赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

三菱商事とシェルの失敗——洋上風力発電

2024-12-31 00:00:00 | 政治見解
三菱商事とシェルの失敗——洋上風力発電




以前から洋上風力には未来がないと指摘されていましたが、最新の事例として三菱商事やシェルが直面した失敗についての情報が入りましたので、許可を得てお伝えします。

これらの企業がどのような問題に直面したのか、その背景を掘り下げて考察していきたいと思います。


「洋上風力が厳しい状況だ」という話をこれまでしてきましたが、今回は洋上風力に関連する話題を2つお伝えします。

まずは三菱商事に関する話題です。

同社はイギリスで海底送電網の事業を展開しており、海底送電網を運営する会社を所有していました。しかし、この事業をすべて売却することを決定したというニュースです。事業がうまくいかなかったということですね。

具体的には、イギリスの洋上風力発電所向けの海底送電網事業に携わっていました。イギリスでは洋上風力発電が大きな割合を占めており、発電した電力を本土に送るため、海底送電網を敷設し運用する必要があります。その役割を担っていたのが、三菱商事の100%子会社である「ダイヤモンドトランスミッションコーポレーション」という会社です。

同社はこれまでイギリスで10件の海底送電網事業に参画してきましたが、これらすべてを売却する見通しであると報じられました。この件は三菱商事が12月6日に発表しています。

この事業は、資本金1億1800万ポンド(約226億円)でスタートしたものですが、現在の売却価格は1ポンドあたり191円で計算され、売却実行日は12月中旬とされています。この情報は、電気新聞の12月9日版にも掲載されていました。

それから、イギリスの有名な総合エネルギー企業であるシェルについてお話しします。

シェルは、12月5日に重要な発表を行いました。それは、新規の洋上風力発電プロジェクトの全面開発停止です。さらに、電力事業の分割についても同時に発表しています。要するに「採算が取れない」ということでしょう。



この話題と関連する点について触れたいと思います。私は以前から「水素は現時点では現実的ではない」と指摘してきました。日本では今年5月に「」という法律が成立しましたが、水素燃料は既存の燃料に比べて非常に高価です。

具体的には、水素燃料の価格は1ノルマル立方メートル当たり約100円で、これは天然ガスの約10倍の価格に相当します。

この価格差を埋めるために、政府は今後15年間で3兆円もの税金を投入する予定です。しかし、この3兆円は結果的に無駄金になる可能性が高いと考えています。このような政策では、国の経済がうまく機能するはずがありません。

原発で水素を製造すべきだと主張する方々がいらっしゃいます。

彼らは地球温暖化を信じており、化石燃料を燃やすべきではないという考え方を持っています。その結果、風力発電や太陽光発電は頼りにならないとして、原子力発電を推進しようとしています。

原発を使って水素を生成し、その水素を動力源として活用すれば、自動車や工場のエネルギーなどをすべて水素で賄える、という主張です。

しかし、現在の原子力発電はコストが非常に高く、そのうえ水素を製造するとさらにコストがかさみます。技術的には可能ですが、経済的には負担が大きすぎて実現が難しいのが現状です。これでは経済成長を支えるどころか、かえって停滞を招いてしまうでしょう。

まさに「絵に描いた餅」とはこのことだと思います。

それにもかかわらず、日本は今後15年間で3兆円もの予算を投じるとされています。こうした無駄な投資は一刻も早く見直していただきたいと思います。

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習近平側近の失脚と安定しない人民解放軍

2024-12-30 00:00:00 | 政治見解
習近平側近の失脚と安定しない人民解放軍




中国共産党軍の動向に関する情報です。苗華(びょうか)氏が失脚しました。苗華氏は、習近平主席の側近中の側近として知られ、かつて中国共産党軍の政治部長という要職を務めていました。

この状況は、習近平主席が軍を完全に掌握しきれていないことの表れとも考えられます。さらに、中国人民解放軍の制服組トップである張又侠氏との間に対立があるのではないかとの憶測も浮上しています。

中国の政治事情に詳しい専門家にご意見を伺いました。許可を得て掲載しています。


12月5日の報道によると、董軍氏は上海で開催されたアフリカ・ギニア湾安全保障会議に国防大臣として出席しており、現段階ではその地位を維持していることが明らかになりました。ただし、今後の動向によっては失脚の可能性も否定できません。

一方で、董軍氏の上司にあたる苗華(びょうか)氏は、すでに失脚が確認されています。苗華氏は「苗(苗字)と華(中華の華)」という字を名前に持ち、習近平主席の側近中の側近として知られていました。習主席が福建省の省長(県知事に相当)を務めていた時代からの知人であり、その信頼は厚いとされていました。

苗華氏はかつて陸軍の政治部長を務めていましたが、その後、海軍に異動となり、習近平主席の敵対派閥を一掃する役割を果たしました。習主席から大きく引き立てられた苗華氏は、軍全体の政治部長という要職に就任しました。

軍の政治部長とは、軍人の出世に関わる重要なポストです。たとえば、ある将官を少将から中将に昇進させる場合、その人物の思想信条や忠誠心を調査し、報告する役割を担います。政治部長の承認がなければ、軍内での昇進は不可能であり、そのため賄賂が集中しやすく極めて強大な権力を持つ立場といえます。

習主席は福建省時代からの腹心である苗華氏を、この強力な政治部長の座に据えました。しかし現在、苗華氏は失脚したことが確認されています。一方、苗華氏の引き立てを受けてきた国防大臣の董軍氏は、現時点ではその地位を維持しているものの、今後の動向が注視されています。

現在、中国人民解放軍の制服組(軍人)のトップは張又侠氏です。70代のベテランであり、かつて中越戦争(ベトナムと中国の戦争)にも従軍した経験を持つ、数少ない実戦経験者とされています。しかし、この張又侠氏と習近平主席との間には対立関係があるのではないか、という見方も存在します。

12月4日、習主席は張又侠氏を含む中央軍事委員会のメンバーを引き連れ、情報支援部隊を視察しました。この様子は中国中央テレビ(CCTV)で報じられ、あたかも団結を強調するかのような演出がなされていました。

現在、中国では五つの戦区に軍が再編されています。以前は七つの戦区に分かれていましたが、改革により五つに統合されました。しかし、その五つの戦区のうち、なんと三つの戦区のトップがすでに失脚している状況です。残る二つの戦区については、張又侠氏の影響力が強いとされています。

この状況は、習近平主席自身が信頼して任命した人物でさえ、首を切らざるを得なくなっていることを示しております。

これでは中国軍内部は非常に不安定な状況にあります。国防大臣は2代続けて解任されており、その理由は汚職問題、すなわち賄賂の受け取りや腐敗が原因とされています。さらに、ロケット軍においては、そのトップ層が一掃される事態に陥っています。

興味深いのは、これらの解任や粛清の対象者は、習近平主席自身が任命した人物であるという点です。習主席は反腐敗運動を掲げ、粛清を徹底していますが、自ら任命した人物でさえ首を切らざるを得ない状況にあるのです。これは「子分を守れないのか、それとも守らないのか」という疑問を生じさせます。

こうした粛清が過剰に行われることは、軍内部にとって歓迎すべきことではありません。



中国において軍人になる理由の多くは「金儲け」と言われています。軍内部では上官に賄賂を贈り、昇進の道を確保し、自分が上の立場に立った際には部下や業者から賄賂を受け取る――このような仕組みが存在してきました。しかし、この慣習が習近平主席による反腐敗運動によって脅かされているのです。

問題は複雑です。習近平主席が解任した軍人は、張又侠派による攻撃から守れなかったのか、それとも別の派閥の攻撃ではなく、「任命したものの信頼に足らない」と判断し、自ら解任したのか――その真相は明確ではありません。しかし、腐敗の程度があまりにひどくなり、軍隊としての機能が失われていると見なされたことが背景にあるのでしょう。例えば、ロケット軍では幹部層の汚職が表面化し、「戦える軍隊ではない」とまで言われています。

