結果だと考えられます。また、マルコ・ルビオ氏自身、将来的に大統領を目指している政治家の一人です。

この背景に関連する興味深いエピソードがあります。ハドソン研究所は日本でも「トランプ派」というイメージを売り込んでいますが、実際には安全保障分野で反トランプ的な立場をとるネオコン系の人物たちの拠点となっているのが現状です。例えば、ポンペオ元国務長官、ニッキー・ヘイリー元国連大使、バー元司法長官など、トランプ氏を公然と批判し、裏切ったと言われる人物たちがその代表例です。

バー元司法長官に至っては、トランプ政権内部にいた当時からすでに裏切り行為が指摘されており、ポンペオ氏やヘイリー氏も、次期大統領を目指して共和党予備選に立候補する際に、トランプ氏に対する批判を展開しました。しかし、日本の一部メディアでは、彼らを「トランプの腹心」として紹介することもあり、誤った情報が伝えられています。このような報道を見ると、残念ながら誤解が広まっているのが現実です。

さらに、ハドソン研究所からは、「ポンペオやヘイリーは第2次トランプ政権で重要な役職に就く予定である」といった噂話が流されました。しかし、トランプ氏はこれを完全に否定。自らX(旧Twitter)に投稿し、「これらの人物は第1期政権でよく働いてくれたことに感謝するが、第2次政権に招く予定はない」と明言しました。この発言により、こうした噂話は一掃されました。

こうした流れの中で、唯一例外的な存在がマルコ・ルビオ氏です。

MAGA派から不満の声が上がる可能性はありますが、外交は最終的に大統領自身が主導する分野であるため、たとえ国務長官であっても独断で暴走することは難しいでしょう。仮に暴走を試みたとしても、内閣の他のメンバーがMAGA派で固められている以上、その行動は孤立してしまいます。また、トランプ氏が大統領として、方針に反する行動があれば、即座に更迭することも可能です。

マルコ・ルビオ氏自身も非常に頭の切れる政治家であり、現状を見極めながら動いているようです。今年に入ってからは、トランプ派との意見調整を進め、政策の修正を行っている様子が見受けられます。例えば、大規模なウクライナへの軍事援助に反対する立場を取るなど、以前の「戦争推進」の姿勢を改め、和平への道を模索するべきだといった発言をするようになりました。こうした発言は、トランプ氏の政策に近いものとなっています。

このような背景から、マルコ・ルビオ氏の起用は、トランプ氏にとって反トランプ派の取り込みを視野に入れた戦略的な人事である可能性が高いと考えられます。

(つづく)



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①トランプ次期大統領の人事——国防長官

2025-01-03 00:00:00 | 政治見解
①トランプ次期大統領の人事——国防長官




日本メディアでは報じられることが少ないトランプ政権の布陣について、米政治に精通する専門家に、人隣を含めた詳しい解説をお願いしました。これほどまでに詳しい解説はないと思いますので特別に公開させていただきます。


トランプ氏が明言し、正式に指名された人事について、その概要をお伝えします。


国防長官に指名されたピート・ヘグセス氏

まず、国防長官にはピート・ヘグセス氏が指名されました。彼は40代という若さながら、その能力が高く評価されています。

ピート・ヘグセス氏は1980年生まれの44歳で、プリンストン大学を卒業後、陸軍に入隊。イラクやアフガニスタンで実戦経験を積んだ人物です。トランプ政権の第1期において、退役軍人省の長官候補に挙がりましたが、反対の声が多く実現には至りませんでした。

ヘグセス氏は、現在の米軍の「ウォーク化」に対する強い批判で知られています。ウォーク化とは、リベラル左派の影響を受け、軍が本来の戦闘力を損ない、解体に近い状態に陥っている状況を指します。彼は、この現状を打破し、軍を再び戦える組織へと立て直すべきだと主張しています。

最近では、軍での経験を活かし、FOXニュースで司会を務めるなど、メディアでも活躍していました。ヘグセス氏によると、米軍はオバマ政権の8年間とバイデン政権の4年間、計12年にわたり劣化が進んだといいます。その要因には、LGBTQ政策やCO2削減といった優先事項が挙げられています。これらは軍の使命である国防とは無関係であり、戦争遂行能力を低下させるものだという批判です。