習近平主席の視点からすれば、「賄賂もある程度までは容認するが、限度を超えてはならない」という考え方でしょう。しかし、現実には軍内部の腐敗が止まらず、粛清を繰り返すしかない状況に追い込まれています。その結果、軍人たちは「安定した金儲けができない」という不満を抱くようになります。

さらに、習近平主席の子分たちにとっても問題は深刻です。「自分たちが守ってもらえないのであれば、忠誠を尽くす意味がない」と考える者も増えつつあるでしょう。この状況から、習近平主席の軍に対する統制力が徐々に弱まっているのではないかと考えられます。

中国は台湾周辺で頻繁に軍事演習を行っていますが、これにより軍内部に疲労が蓄積していると指摘されています。特に東部戦区は台湾への軍事行動を主導する部隊であり、度重なる動員によって兵士たちの負担が大きくなっています。

本来、中国人民解放軍としても、こうした大規模な軍事演習は負担であり、望ましいものではないでしょう。特に東部戦区は、台湾を対象とした演習を頻繁に行う地域ですが、頻繁な動員が続き、兵士や指揮官の疲労が蓄積しています。

このような状況では、彼らは安心してお金儲けができません。その結果、習近平主席への不満や反発が軍内部で高まっているのではないかと指摘されています。現在の中国軍は、軍事力としての整備を進めながらも、内部の疲弊と不満が大きな課題となっているのです。

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韓国の危機——トランプに切られる運命か

2024-12-29 00:00:00 | 政治見解
韓国の危機——トランプに切られる運命か



韓国では大統領の弾劾が事実上確定的となり、政治的混乱が続いています。現職の尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領は「死に体」とされ、辞任は避けられない状況にあります。これに伴い、韓国では左派勢力によるクーデター的な動きが顕在化しています。

現在、韓国のメディアでは「民主主義を守る野党」と「民主主義を破壊する尹大統領」という構図が強調されていますが、この見方は単純化されすぎていると言わざるを得ません。尹大統領への弾劾理由には、親日的な外交姿勢も挙げられています。これにより、韓国の自由民主主義体制そのものが危機に瀕しており、国家としての基盤が音を立てて崩れているように見えます。

次期政権は、極左勢力による左派政権となる可能性が高いと見られています。このような状況において、韓国は民主主義国家としての性質を失い、国際社会における信頼を大きく損なう懸念があります。また、トランプ前大統領が次期政権の韓国に対して距離を置くことは避けられないでしょう。これにより、米韓関係にも冷え込みが生じる可能性があります。

このあたりの事情を専門家に伺い、許可を得て掲載いたします。


韓国で今起きていることは何かというと、私は「左派クーデター」だと考えています。

保守派の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が、政権運営に行き詰まっている状況です。その原因の一つは、彼自身や妻のスキャンダルにあることは間違いありません。しかし、尹大統領が主張していることにも一理あるのです。

現在、国会の3分の2近くを左派が占め、大臣や行政官22名が罷免される事態に至っています。これは、ある意味で「国会独裁」のような状況です。さらに、行政府や司法府にまで干渉し、検察官や裁判官を罷免する動きも出ています。加えて、予算案も一向に通らず、国家統治が完全に機能しない状態に陥っています。

これは、大韓民国という自由民主国家を否定する「左派の謀略」とも言えるでしょう。そのため、尹大統領は最後の手段として、戒厳令の発動に踏み切りました。しかし、それも見事に逆転されてしまったのです。

そのため、大統領はますます追い詰められ、今度は2回目の弾劾法案が提出される見通しです。この弾劾法案が可決されるかどうかは現時点では分かりませんが、可決されそうな勢いです。与党内からも「裏切り者」が出始めていることが、その可能性を高めています。

つまり、今の韓国では、自由民主国家の根幹が揺らいでいるということです。言論の自由に基づき、選挙によって統治者や為政者を決める民主政治が、失われつつあるのではないかということです。



弾劾理由の中には「親日外交」も含まれています。

日本と友好関係を築こうとする外交政策そのものが、弾劾の理由になっているのです。これは、自由民主国家・韓国の終わりを意味するのではないでしょうか。

尹大統領は、左傾化し反日・反米に偏った外交を何とか立て直し、日本との協力なくして韓国の国防は成り立たないと判断し、その方針を進めてきました。しかし、自衛隊機に対するレーザー照射事件の処罰や謝罪については、しっかりと対応せずに曖昧にしてしまった点で、親韓政策を取った日本側にも問題があると言えます。

それでも尹大統領は日本との協力を模索する路線を取ってきたものの、その路線すらも成立しなくなっている状況です。このまま韓国が現在の外交路線を進めるならば、確実にトランプ前大統領に切り捨てられることになるでしょう。

「共に民主党」のトップである李在明氏は、いずれ大統領になる可能性が高い人物です。彼は極めて左派的な思想を持ち、親北朝鮮の立場を明確にしています。

そのような人物が大統領の座に就き、さらに議会も3分の2が反日・反米である状況では、今後どのような政策がとられるかは明白でしょう。

結果として、日本の防衛ラインは対馬に引かざるを得なくなるでしょう。アメリカとの共同防衛ラインも、必然的に対馬へと移行せざるを得ない状況になると考えられます。



おそらく、こうした韓国の動きに対し、トランプ前大統領が「NO」を突きつけることで、在韓米軍の縮小や全面撤退が現実味を帯びてくるでしょう。これは「共に民主党」や韓国左派勢力にとっては歓迎すべき事態であり、「アメリカは出ていけ」という主張が通ることになります。

当然ながら、日本との連携や融和も期待できず、韓国は強硬な反日国家へと進んでいくことが考えられます。そして、北朝鮮の影響力が韓国全体に及び、北朝鮮の主張や意向がそのまま反映される「間接統治」のような状態に陥る可能性が高まります。

その結果、自由民主国家である韓国は失われるでしょう。憲法上では「自由民主国家」という条文が残るかもしれませんが、現実には自由と民主主義が形骸化してしまうことになるのです。

韓国において、日本との友好を訴えることや、歴史の真実、例えば「慰安婦の強制連行はなかった」といった主張をすることや韓国統治時代について真実を語ることは、もはや許されなくなりつつあります。

その結果、捏造された歴史が真実として広まり、本当のことが語られなくなってしまうのです。そのような状況の中ではアメリカを「敵」と捉える考え方が広がっていきます。

韓国の左翼勢力は「北朝鮮のナショナリズムこそが正しい」とする思想を支持し、戦後アメリカと日本が作り上げた「大韓民国は悪い嘘の国家だ」と主張しています。これは韓国の国家そのものの存立基盤を否定するものです。

もちろん、こうした主張に反対する人々も存在しますが、彼らは少数派であり、その声は十分に届いていないのが現状です。そのため、韓国には確信を持った「民主的ナショナリスト」がほとんど存在しないという状況になっています。

強いて言うならば、サムスン財閥に代表される「グローバリスト」層は韓国にも存在し、彼らが「保守」と呼ばれているのが現状です。

よくこの四象限図を使うのですが、韓国には「民主的ナショナリスト」がほとんど存在しないんですね。

一方で、北朝鮮の独裁的なナショナリズムに呼応する左翼は存在します。

右側、つまり保守層には無国籍企業的なグローバリストが少なからず存在しています。

こうした勢力同士の対立構造が生まれてしまうわけです。しかし、無国籍企業的なグローバリズムとナショナリズムというのは、本来交わるものではないため、グローバリズムが攻撃されやすくなっている状況です。

韓国においては、ナショナリズムが左派によって乗っ取られてしまい、北朝鮮の全体主義的なナショナリズムと韓国左派のナショナリズムが同一視されるようになっています。結果として、韓国には民主的なナショナリストが非常に少ないという現状があるわけです。

トランプ政権がスタートすると、やがて在韓米軍の引き上げという議論が必ず出てくるだろうと思います。


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【関連】アサドとプーチンの残念な共通点

2024-12-28 09:00:00 | 政治見解
【関連】アサドとプーチンの残念な共通点



昨日と、今日午前0時掲載のシリア情勢についてのお話の【関連】情報です。

今回は、ロシアの事情通からの報告を頂きました。他に類のないご意見ですので、許可を得て掲載いたします。


★シリアの独裁者アサドとプーチンの共通点

皆さんも感じていらっしゃると思いますが、今、世界で不安定な国、地域が多くなっています。現状を見ると、韓国、ジョージア、シリアなどが大変なことになっています。今回は、長期独裁政権が倒れたシリアの話を。

2010年代はじめ、「アラブの春」というのが流行りました。チュニジア、エジプト、リビア、イエメンなどで、
長期政権が打倒されました。

シリアでも2011年から、アサド政権と反アサド派の対立が激しくなり、内戦が勃発。しかし、アサド大統領は優勢に戦いを続け、内戦勃発から13年経過しても、政権に留まり続けていました。なぜでしょうか?