こうした弱体化は偶然ではなく、民主党内の極左勢力やグローバリストによる意図的な政策だと、ヘグセス氏は指摘します。国家の中枢を担う軍を解体することは、国家そのものの解体に繋がる重要な一手段だという考えです。この現状を逆転し、軍を再建する必要があるとヘグセス氏は主張しています。

彼は新たな役割を担うこととなるでしょう。陸軍では少佐の階級で退役しており、いわゆるエリート軍人というわけではありません。しかし、今回の長官級人事では珍しくプリンストン大学出身であり、アメリカの名門アイビーリーグに属する大学の卒業生です。それでも、今回のトランプ政権における長官級の人事では、ハーバードやイェールといった他のアイビーリーグ出身者はほとんど見られません。

トランプ政権の大臣級ポストに就く人々には、いわゆる叩き上げタイプが多いのが特徴です。エリートといっても、大都市の学閥に属するタイプではなく、地方で知事として活躍してきた人やビジネスマンとして成功を収めてきた人物が中心です。軍のエリートと言えば、陸軍士官学校(ウエストポイント)や海軍・空軍の士官学校を卒業し、その後、少将・中将・大将へと進むキャリアを持つ人々が思い浮かびますが、ヘグセス氏はそうした経歴ではありません。

彼は実際に戦場を経験し、現場を深く理解している人物です。そして、米軍を本当に改革し、戦える軍隊へと再建するという強い使命感を持っています。こうした背景から、ヘグセス氏は国防長官に指名されました。彼が新たな役割を通じて米軍の再生に取り組む姿勢に大いに期待が寄せられています。


(追加情報)ピート・ヘグセス国防長官候補 vs 嘘つきメディア




ピート・ヘグセス氏、国防長官として大変優秀な方なんですが、それだけに米軍を徹底的に作り直そうとしているため、マスコミがバッシングしています。


これは大きく言えば保守の側からの批判ではありますが、保守でありながら反トランプのウォールストリートジャーナルが、ヘグセス氏のことをスキャンダルや悪口を書き立てて、「トランプも考え直しているんじゃないか」といった内容を報じています。

さらには「トランプがフロリダ州のデサンティス知事を代わりに考えている」ということまで勝手に書いています。これに対してヘグセス氏は、トランプと直接会って話をし「勇気づけられた」と言っています。「全面的に支持すると言われた」とも語っています。

実際のところ、ウォールストリートジャーナルは12月3日に「トランプ氏がヘグセス氏を撤回し、新国防長官としてデサンティス・フロリダ州知事を検討している」という記事を掲載しましたが、これは全く根拠のない飛ばし記事に過ぎません。同様に、ニューヨークタイムズも12月4日に類似の記事を発表しました。

これに対し、ヘグセス氏はCBSの記者に対して次のように語っています。「今朝、トランプ大統領と話をし、私を支持しているので前進し続けるようにと激励を受けた」と述べ、「自身はあくまで戦い続ける」との姿勢を強調しました。

ヘグセス氏を巡っては、女性暴行疑惑などが取り沙汰されていますが、これらは大手メディアによる誹謗中傷に過ぎないとされています。ヘグセス氏側はこれらの疑惑を全面的に否定しています。実際、この「暴行疑惑」というのも、被害者の名前が一切明らかにされておらず、それを追及している関係者の名前も公開されていません。このような曖昧な情報は噂話の域を出ません。

こうした手法は、アメリカのメインストリームメディアが特定の人物を失脚させようとするときによく用いる手段です。匿名の情報を利用して噂を流し、その噂を根拠に批判することで、共和党の支持を揺さぶることが狙いだと考えられます。

現在、共和党は上院で100議席中54議席を確保しています。しかし、4人以上の議員が反対に回ると困難な状況となります。仮に50対50の同数となれば、副大統領の1票で可決可能ですが、ギリギリの状況が続いています。