「シリア内戦」は大国の「代理戦争」でした。

反アサド派を支援したのが、欧米とスンニ派の大国、サウジアラビア、トルコなどです。

一方、アサド派を支援したのが、ロシアとシーア派の大国イランです。
結局アサドがサバイバルできたのは、ロシアとイランの支援があったからなのです。

3年前の地図を見ると、アサドはシリアの8割ぐらいを支配しているように見えます。

※2021年の勢力図


反アサド勢力の支配地域は、ざっくり5%以下といったところでしょうか。ところが、反アサド勢力は息を吹き返しました。なぜでしょうか?

賢明な皆さんなら想像がつくでしょう。アサド政権最大の味方はロシア、2番目の味方はイランです。

ロシアは今、ウクライナ戦争で余裕がない。プーチンは強気を崩していませんが、弾薬を北朝鮮からもらい、戦場に北朝鮮兵を投入しています。余裕があれば、北朝鮮軍に頼らないでしょう。

イランは、どうでしょうか? イランは、「手下」を使って、イスラエルを攻撃させていました。具体的には、ガザ地区のハマス、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派などです。

ところが、イスラエル軍は、ハマスとヒズボラに壊滅的打撃を与えました。そして、イスラエルは、トランプ新大統領のサポートを得て、イラン核施設を破壊する意向です。だから、イランは、イスラエル+アメリカとの戦争に備える必要がある。それで、シリアを支援する余裕がないのです。

アサドは、ロシアとイランからの支援をアテにできない状態で、反アサド派と戦わなければならない。だから、ボロボロになっていたのです。

「反体制派がシリア第2の都市アレッポを制圧した」とニュースが流れたのは11月30日でした。それからわずか8日で、首都ダマスカスは陥落。アサドは逃亡し、政権は崩壊しました。

2022年3月、国連総会でロシアのウクライナ侵略を肯定した国は4ヶ国だけでした。北朝鮮、ベラルーシ、エリトリア、そしてプーチンの親友アサド大統領のシリアです。プーチンは、数少ない盟友を失いました。これもプーチンの【 戦略的敗北 】といえるでしょう。


★独裁者アサドとプーチンの共通点

今回のアサド政権崩壊。「嗚呼、プーチン・ロシアと同じだな」と思いました。なぜでしょうか?



既述のように、シリアの反体制派が第2の都市アレッポを制圧したのは11月30日。首都ダマスカスが陥落し、アサド政権が崩壊するまで、わずか8日です。

反アサド派は、ほとんど抵抗を受けることなく、アサド政権を崩壊させることに成功しました。わいてくる疑問は、「シリア軍は何をしていたのだ?」ということです。

答えは、「何もしなかった」です。要するに、アサドの軍隊シリア軍には、アサドを守る意志や忠誠心が全然なかったということです。実をいうと、プーチン・ロシアも同じでした。

思い出されるのは、2023年6月23日から25日に起きた「プリゴジンの乱」。民間軍事会社ワグネルの創設者プリゴジン。

ロシア正規軍がだらしない中、自ら前線に立ち、ウクライナ軍を大いに苦しめていました。それで、ロシアでは、「プリゴジンはウクライナ戦争の英雄だ!」と絶賛されていたのです。

ところが2023年5月、プリゴジンは、ショイグ国防相(当時)とゲラシモフ参謀総長を非難する動画を投稿。

「ショイグ~、ゲラーシモフ、弾薬はどこだ~!?」と鬼の形相で絶叫する動画が、世界に拡散されました。【動画】 

この動画の翌月、彼は、ワグネルを率いてモスクワに向けて進軍したのです。

驚くべきは、プリゴジンが6月23日の1日だけで、人口114万人のロストフ・ナ・ドヌ、人口106万人のヴォロネジを制圧したことです。なぜそんなことが可能だったのでしょうか?

要するに、ロシア軍が全然動かなかったということでしょう。

ロストフ、ヴォロネジ、2つの100万人都市を制圧し、プリゴジン率いるワグネルは、破竹の勢いでモスクワに迫ります。しかし、モスクワから200キロの所で停止し、ロストフに引き返し、その後ウクライナにむかいました。

プーチンは、反乱に参加したプリゴジンとワグネルメンバーの罪は問わないとしました。

ところが2023年8月、プリゴジンの乗った飛行機が墜落し死亡。誰もが、「プーチンに殺された」と思ったのです。

シリア「反アサド派」とロシア「ワグネル」の共通点は、何でしょうか?
「正規軍がほとんど抵抗しなかったこと」です。

シリア「反アサド派」とロシア「ワグネル」の違う点は何でしょうか?
「反アサド派」は、決心して首都を制圧したことです。

プリゴジンには、クレムリンを制圧し、クーデターを実行する決意がありませんでした。その違いだけです。正規軍が無抵抗だったのは、シリアもロシアも同じ。

ここから何がわかるかというと、シリア軍もロシア軍も、アサドやプーチンに心服しているわけではない。「恐怖によって支配されているだけ」ということです。

忠誠心は全然ないので、あるきっかけで、あっという間に崩壊してしまう。そういう意味で、プーチンもアサドと同じ、「裸の王様」ということでしょう。

現在ロシア軍は、ドネツク州の戦場で、優勢です。トランプが大統領になれば、「現在の前線で停戦」「ウクライナをNATOに加盟させない」という条件で停戦交渉が始まるでしょう。そして、プーチンの要求が通る可能性は高いです。

とはいえ、プーチン政権もボロボロです。ロシアは、北朝鮮軍に参戦してもらわなければならないほど兵力が不足している。北朝鮮から弾薬をもらうほど、弾薬が不足している。軍事同盟国アルメニアやシリアを守れないほど余裕がない。

プーチン政権は盤石? 外からはそう見えます。アサド政権が盤石に見えたように。しかし、内部は腐ってボロボロです。何度も書いていますが、プーチンはすでに戦略的に敗北しているのです。

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②シリア新政権——アサド政権崩壊の真因と対米関係

2024-12-28 00:00:00 | 政治見解
②シリア新政権——アサド政権崩壊の真因と対米関係




昨日からの続きです。特別の許可を頂いて掲載しています。


アサド政権が崩壊した隠れた理由の一つに、違法薬物問題があったと言われています。

ここで言う「麻薬」とは、正確にはカプタゴンという覚醒剤のことです。このカプタゴンは非常に低コストで製造できる覚醒剤として知られています。

世界銀行の調査によると、カプタゴン取引の約80%はシリア産だとされています。そして、この薬物はサウジアラビアやUAE、ヨルダンといった周辺の中東諸国に広がり、深刻な汚染を引き起こしていました。

さらに、世界銀行の推計によると、カプタゴンの年間市場規模は56億ドルに上ると言われています。

これはあくまで推定値ですが、シリアの2023年のGDPが約62億ドルであることを考えると、カプタゴン取引の規模がいかに大きいかが分かります。

このカプタゴンの生産についてですが、製造や流通の元締めを行っていたのは、バシャール・アサド大統領の弟であるマーヘル・アサドだと言われています。


2011年からシリアは内戦状態に入り、経済や財政が非常に厳しくなりました。その苦しい状況の中、シリア政府はカプタゴンの生産を始め、周辺国へ輸出するというブラックビジネスに手を染めてしまったようです。シリアでは、この1年間で19億ドルもの利益を上げたのではないかと推定されています。