これに対してヘグセス氏は、自身を批判する記事を掲載したウォールストリートジャーナルに直接投稿し、次のような声明を発表しました。
「I’ve Faced Fire Before. I Won’t Back Down.(これまでも困難に立ち向かってきた。決して引き下がらない)」
彼は、戦場での経験を引き合いに出し、「匿名の中傷に基づくメディアの見せしめ裁判には断固として戦う」との決意を示しました。

さらに、彼の言葉を日本語に訳すと、以下のような内容になります。
「軍での戦闘、転職、離婚、家庭の問題など、これまで多くの試練を経験してきた。私は母をとても愛しており、母もまた私を愛してくれている。これまで常に正直であり、誠実であり、情熱を持って歩んできた。


しかし、多くの退役軍人が次の人生に目的を見出せず、酒に溺れ、うつ病を患い、最悪の場合は自殺に至る状況を理解している。なぜなら、自分もそのような状況を経験したことがあるからだ。


だが、神の恵みによって私は別の道を歩むことができた。我が主であり救い主であるイエス・キリストによって人生を立て直すことができた。私は神の恵みによって救われたのだ。
メディアは匿名の情報に基づいて私を中傷する記事を次々と掲載しているが、これらは典型的な誹謗中傷の手法だ。彼らは証拠も名前も明かさず、私を支持する多くの人々の声は完全に無視している。


彼らはブギーマン(子供を攫う悪魔)のような存在を作り上げる必要がある。それは、私が彼らの組織的愚行に対する脅威であると彼らが認識しているからだ。唯一、この点については、彼らの認識は正しい。」

ヘグセス氏の主張は、メディアが行う一方的な報道や偏見に満ちた攻撃に対して、毅然とした態度を取るものです。彼は、自身が敵対勢力にとって脅威であるという事実を認めつつ、それに屈しない覚悟を示しています。

「グアンタナモ基地やイラク、アフガニスタンで、あるいは州兵として、私と一緒に従軍した人々に話を聞いてみるといいだろう。彼らは私を支持してくれており、私はそれを大変光栄に思っている。どんな戦いにおいても、私は後に引き下がることはしなかった。


今回の戦いでも決して引き下がることはしない。トランプ次期大統領が国防総省を率いる立場に私を選んでくれたことに感謝している。そして、私が期待しているのは、名高い立派な上院議員による公正な指名承認の公聴会である。メディアによる見せしめ裁判ではない。」

と、堂々と反論しています。こうした手法は、以前から繰り返されてきたものです。たとえ清廉潔白な人物であっても、メインストリームメディアが根拠のない噂を立て、その人を引きずり下ろそうとする行為が平然と行われてきました。これに対し、ヘグセス氏は「最後まで戦う」と決意を示しています。

しかし、問題はこれだけにとどまりません。共和党内にも、「RINO(Republican In Name Only)」、つまり「名ばかりの共和党員」と呼ばれる勢力が存在しています。彼らがメインストリームメディアと連携して動くような事態になれば、さらなる困難が予想されます。

こうした背景の中で、この闘いは単にヘグセス氏個人をめぐるものではなく、トランプ政権全体の戦いの始まりを象徴するものでもあるのです。

(つづく)

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2025年のトランプ戦略——ウクライナ停戦、米露関係修復、イスラエル和平

2025-01-02 00:00:00 | 政治見解
2025年のトランプ戦略
——ウクライナ停戦、米露関係修復、イスラエル和平


2025年.トランプ氏の大統領復帰は国際情勢に大きな変化をもたらすことと思われます。国際政治学者の許可を得て掲載いたします。


国際情勢の大きな流れについて考察していきましょう。まず、トランプ氏が和平に向けて動き出している点が注目されます。ウクライナ戦争における和平の実現、中東紛争の解決、特にイスラエルとイランの間の緊張緩和を図り、第3次世界大戦を防ぐための取り組みが強調されています。

トランプ氏の勝利スピーチを聞いた際、私自身非常に感銘を受けました。その言葉から伝わってきたのは、トランプ氏が大統領に就任することで、世界が大規模な戦争を回避できるという安心感でした。1月20日の大統領就任式までは公的な行動は制限されますが、それにもかかわらず、トランプ氏はすでに外交活動を開始しています。