このカプタゴン問題が影響し、シリアはアラブ連盟に復帰したものの、周辺国からの評判は非常に悪い状態です。「早急にこの問題を解決してほしい」という声が上がっています。

例えば、シリアからヨルダンへのカプタゴン密輸が行われていることが問題視されています。ヨルダン政府は密輸品を運ぶ無人機(ドローン)を撃ち落とす対策を取ったり、ヨルダン軍がシリア国内にあるカプタゴンの製造拠点を爆撃することも過去にありました。

こうした迷惑行為が続く中、アサド政権の信用は失墜し、ロシアのプーチン大統領も「カプタゴンに依存するアサド政権は交代させるのもやむを得ない」という判断に至ったのではないかと考えられます。

さらに、カプタゴンの問題はHTS(ハヤート・タハリール・アル・シャーム)にも紐づいており、こちらの指導者であるジャウラニ氏についても言及されています。トルコがHTSの主な資金源とされており、イランもこの状況を「望ましくはないが、やむを得ない」と捉えているようです。このような力学の中で、新たなシリア政権が誕生したとも言えるでしょう。

ですから、その力学については理解しているのでしょう。トランプ氏は早い段階で「これは我々アメリカが関与すべき戦争ではない」と徹底して不干渉を貫き、「ここには関わってはいけない」と明確なメッセージを出しました。

関わってしまうと、先ほど申し上げたようにロシアがバックアップしている政権と対立し、米露戦争の危険性が高まるためです。そのためトランプ氏は、シリアには干渉すべきではないと主張しました。

実際に12月7日、アサド政権が崩壊すると決まった際、トランプ氏はそのメッセージを改めて発信しています。

一方、シリアの弱体化をチャンスと捉えたイスラエルのネタニヤフ政権は、12月8日ごろから爆撃を大々的に開始しました。これまでに450回もの爆撃が行われたと言われています。シリア国内の軍事基地や兵器庫などが標的となっており、イスラエルとしては、新たなシリア政権がその兵器を使って攻撃してくることを防ぐ狙いがあるようです。

アメリカは、IS(イスラム国)がシリアで再び勢力を拡大することを警戒し、シリア国内のIS拠点への空爆を実施しています。こうした状況が続く中、イスラエルとシリアの戦争が勃発する可能性も出てきています。

もしそうなれば、アメリカとロシアの対立がさらに深まり、第3次世界大戦という最悪のシナリオが現実味を帯びてしまいます。だからこそ、トランプ氏は「干渉するな」と強く主張しているのでしょう。

一方、バイデン政権は第3次世界大戦を招きかねないロシアとの対立を煽るような挑発的行動を、最後の最後まで続けているのが現状です。



イスラエルはすでにゴラン高原を占拠していますが、その先にあるシリア本土との間の非武装地帯に軍隊を進め、シリア軍の侵入を防ごうとする動きが見られます。この状況がシリア・イスラエル間の戦争を再び本格化させるのではないかと非常に心配です。

戦争を引き起こそうとする勢力も常に存在しているため、イスラエルも挑発に乗らないことが重要だと思います。

現在のシリアのジャウラニ政権は「宗教的に寛容な姿勢を取る」と表明しており、ヨーロッパやトルコからシリア難民が帰還する可能性が出てきました。これは非常に良いことです。


これまでヨーロッパは難民の流入が増え続け、その多くがシリアからの避難民でした。彼らがシリアに戻ることができれば、ヨーロッパとしても歓迎すべきことです。また、トルコも約300万人ものシリア難民を受け入れているため、彼らが帰還することになれば、大きな負担軽減につながります。

トルコもまた、シリア難民の帰還を条件にジャウラニ政権を支援していたのだと考えられます。

トランプ政権の始動は1月20日です。それまでに第三次世界大戦の危機が完全に去ったわけではないことも忘れてはなりません。

(了)

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①シリア新政権——親露かつ親米という特殊な存在か

2024-12-27 00:00:00 | 政治見解
①シリア新政権——親露かつ親米という特殊な存在か



シリアにおいてジャウラニ氏をトップとする新政権が発足しました。一見すると反ロシア政権かと思われがちですが、実際には親ロシアの立場を取っていることがわかっています。

これまでのアサド政権は、ロシアの支援を受ける親ロシア体制でした。ジャウラニ政権はそのアサド政権を追い出した勢力であるため、反ロシアだと誤解されがちですが、実際にはそうではありません。さらに注目すべきは、彼らが反米ではないとも公言している点です。

また、宗教政策においても、これまでのイスラム原理主義とは異なり、比較的寛容な方針を掲げています。象徴的な事例として、シリアには少数のキリスト教徒が存在しますが、ジャウラニ政権は彼らに対し「クリスマスを祝っても構わない」と伝えたことが挙げられます。これは従来の厳格なイスラム主義とは一線を画す姿勢といえるでしょう。

この間の事情を中東分析の専門家のご意見を伺い、許可を得て掲載しました。


新たに首相に就任したムハンマド・アル=バシール氏についてですが、この人物は元ロシアのガス会社出身であり、その経歴からも親ロシア色が強く反映されていると考えられます。

親ロシア路線を示す具体的な証拠として、新政権はシリアの地中海沿岸にあるロシアの海軍基地と空軍基地を保全すると表明しています。これらの基地は、ロシアがアフリカのニジェールや中央アフリカといった親ロシア国へ兵力を送る際の中継拠点として機能しており、地政学的に極めて重要です。シリア新政権がこれらの基地を維持し、手を加えないと明言していることは、ロシアとの緊密な関係を裏付けるものです。


シリアの弱体化に乗じて、アメリカとイスラエルはシリアに対する爆撃を実行しています。この攻撃は主にシリアの兵器庫などの軍事施設を対象としており、危険な行動を未然に防ぐための戦略的措置とされています。この点については、戦略的な観点から一定の正当性が認められるものの、過剰な攻撃はさらなる危機を招くリスクが伴います。

特に、イスラエルとシリアの間で直接的な戦争が勃発すれば、シリアを支援するロシアとイスラエルを支援するアメリカが対立する構図となり、中東を舞台とした**第三次世界大戦(WWIII)**の危機を招きかねません。このような米ロ間の緊張は依然として解消されていない状況です。

また、イスラエルとイラン間の対立が少し沈静化してきたと思われた矢先、今度はイスラエル対シリアの新たな緊張が生じる可能性がある点も懸念されています。この背景には、シリアの新政権であるジャウラニ政権の存在が挙げられます。

以前、私は、ジャウラニ政権の背後に英国守旧派がいる可能性を指摘しましたが、これは誤りだったと考えています。現在明らかになっているのは、この政権が親ロシア派であるという点です。ロシアは、ジャウラニ政権が親ロシア的な立場を取っているため表面的には支持しているものの、政権の脆弱さゆえに持続的な支援を断念せざるを得ない状況にあります。

特筆すべきは、彼らが反米の姿勢を取っていないという点です。ジャウラニ氏は約10年前に「我々は反米のための政権ではない」と明言しており、実際にアメリカを直接的に攻撃したこともありません。もっとも、アメリカ政府からはテロリストとして指定されていますが、彼らの行動はアメリカへの直接的な敵対を示していません。

復習を兼ねて振り返ると、12月8日にアサド政権が崩壊し、シリアの首都ダマスカスが陥落しました。その後、アサド氏は家族とともにロシアへ亡命しました。この政権崩壊を実現したのが「HTS」(ハヤット・タハリール・アル・シャーム、通称シャーム解放機構)という組織です。この組織は主にトルコの支援を受けており、新たにシリアの政権を掌握するに至りました。

ジャウラニ新政権のリーダーはアブ・モハメド・アル・ジャウラニ氏です。本名はモハメド・フセイン・アルシャナーとされていますが、広く「ジャウラニ」という名で知られています。彼はかつてISやアルカイダに所属していましたが、それらと決別したとされています。

この新政権の理念は、イスラム主義とシリア・ナショナリズムの融合を掲げています。従来の「国境を超えた反西洋・反アメリカ・反ヨーロッパ」というイスラム原理主義的な考え方からは距離を置き、シリア国内に限定して国の再建を目指す姿勢を取っています。その思想的基盤はスンニ派のイスラム主義に立脚しているものの、シリア国内の安定と発展を重視している点が特徴的です。


HTS(シャーム解放機構)は、2012年からシリア北西部のイドリブ県を実質的に支配し、小規模な政府組織を形成してきました。この組織は、シリアを統治する上で宗教的な寛容が必要であるとの立場を取っています。スンニ派に属する彼らですが、シーア派やキリスト教徒、さらにはドゥルーズ教徒に対しても寛容な姿勢を示しており、宗教的な多様性を認める方針を宣言しています。実際、キリスト教徒に対しても「クリスマスを祝うことを妨げない」と公言するなど、これまでのところ宗教的寛容を政策として掲げています。

アサド政権の崩壊の背景には、ロシアとイランの支援不足が挙げられます。ロシアはウクライナ戦争に注力しており、シリアへの関与が限定的となりました。また、イランもイスラエルとの対立に忙殺されており、シリアやヒズボラへの支援が手薄となった結果、アサド政権の弱体化が進み、最終的に崩壊に至ったとされています。

新政権の暫定首相に就任したのはムハンマド・アル=バシール氏です。1983年生まれの彼は、かつてロシアのガス会社で部長職を務めており、その後、シリアのガス会社でも技術部長を歴任していました。アレッポにあるシリアの大学で電気工学を専攻し、エンジニアとしてのキャリアを積んだ人物です。この経歴からも分かるように、アル=バシール氏の存在はジャウラニ政権が親ロシア的な性格を持つことを象徴しています。

それからもう一つ、新政権が親ロシアであると明確に言えることは、ロシアがシリアに保有している海軍基地と空軍基地について、新政権は「保全し、手を付けない」と明言しています。

具体的には、タルトゥースにある海軍基地と、フメイミムにある空軍基地です。この二つの基地の保全を約束していることからも、新政権が親ロシア的であることが分かります。

ロシアにとって、シリアの地中海沿岸に位置するこの海軍基地と空軍基地は非常に重要です。それは単にヨーロッパを牽制するためだけではなく、そこからアフリカへの経由地としての役割も果たしているからです。

例えば、中央アフリカやニジェールなど、親ロシアの国がいくつか存在しています。そういった地域に兵士や物資を送る際、シリアが中継地点として使われるのです。人や物資の往来において、シリアは重要な中継拠点となっています。

そのため、ロシアにとってシリアの海軍基地と空軍基地は地政学的にも非常に価値が高いです。そして、それを「そのまま保全する」と表明しているのが、ジャウラニ政  権のスタンスです。


(つづく)

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②トランプ政策——アメリカの雰囲気が一変し、明るくなった

2024-12-26 00:00:00 | 政治見解
②トランプ政策
——アメリカの雰囲気が一変し、明るくなった



昨日からの続きです。トランプ政権の誕生でアメリカは何もかも変わると見られます。国際政治学者の渾身の解説です。許可を得て掲載します。


トランプ氏は、コモンセンス(常識)の重要性を繰り返し強調しています。そして共和党の綱領を見てみると、副題には「Back to Common Sense」と掲げられています。つまり、「常識に戻ろう、常識が通じる政治をしよう」というメッセージが込められています。

たとえば、国境を守ること。これは「当然のことではないか」と。違法入国者を許さないのもまた、「常識的な対応だ」と強調しています。違法に入国した人間を発見したら、速やかに逮捕して出身国に送還する。これも「当たり前のことだ」と語ります。

また、女性スポーツに男性が参加しないこと、女性用トイレに男性が入らないこと、さらに幼い子どもたちに性的転換手術を推奨しないこと――これらもすべて「常識的な行動」として位置付けられています。



トランプ氏のメッセージは、「当たり前のことをしよう」というシンプルな価値観を基盤にしており、これが彼の政策の根底にあるといえます。

トランプ氏は、この目標を実現するために、ホワイトハウスを離れてからの約1,400日間(2021年1月20日から2024年11月5日まで)を全力で活動してきました。その期間中、実に930回もの政治集会を開催しました。これは、3日に2回という非常に高い頻度です。

最後の政治集会は確かミシガン州で行われたと思います。その場でトランプ氏が「これまでに930回も集会を開いたんだ」と振り返り、「長かったな」と感慨深げに語ったそうです。「あと4年だと思ったときは本当に長く感じた。3年、2年、1年、半年、3ヶ月、そしてついに明日だ」と、再び大統領に返り咲くまでの日々を振り返りながら、支援者たちに語りかけたのです。

彼の情熱的な活動を支えたのは、MAGA運動を担った多くの支持者たちの存在です。これほど多くの集会を行うトランプ氏のスタミナも驚異的ですが、それを支え続けた支持者たちの熱意と努力もまた素晴らしいものでした。

1,400日間で930回の政治集会を開催するというのは驚異的な数字です。仮に1,500日で1,000回という計算をしてみても、平均して数日に1回のペースで集会が行われていたことになります。参加者は少なくても数万人、多いと10万人以上に達することもありました。この規模の大衆運動は、真の保守派による大規模な運動として、トランプ氏を再び選挙で勝利させ、アメリカ大統領の座に返り咲かせた原動力となりました。

この運動を支えたのは、トランプ氏自身とその周辺の並外れたスタミナ、そして彼らの取り組みを支え続けた多くの支持者たちのエネルギーでした。特に今回は、大規模な不正選挙が行われないように徹底した対策が取られました。激戦州の7州では特に念入りに対応し、10万人のボランティアが動員され、全米で500人の訴訟弁護士が待機。異常な行為や不正の兆候があれば即座に対応し、現場での記録や動画の撮影を行うなど、事態を抑え込む体制が整えられました。

これらの取り組みは、アメリカの愛国者たちが持つ祖国への深い愛情と必死の努力の賜物です。この4年間にわたる努力が結実し、トランプ氏の勝利、さらには上院と下院の勝利という大きな成果をもたらしたのです。この運動が成し遂げたことは非常に大きく、今なお続いているこの大衆運動が、勝利の原動力となったのは間違いありません。

そして、イーロン・マスクのような影響力のある人物が途中からトランプ陣営に加わり、協力して勝利をつかんだという事実は極めて重要です。もしこれがなければ、アメリカはカマラ・ハリスの政権下に置かれ、世界は第3次世界大戦に向けて一気に突き進んでいた可能性があります。国際秩序は崩壊し、無国籍大企業が巨大な利益を得る一方で、それらと結託する左派利権層がアメリカ国内で権力を握り、社会全体が大きく瓦解していたかもしれません。



そのような危機的状況において、トランプ陣営はアメリカを守っただけでなく、世界を平和へと導く大きな舵を切りました。それは単に一国の勝利にとどまらず、西洋文明や近代化された社会をも守るという壮大な意味を持っています。もしアメリカの自由と民主主義が崩壊すれば、世界全体の近代国家や近代文明そのものが揺らぎ、混乱に向かっていったことでしょう。

そのような状況を防ぐために奮闘し、成果を挙げたのが、トランプ派の人々でした。彼らの努力と団結が、アメリカだけでなく世界全体の安定と平和を支えたと言えるでしょう。

アメリカが大きく方向転換を果たすことで、今後の展望が開けてくるのは間違いありません。しかし、トランプ政権の1期目だけでディープステートとの戦いが終わるわけではありません。この戦いは、グローバリストや極左勢力との長期的な闘争であり、2期、さらには3期にわたって続けていく必要があるでしょう。