興味深いエピソードとして、ウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談の際、イーロン・マスク氏が同席し、電話越しに議論が行われたという出来事があります。

さて、トランプ氏の和平戦略について、大まかに説明すると以下のような内容になると思います。

まず、ウクライナの停戦を実現し、これを通じて米露関係を修復するということです。かつて、トランプ氏の第1次政権時代に、米露が協力してイスラム国(IS)を叩き、壊滅させることに成功した実績があります。この背景には、イスラム過激派テロリストが両国にとって共通の敵だったという事情があります。

もしこの戦略がうまく進展すれば、ロシアと中国の間に亀裂を生じさせ、中国を孤立化させるというトランプ氏の狙いが見えてきます。また、ロシアはイランと非常に深い関係を持っています。そのため、ロシアがイランに対して和平に向けた働きかけを行い、同時にアメリカはイスラエルに働きかけることで、イスラエルとイランの和解を目指す構図が見えてきます。

現在、中東地域における最大の懸念は、イスラエルとイランの間で大規模な戦争が勃発するかどうかという問題です。この紛争を抑えることができれば、中東全体が和平に向けて大きく進展する可能性があります。イランはこれまで、ハマスやヒズボラに資金を提供し、反イスラエルの活動を支援してきましたが、和平実現のためには、この方針を転換させ、共存共栄を進めていく必要があります。

トランプ氏はアメリカ側からイスラエルに、プーチン大統領はイランにそれぞれ働きかけ、中東における大規模な和平の枠組みを構築しようとしています。また、トランプ氏と親しい関係にあるサウジアラビアの皇太子も、この計画に協力する可能性が高いでしょう。サウジの皇太子はプーチン大統領とも良好な関係にあるため、サウジアラビアが仲介者として重要な役割を果たし、妥協を促進する陰の力となることが期待されます。

中東地域において、サウジアラビア、イラン、イスラエルが共存共栄できる未来を目指すことは重要です。この目標は非常に難しいものですが、長い時間をかけて取り組むべき課題です。中東和平は非常に複雑であり、実現には多くの時間を要するでしょう。


終焉に向かうGreen Scam・自由貿易主義・国際機関

それからCOP29が11月11日からアゼルバイジャンのバクーで開催されました。このバクーは大油田のある都市として知られ、会議は22日まで行われる予定です。私はこのCOP29について、「CO2カルトの終焉」の象徴であると考えています。これは、いわゆる「グリーンレボリューション」や「グリーンスキャン」(グリーン詐欺)が終わりを迎える兆しではないかと思われます。

今回のCOP29は非常に低調で、以前のような熱気が感じられません。そして今後、会議の重要なテーマである資金集めもますます困難になると予想されます。これまでは、先進国から発展途上国へ資金を渡し、それを基にグリーンレボリューションを進めようとしていました。しかし、この仕組みの限界が露呈してきています。先進国からの資金が十分に集まらなくなりつつあるのです。

イーロン・マスクのような立場から見れば、このような第三世界への補助金政策はもはや機能していないと言えるでしょう。提供された補助金が適切に利用されず、何に使われているのかが不明なケースが多いのが現実です。これらの資金が地球温暖化を防止することにはならないだろうという事です。

ウクライナ戦争の終結と和平は、比較的スムーズに進む可能性が高いと考えられます。しかし、懸念すべき動きも報じられています。最新のニュースによれば、バイデン政権がウクライナのゼレンスキー大統領に対し、アメリカ製ミサイルを使用してロシアを攻撃する許可を与えたとのことです。

このような行動がエスカレートすれば、アメリカとロシアの直接的な軍事衝突、さらには戦争に発展する可能性があります。これを防ぐことが、トランプ氏に期待される重要な役割です。現在の状況を鑑みると、バイデン政権が第3次世界大戦を引き起こそうとしても、その実現は難しいと言えるでしょう。というのも、2024年1月20日にはトランプ氏が正式に大統領に就任することが確定的だからです。

現時点では、バイデン政権に残された抵抗勢力が、最後の悪あがきとしてこのような挑発的な行動を起こしているように見受けられます。アメリカ製ミサイルを使用してロシア領を攻撃するという決定は、無謀であり非常に危険です。

もう一つ触れておきたいのは、いわゆる「グリーン詐欺」と呼ばれるものについてです。私がよく例に挙げるのは、洋上風力発電です。地上型の風力発電は一定の効果がありますが、洋上風力は効率やコスト面で大きな問題を抱えています。また、太陽光発電についても、中国から輸入された粗悪なパネルを利用し、それを並べて政府の補助金を受けることを前提にしたビジネスモデルは持続可能とは言えません。

発電方法として本当に価値があるのは、消費者から正当にお金を得られる経済効率の良いものです。それ以外の手法では、いずれ行き詰まるでしょう。例えば水素エネルギーもありますが、現状では非効率性が大きすぎます。

さらに、新型の大型原子力発電所も議論の的となっています。運転中に二酸化炭素を排出しないという理由で推進されていますが、ウラン燃料の製造プロセスや施設の建設、最終的な廃棄物処理や廃炉作業などを考慮すると、多大なコストがかかります。本来、原発は40年程度の運転を目安として廃止することが基本でしたが、近年ではコスト削減のために修復して寿命を延ばす方法が取られています。

電力会社にとっては、せっかく建設した設備をできるだけ長く活用したいというのが本音です。そのため、「まだ使えるので、40年を過ぎてもあと20年の延長を許可してほしい」という要望が出ています。しかし、老朽化した設備を維持し、メンテナンスを行うには多額の費用がかかります。

以前お話ししたアメリカのジョージア州で稼働を開始したボーグル原発では、建設に膨大な費用と時間がかかりました。同様に、フランスの国営電力会社EDFも国内外で原発を建設していますが、アメリカやイギリスでのプロジェクトでは予算の大幅な超過が続いています。建設費用が膨れ上がると、そのコストは最終的に電力料金に上乗せされるため、電力価格が高騰してしまいます。

こうした大規模な原発建設は、国家全体の経済効率を考えれば避けるべきです。ここに、いわゆる「グリーンスキャム」の問題が含まれています。それは、洋上風力発電や水素発電、水素関連ビジネス、さらには新型の大型原発などです。

もう一つの大きな流れとして、国際機関の重要性がさらに薄れていくという現象が挙げられます。国際機関が果たす役割が縮小し、その影響力が減少しているのです。トランプ氏の二国間主義的なアプローチはこの流れを象徴していますが、これはトランプ政権特有の現象というよりも、これまでのグローバリズムが限界に達しつつあることの表れと言えるでしょう。

国際機関とは、そもそもグローバリズムを推進するために設立されたグローバルエリートの組織であり、現在では「もう必要ない」とみなされるようになっています。これからの国際政治は、国民国家や主権国家の利益、いわゆる国益を中心に展開されていくと考えられます。こうした背景を受けて、WTO(世界貿易機関)は自由貿易主義の終焉を象徴する存在になりつつあります。

具体的な動きとして、11月8日にWTO次期事務局長選挙の立候補受付が締め切られました。この選挙では、立候補者が現職のンゴジ・オコンジョ=イウェアラ氏ただ一人しかおらず、彼女が再任される見込みです。オコンジョ=イウェアラ氏はナイジェリアの元財務大臣であり、トランプ政権のライトハイザー通商代表からは、「ジュネーブにおけるチャイナの同盟者」と見なされていました。つまり、中国寄りの立場でWTOの運営に関わってきた人物とされています。

立候補者が一人しかいないという事実自体、WTO事務局長というポジションの魅力が失われていることを物語っています。この動きは、国連をはじめとする国際機関全体の権威失墜の象徴でもあります。今後、トランプ政権はこうした国際機関を無視し、より独自の方針で外交を進めていくことが予想されます。

この流れが進むと、他の国々も同様の政策を取る可能性が高いでしょう。あるいは、国連がどのような決議を採択しても「従わない」というのがトランプ氏の基本的な姿勢です。これを考えると、初めから国連に関与しない方が首尾一貫した態度とも言えます。