とはいえ、今回の勝利は極めて重要な転換点となりました。もしこの場で敗れていたならば、将来への希望は失われていたかもしれません。しかし、ここで勝利を収めたことで、私たちの側は今後の戦いを有利に進めていくための基盤を手に入れたと言えます。

アメリカに目を向けると、民主党に投票した人々は旧メディアを主要な情報源としている一方で、共和党やトランプ支持者はインターネットを駆使して主体的に情報収集を行っている、という明確な違いが見られます。この点については以前も触れましたが、日本でも同様の状況が徐々に広がりつつあると考えられます。

とはいえ、日本では依然として旧大手メディアの影響力が強いため、これとの戦いを粘り強く続ける必要があります。しかし、兵庫県知事選挙の結果を見る限り、非常に大きな希望を感じることができるのではないでしょうか。

話題を少し戻しますが、トランプ氏が格闘技観戦に訪れた件について触れておきます。11月16日、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで行われた総合格闘技団体UFCの試合にトランプ氏が姿を見せました。このUFCのCEOであるダナ・ホワイト氏は元々トランプ支持者として知られており、共和党の党大会で演説を行ったこともあります。

試合のメインイベント前、トランプ氏やイーロン・マスク氏、ロバート・ケネディ・ジュニア氏が会場に入場すると、観客席は大熱狂。「USA!USA!」という愛国的なコールが会場全体に響き渡り、熱気が一層高まりました。



その場ではさらに感動的な場面がありました。試合に勝利した黒人のチャンピオンが、熱心なトランプ支持者であり、キリスト教信仰の厚い人物であることを明かしました。そして、自身が勝ち取ったチャンピオンベルトをトランプ氏に贈呈するという、非常に印象的なシーンが繰り広げられました。この出来事に会場中が感動し、大歓声に包まれました。

このような光景は、現在のアメリカのムードを象徴していると言えます。多くの人々がトランプ氏を支持し、「トランプダンス」を踊り、SNSにアップしています。

アメリカ全体の雰囲気が一変し、明るくなったということをお伝えしたいと思います。現地に住む方々から寄せられた話を伺うと、シカゴやニューヨーク、さらには比較的リベラルな街として知られるロサンゼルスでも、街全体が活気を取り戻し、明るいムードになっているとのことです。

特に注目すべきは、街中から浮浪者が減少したという点です。これについては、大部分が違法移民だった可能性が高いとの見解が寄せられています。違法移民が姿を消したことで、地域社会の状況が改善されつつあるのです。こうした変化は、トランプ政権が本格始動する前にもかかわらず、すでに「トランプ効果」と呼べる影響が現れ始めている証拠だといえるでしょう。

(了)


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①トランプの政策——不法移民、経済、国防 “20の方針”

2024-12-25 00:00:00 | 政治見解
①トランプの政策
——不法移民、経済、国防 “20の方針”


トランプ政権の誕生でアメリカは何もかも変わると見られます。国際政治学者の渾身の解説です。許可を得て掲載します。


ここでは「トランプ政策 共和党綱領に見る20の指針」というテーマについてお話しします。トランプ氏自身は、自らの政策アジェンダを「トランプ47」と名付け、第47代アメリカ大統領として取り組むべき政策を掲げています。

トランプ氏の公式ウェブサイトでは、これらの政策について詳しく紹介されています。ただし、その内容は各地で行われた演説をまとめた形式になっており、一貫性やまとまりに欠ける部分も見受けられます。

一方で、共和党の綱領(プラットフォーム)は非常に体系的に整理されており、わずか十数ページで構成されています。この綱領には10の主要分野が記載され、それぞれに具体的な政策目標が示されています。特に注目すべきは「20の指針」と呼ばれるもので、トランプ共和党が掲げる政策の方向性を具体的に表したものです。

これから、この20の指針について順にご紹介します。



1番目は、国境を封鎖し、違法移民の侵入を阻止するというものです。これは移民政策の基盤となる基本的な対策といえるでしょう。

2番目は、アメリカ史上最大規模の強制送還作戦を実行することです。違法滞在者を対象とし、移民政策を厳格化することが目指されています。

3番目は、インフレを収束させ、アメリカを再び手頃な価格で生活できる国にするという目標です。これにより、食料品や日常生活必需品が手の届く価格に戻り、全米の消費者が恩恵を受けるとされています。

4番目は、アメリカを世界最大のエネルギー生産国にすることです。この政策は、国内でのエネルギー生産を加速させ、結果的にガソリン価格を引き下げることで、インフレの抑制にも寄与するとしています。この3番目と4番目の政策は密接に関連しており、エネルギーコストの低下が全体的な物価安定に繋がることを狙ったものです。

5番目の項目では、アウトソーシングを廃止し、アメリカを製造業の超大国として再構築することが掲げられています。これは、国内生産を増やし、「メイド・イン・USA」の製品を増やす取り組みです。アウトソーシングとは、海外からの輸入に依存する現状を改め、国内での生産を重視する政策を指します。

6番目には、労働者への大幅な減税が含まれています。特に、チップに対する課税を廃止することで、現場で働く労働者に直接的な恩恵が及ぶとされています。この政策は、多くの低所得労働者にとって大きな助けとなるでしょう。

7番目の項目では、憲法、権利章典、言論の自由、信教の自由、武器の保有と携帯の権利を含む基本的自由を守ることが明記されています。特に、アメリカ憲法修正第1条が保障する言論の自由と、第2条が定める武器の保有・携帯の自由が強調されています。

修正第1条は、言論の自由や宗教の自由といった基本的な権利を守るものであり、民主主義の基盤を支える重要な条項です。一方で修正第2条は、市民が武器を持つ権利を保障することで、政府が専制的、独裁的な体制に傾いた場合に、それに対抗する手段を市民に提供するものです。言論の自由を守るための最後の手段として銃の保有が位置づけられており、この2つの修正条項は、アメリカの民主主義の柱として非常に重要な役割を果たしています。

8番目の項目は、第3次世界大戦を防止し、ヨーロッパと中東に平和を取り戻すと同時に、アメリカ全土に巨大なミサイル防衛シールドを構築するというものです。このシールドは「鉄のドーム(Iron Dome)」技術を基にし、すべてアメリカ国内で製造されることが強調されています。

トランプ氏は、第3次世界大戦の危機を回避することに強い使命感を持っています。特に、ウクライナ戦争を含むヨーロッパの情勢や中東の紛争を終結させることが、平和回復の鍵として位置づけられています。


さらに、この政策の重要な柱となるのが、アメリカ全土をカバーするミサイル防衛網の構築です。この「鉄のドーム(Iron Dome)」システムは、イスラエルとアメリカが共同開発した技術を基にしており、外国からのミサイル攻撃を防ぐ防衛システムとして高く評価されています。イスラエルではすでに実用化されているこの技術を、さらに拡張しアメリカ全土に適用する計画が掲げられています。

この防衛網の構築は、アメリカ国内の技術力を活用し、国内製造に限定することで雇用を創出し、経済にも貢献する狙いがあります。また、平和の維持という観点からも、この構想は非常に意義深いものと言えるでしょう。

アメリカ製の兵器について「全てMade in USA」で製造可能かどうかについては疑問が残ります。特に最先端兵器の製造には大量の高度な半導体が必要ですが、それらをTSMC(台湾積体電路製造)などが供給するとしても、全てアメリカ国内の工場で賄えるかは難しいと言えるでしょう。アメリカは移民国家であるため、世界中から優秀な人材を呼び寄せて対応せざるを得ないのではないかと思います。

製造業の再興についても課題があります。一度競争力を失い衰退した産業を再構築するのは容易ではありません。そのため、トランプ政権がどのように動き、この問題に対応するかが重要なポイントとなるでしょう。



次に、9番目「アメリカ国民に対する政府の武器化を終わらせる」というものです。これは、バイデン政権下で司法省やFBIが、あたかも政治的武器のように使われたことへの対抗策といえます。具体的には、政敵であるトランプ氏を排除するために、事件を捏造するなどして政治的に抹殺しようとした行為を根絶することを目指しています。司法機関が特定の政党や政治家の利益のために利用されるような事態を防ぎ、公正な運用を実現することが求められています。