こうした状況の中で、国際的な自由貿易主義を推進してきた世界貿易機関(WTO)はすでに衰退の兆しを見せています。同様に、国際通貨基金(IMF)や世界銀行(World Bank)、さらには国連そのものも、役割を終えつつあると言えるでしょう。これらの機関は、グローバリズムを推進するためのグローバリストの組織でしたが、その時代は終焉を迎えようとしています。

これは単に自由貿易主義の終わりを意味するだけでなく、グローバリズム自体が転換期を迎え、反グローバリズム的な動きが加速していく兆しでもあります。この流れが、国際政治と経済の新たな方向性を形成していくでしょう。

これらの変化をまとめると、トランプ政権の政策には次の3つの大きな方向性が見えてきます。

1.世界の平和構築への取り組み
2.CO2削減カルト、いわゆる「グリーンスキャン(環境詐欺)」の終焉
3.国際的なグローバリスト組織の衰退

トランプ政権の誕生により、国際政治と経済の構図はこれら3つの視点から大きく変化していくと考えられます。


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データが示す米一強とトランプの黄金時代

2025-01-01 13:01:01 | 政治見解
データが示す米一強とトランプの黄金時代



「⑤日本は石破政権が続く限りすべてがうまく行かない。」
それに引き換え
「②アメリカはトランプ政権で黄金期を迎える。」
が2025年の赤峰和彦の大予言です。
②の裏付けがここに書かれています。


アメリカ株の順調な動向について取り上げます。アメリカ株が「1人勝ち」の勢いを見せており、トランプ政権の発足とともに「本当の黄金時代」が始まるとの見方が広がっています。

ここで、国際経済を専門とする方の見解を、許可を得て掲載いたします。


アメリカ株の「一人勝ち」といえる状況が続いています。12月5日付の日本経済新聞電子版に「米国株マネー総取り」という興味深い記事が掲載されていました。その中で、いくつか注目すべき統計データが示されていたため、ご紹介します。

まず、米国株ファンドへの資金流入額についてです。2024年の年初から11月末までの間に、なんと4,400億ドル(約66兆円)もの資金が流入したとのことです。これは2021年の記録を上回り、過去最高となりました。一方で、欧州株ファンドは厳しい状況が続いており、22カ月連続で資金が流出しているとのことです。

2つ目のポイントです。
ドル建ての株式時価総額を見てみると、2024年11月現在、アメリカの株式時価総額は63兆ドルに達し、世界全体の51%を占めるという結果が出ています。調査によって多少異なる数値も存在しますが、少なくとも世界の株式時価総額の半分以上をアメリカが占めていることは確かです。なお、中国の株式時価総額は信頼性に欠ける部分も多いため、これを除外すれば、アメリカのシェアはさらに高くなると考えられます。

3つ目のポイントです。
アメリカの株式時価総額を名目GDPで割った「株式時価総額比率」を見ると、その値は約2.2倍に達しています。これは非常に高い水準です。名目GDPに対して株式時価総額が過剰に膨らんでいるのではないかという指摘もあります。参考までに、日本は1.5倍、英国は0.9倍となっており、アメリカの数値が突出していることがわかります。過去の伝統的な水準と比較しても、2.2倍は明らかに高い数値と言えるでしょう。

4つ目のポイントに移ります。
では、アメリカ以外に株式投資の選択肢は存在するのでしょうか。ヨーロッパは経済的な停滞が続き、日本は投資先としての成長力に疑問が残ります。中国は論外とされ、新興国市場は依然として不安定です。こうした状況の中で、世界経済を牽引する力を持ち、かつ信頼できる株式投資市場として機能しているのは、現時点ではアメリカしかないという結論に至ります。まさに「アメリカ1強時代」と言える状況が続いているのです。

5つ目のポイントです。
世界のトップ100社の株式時価総額をドル建てで見ると、そのうち63社がアメリカ企業となっています。これは驚異的な数字です。2010年の時点では、アメリカ企業はわずか37社に過ぎませんでしたが、14年後の現在、その数は63社に増加しました。一方で、日本企業でトップ100に入っているのはトヨタのみという状況です。

6つ目のポイントです。
この傾向は、トランプ政権の「アメリカ・ファースト」政策によってさらに強まると予測されています。トランプ政権が掲げる規制緩和(デレギュレーション)と減税策が実行されれば、アメリカの経済成長がさらに加速し、「アメリカの一人勝ち」が続く可能性が高いのです。加えて、AIや半導体を中心とする「第3の波」とも言える産業革命が進行中であり、アメリカはその牽引役を担っています。

7つ目のポイントです。
日経新聞の記事では、興味深い意見が引用されています。イギリスの資産運用大手シュローダーのパトリック・ブレナー氏は、米国株に投資することだけが選択肢ではないとし、その代替案として「米ドルとゴールド(金)」を挙げています。


「米国株が下落するようなリスクがある場合、米ドルそのものに投資することが合理的な選択肢になる」とブレナー氏は述べています。米ドルはアメリカ経済に対する信頼そのものであり、安定した投資先と見なされます。

加えて、ゴールドもリスクヘッジの資産として有効です。ゴールド自体はアメリカへの直接投資ではありませんが、多くの場合ドル建てで取引されるため、広い意味でドル資産とも言えます。米ドルへの投資は、アメリカ経済への投資と同じことです。このような視点が、記事の中で指摘されていました。


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新年のご挨拶と2025年の大予言

2025-01-01 00:00:00 | 政治見解
新年のご挨拶と2025年の大予言



あけましておめでとうございます。
昨年は多くの方々にご愛読いただき誠にありがとうございました。

患っていた病も回復傾向にあり、恩返しのつもりで今年もブログに取り組み、
様々な視点から、日本と国際社会の動きを検証してまいる所存です。

ご愛読のほど、よろしくお願い申し上げます。

 令和7年元旦


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赤峰和彦の2025年の大予言

①オールド・メディアの信用失墜が確実なものになる。
 1.米大統領選挙の全米メディア報道となぜか兵庫県知事選のメディア報道はシンクロしていた。
 2.トランプ政権誕生とともに、全米メディアは信用を失墜。
   とくに、米民主党に肩入れしていたメディアの凋落が激しい。
   これと同じことが兵庫の事例から想起され、日本メディアも国民に相手にされなくなる。
 3.日本では左翼メディアが大打撃を受けるが、ナベツネ後の読売は思想統制ができなくなり、
   韓国人支配のフジテレビはスポンサー離れが激しく倒産の危機に陥る。
②アメリカはトランプ政権で黄金期を迎える。
③中国は崩壊過程に入る。早ければ今年、国家破綻。
④台湾有事、習政権ではありえない。
 ただし、反習派が暴走する場合は可能性。
 1.台湾を攻めるには現在の中国の戦力の2倍は必要。
   しかも、軍人は金儲けのために軍人になっているだけで士気は低い。
 2.台湾が攻撃される場合は、反習派の暴走の可能性が大。
   その場合、習派も反習派も終わる。
⑤日本は石破政権が続く限りすべてがうまく行かない。
 1.政治的な動向は全く読めない。
 2.自民党は、日本を守るのではなく、党を守ろうとしているだけなので絶滅の可能性。
 3.世論の動向は、どこの政党にも利害関係のない無党派の意識次第。
⑥円安は続く。200円近くまでいくことを想定すべし。
⑦日米間の貿易摩擦は、
 エネルギー(石油・天然ガス)と防衛用ミサイル・航空機の大量購入と、
 トヨタなどは米国内製造ですべて問題解決する。
 1.トランプ大統領は自国産業の保護のため、日本の輸出企業にも圧力をかける。
   しかし、米国内での製造は大歓迎なので、トヨタなどの輸出産業は米国内生産で問題は解決する。
 2.アメリカは石油・天然ガスの大増産に入るが、
   日本はこれを大量輸入することで貿易黒字を解消するとともに、
   エネルギー料金の鎮静化をはかる。
   さらに、危険地帯を避けることも可能で安全保障上の得策。
   なお、北極海ルートの可能性を視野にいれるべし。

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