 10番目は、「移民犯罪の蔓延を阻止し、外国の麻薬カルテルを壊滅させ、ギャングの暴力を抑え、暴力犯罪者を刑務所に収容する」という内容です。この方針は、治安の回復と国民の安全を最優先するものといえます。

11番目は、「ワシントンD.C.を含む都市を再建し、安全で清潔、そして住民が楽しめる都市に戻す」というものです。アメリカの主要都市の治安と生活環境の改善を目指しています。


12番目では、「アメリカの軍隊を強化し、近代化を図り、世界で最も強力で圧倒的な軍事力を誇る存在とする」とされています。これはアメリカの軍事的優位性を確保し続けるための重要な施策です。

13番目は、「米ドルを世界の基軸通貨として維持する」という内容です。これは、アメリカ経済の国際的な信頼性を支えるだけでなく、米国の経済的影響力を強固なものにするための基盤強化を示しています。

14番目では、「社会保障や医療保険を削減せず、定年退職年齢の変更を含めて、それらを確保するために戦う」という姿勢が示されています。国民の生活を支える重要なセーフティネットを維持することを強調しています。

15番目は、「電気自動車の義務化を中止し、高額で煩雑な規制を削減する」というものです。この政策は、バイデン政権が推進した電気自動車の義務化に対抗するものです。電気自動車メーカーのテスラにとって、義務化は直接的な利益となり得ますが、イーロン・マスク氏は政府からの補助金や義務化に依存しない立場を表明しています。彼のスケールの大きなビジョンを示す一例といえるでしょう。

また、トランプ氏が11月13日にホワイトハウスを訪れ、バイデン大統領との会談が約2時間にわたって行われたことが注目されます。この際、電気自動車義務化についての議論はなかったようですが、バイデン氏が終始笑顔を見せていた背景には、自分を引き摺り下ろしたカマラ・ハリス副大統領の敗北があったとも言われています。この出来事は、政権移行のトランジションが円滑に進められることを示すものとしても興味深い点です。

16番目は、「批判的人種理論(Critical Race Theory)や過激なジェンダーイデオロギーなど、子どもたちに不適切な人種的・性的・政治的コンテンツを押し付ける学校に対し、連邦資金を削減する」という内容です。この方針は、特定のイデオロギーを教育現場で子どもたちに押し付けることを防ぎ、公平な教育環境を確保することを目的としています。

17番目は、「男性を女性スポーツから排除する」というものです。これは、競技の公平性を守るために、性別に基づく適切な競技区分を維持するという意図を示しています。

18番目では、「ハマスを支持する過激派を国外追放し、大学キャンパスを再び安全で愛国的な場にする」という方針が掲げられています。これは、過激派の影響を排除し、学問の場を安心して学べる環境に整備することを目指した施策です。

19番目は、選挙制度の改革についてです。「即日投票を基本とし、投票時には有権者身分証明書を提示する」「紙の投票用紙を使用する」「市民権を証明する書類を提出する」といった具体的な手順を通じて、選挙の透明性と安全性を確保することを目指しています。

20番目の政策は、「国を新たな成功の水準へと引き上げ、国民を団結させる」というものです。これは、国内の分断を克服し、アメリカをさらに発展させるという包括的な目標を示しています。

これら20の指針は、トランプ氏がこれまで掲げてきた政策を具体化したものであり、次の4年間の政策方針を明確に表しているといえます。

(つづく)

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「環境に優しい」を謳う詐欺商法の終わり

2024-12-24 00:00:00 | 政治見解
「環境に優しい」を謳う詐欺商法の終わり




トランプ氏が米大統領に当選したことで、これからCO2に関する神話が世界的に暴露・崩壊していくだろうとの見解を国際政治学者が述べています。許可を得て掲載いたします。


グリーン詐欺の時代が終わる

「人間が化石燃料を燃やすことで二酸化炭素が大気中に増加し、その結果として地球が温暖化し、気候変動が激化している」という主張は、全く科学的根拠に基づいていない議論だとされています。このような主張を利用して生まれたのが、いわゆる「環境に優しい」と謳う詐欺的な商法です。これを英語では「グリーンスキャム(Green Scam)」と呼びますが、こうした「グリーン詐欺」の時代は終わりを迎えつつあるということです。

日本においては、経済産業省がCO2排出量を取引する「排出権取引」という制度を導入しようとしています。また、動力源として水素を活用し、ガソリンやディーゼルを全廃して水素に置き換える計画も進められています。

しかし、水素は零下250度という極低温でないと液化できず、扱いが非常に難しい燃料です。宇宙には豊富に存在しますが、これを実際に燃料として活用するのは極めて困難です。原発推進派の考えでは、原子力発電を用いて水素を製造し、その水素を使って自動車や工場を動かすという構想があるようです。

技術的には可能かもしれませんが、コストが非常に高く非効率的です。そのため、無理に水素を使用する必要はないのではないでしょうか。CO2神話が事実ではないと分かれば、なおさらその必要性は薄れます。

また、洋上風力発電についても同様の問題があります。台風やハリケーンに耐えられる設計ではないため、現実的に運用するのは困難です。さらに、経済的にも採算が取れないことが明らかになってきています。


新型原発は成功するか

それから、新型原発についてですが、新型の大型原発や小型モジュール型原発が議論されています。「小型のものを作ればいいのでは」という意見もありますが、最終的にはコスト面で見合わず、実現は難しいと思われます。また、これらの原発では、放射性廃棄物を最長で10万年も保管しなければならず、その社会的コストは非常に高額です。

市場経済において、あまりにもコストが高いものは排除される傾向にあります。しかし、この問題では市場内のコストだけでなく、社会的コストも考慮しなければなりません。たとえば、放射性廃棄物の保管にかかる負担は、市場の枠を超えた課題です。さらに、人類はこれまでに何かを10万年保管した経験がありません。このような長期的な負担を子孫に押し付けるのは、極めて無責任な行為と言えるでしょう。

原発という仕組みを深く考えると、非常に刹那的であることが分かります。目先の利便性には優れていますが、発生する廃棄物をどのように処理するのか、十分な解決策が存在しません。たとえば、原子炉(ニュークリアリアクター)は当初40年の使用期限とされていましたが、寿命を60年、さらには80年まで延ばそうという動きもあります。もちろん、修繕しながら使用するにしても、老朽化に伴い欠陥が生じやすくなり、事故のリスクも高まります。

さらに、原子炉を80年使用した後、その廃棄処理はどうするのかという問題が残ります。現状では、具体的な処理方法が確立されていません。これも高濃度の放射性廃棄物であるため、対応が非常に難しいのです。たとえば、イギリスでは初期に廃炉にした原発であっても、完全な処理には100年かかると言われています。その間、膨大なコストが必要です。

私たちがそのコストを負担するだけでなく、未来の世代にまで押し付けることになります。これは到底許されるべきことではありません。原発の導入や継続を議論する際には、このような社会的影響を十分に考慮する必要があります。


メイド・イン・チャイナのエネルギー

原発というのは非常に刹那的な考え方に基づいている部分があり、これが大きな問題だと思います。一方で、グリーンスキャムに該当しない太陽光パネル発電や地上風力発電などの技術は、これまでにも度々述べているように、世界的にコストが大幅に下がってきています。これらの技術は今後も存続していく可能性が高いでしょう。



しかし、課題として挙げられるのは、これらの製品に「メイド・イン・チャイナ」が多いという現状です。中国はダンピングによる不正競争を行い、世界中に低価格で輸出しています。その結果、他国のソーラーパネル産業や風力発電産業が打撃を受け、市場から撤退させられることがあります。そして、最終的には市場を独占しようという戦略を取っています。

こうした状況を放置すれば、中国に市場を独占された後、価格を自由に引き上げられる危険性があります。それだけでなく、安全保障上の脅威にもなり得ます。例えば、半導体や電力供給の制御を外部から操作され、必要な時に電力が供給されない、あるいは意図的に故障させられる可能性も考えられます。中国に逆らえば、こうした脅威を突きつけられるリスクもあるのです。

このような背景を踏まえ、中国製のソーラーパネルや風力発電機を市場から排除し、自由民主主義国家間で安定したサプライチェーンを構築することが必要です。これはCO2削減の取り組みに関係なく、技術的にも経済的にも非常に重要な課題です。

ソーラー発電や地上風力発電の技術は着実に進歩しており、これを活用しない理由はありません。なぜなら、これらは国内で発電できる電力であり、外国から購入する必要がないからです。可能であれば、ソーラーパネルを国内で製造し、日本産のソーラーパネルを活用して発電すれば、純国産の電力を確保することができます。このような方向性を目指し、日本のエネルギー政策を進めるべきだと考えます。


CO2カルト

さて、この話は原発推進論とも絡んでいますが、AI社会の到来により、AI革命が進む中でデータセンターの需要が急増していく、つまり電力需要がますます増加するという議論があります。これを理由に「原発を復活させるべきだ」という主張が出ているわけです。しかし、この考えについて、私はフェイクだと思います。

本質的には、いわゆる「CO2カルト」の発想に基づいているのです。電力が必要であれば、他の方法でいくらでも電力を生み出すことが可能であり、わざわざ原発に頼る必要はありません。以前もお話ししましたが、原発が行っていることは基本的に「お湯を沸かしている」だけです。蒸気でタービンを回す仕組みですので、お湯を沸かす手段は原発以外にも数多く存在します。そのため、原発が唯一の選択肢であるかのように結びつけるのは合理的ではないと考えます。



また、無国籍企業的なグローバリストの代表格として挙げられるのが、マイクロソフトのビル・ゲイツ氏です。彼は原発を非常に推奨しており、強い関心を持っています。同じくイーロン・マスク氏にも類似した傾向が見られます。実際、マイクロソフトは2023年9月に、閉鎖されていたスリーマイル島の原子力発電所を再稼働させ、電力供給契約を結んだと報じられています。

このスリーマイル島は、かつて「チャイナシンドローム」とも呼ばれる事故で有名になりました。原子炉のメルトダウンにより、溶解した炉心が地球の反対側まで達するのではないかというブラックユーモアが語られるほどの大事故を起こした場所です。当然ながら、炉心が地球を突き抜けることはありえませんが、それほど深刻な事故だったのは事実です。

このような背景から、アメリカではスリーマイル島の事故を契機に原発への信頼が大きく揺らぎ、原発推進にブレーキがかかるようになりました。それにも関わらず、この発電所を再稼働させようとする動きが出ているのです。これは、原発の信頼性や安全性に対する社会的な懸念を再び喚起するものだと言えるでしょう。

それ以降、原子力発電は徐々に影響力を失い、原発推進派も次第にその力を弱めていったという転換点が訪れました。一方で、10月にはアマゾンやグーグルが次世代の小型モジュール型原子力発電の開発に投資することが明らかになりました。マイクロソフト、アマゾン、グーグルといった大企業は、2030年までに全事業で温室効果ガスの排出量をゼロにする目標を掲げています。

これらの企業は、いわゆる「CO2神話」を信じているようです。そのため、原子力発電に注目しているという発想です。しかし、AI向けのクラウド容量の拡大は既にある程度限界に達しつつあるとの指摘もあります。最近ではファイナンシャルタイムズやウォールストリートジャーナルがそのような内容の記事を掲載しています。



もちろん、クラウド容量の拡大は今後も必要でしょうが、電力需要が爆発的に増えるために「どうしても原発が不可欠」という必然性があるわけではありません。電力が必要なら、CO2削減に固執せず、他の方法で電力を供給すれば良いという話です。しかし、原発推進派は、この状況を何とか原子力発電の必要性に結びつけたいと考えているように見えます。

もう一つの議論として、電力供給の問題があります。例えば、アマゾンやグーグルのデータセンターの近くに原発を建設し、そこから専用の電力供給を受けるというアイデアです。一見、効率的な考えのように思えるかもしれません。しかし、原子力発電所には周辺地域に危険性を及ぼすリスクがあるほか、原発の電力は公共の資源と見なされます。そのため、特定の企業だけに排他的に電力を供給することが電力行政の観点から適切かどうか、反対意見が存在しています。

最近、テキサス州で興味深い訴訟が起きています。訴訟の相手はブラックロックをはじめとする投資会社で、州の電力料金を不必要に高くしたとして提起されたものです。具体的には、CO2削減の義務を電力会社に過度に押し付けたことが問題視されています。

投資会社は非常に大きな影響力を持っており、自らが投資している企業に対し、「CO2を排出するな」や「グリーンエネルギーを採用しなければならない」といった指示を行ったとされています。その結果、電力料金が上昇し、州民の利益に反する状況が生じたとして、この訴訟が起きたのです。この主張には筋が通っているように思われ、非常に興味深い動きだと言えるでしょう。

こうした大企業が恣意的に行動する背景には、企業トップ層がリベラル的な価値観を持っていることが影響しているのかもしれません。そのため、原発の推進を抑制したり、CO2削減を強調する政策を取ることで、結果的にコストを押し上げている状況が見受けられます。また、CO2神話の真偽についての議論が十分になされていないことも問題視されています。この状況は、一部では新興宗教的な性質を持つとさえ言われています。極端な例を挙げると、公序良俗に反したオウム真理教のような思想的側面を持つ新興宗教にも例えられるかもしれません。

さらに、エネルギー問題について実際の数字を見てみると、ロシアへの依存度が非常に高い現実があります。例えば、2024年9月時点でEUの天然ガス輸入の23.74%がロシアから供給されており、ロシアは最大の輸入元となっています。このうち液化天然ガス(LNG)が全体の40%、パイプラインによる供給が60%を占めています。

また、2023年にアメリカの原発で使用された濃縮ウランのうち27%がロシア製でした。ロシアは世界の濃縮ウラン供給の約45%を占めており、アメリカ国内で消費された濃縮ウランのうち国産の割合はわずか28%にとどまります。国産のウランは高価であり、ロシア産のウランが安価であるため、ロシアからの供給が止まると原子力発電の収益性が低下してしまうのです。

こうした状況の中で、ロシアは2023年11月15日にアメリカへの濃縮ウラン輸出を禁止しました。特別許可が与えられた場合にのみ輸出を許可するとの方針を示し、アメリカ国内の原発推進派に対して圧力をかけています。この一連の動きが、今後のエネルギー政策にどのような影響を及ぼすのか注目されています。

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ウクライナ情勢

2024-12-23 00:00:00 | 政治見解
ウクライナ情勢



11月29日、ウクライナのゼレンスキー大統領がついに「現状停戦も選択肢の一つ」と、その可能性を公に認めました。これまでさまざまな発言がありましたが、要するに「現在の状況で撃ち方を止め、ひとまず停戦してもよい」という立場を、初めて明確にしたと思われます。

また、アメリカのジャーナリストでトランプ氏に近いタッカー・カールソン氏が、ロシアのラブロフ外務大臣にインタビューを行い、その内容がX(旧Twitter)に投稿されたのは12月5日でした。このような動きから、和平への機運が高まりつつあることがわかります。つまり、ウクライナ戦争における停戦や和平への流れが、これまで以上に加速している模様です。

この現状について国際政治学者の解説を頂きました。


全体像

現在のウクライナをめぐる状況は非常に危険なものとなっています。米露間の緊張が極限まで高まっており、第三次世界大戦が勃発してもおかしくない状況です。たとえば、アメリカ製の射程500キロメートル程度の中距離ミサイルがウクライナによって使用され、ロシア領への攻撃が行われているとされています。これに対抗する形でロシアも行動を起こしており、状況は極めて緊迫しています。ロシア側は、アメリカ製の兵器によって自国の市民や兵士が犠牲となっていることを強く非難しており、プーチン大統領もこれに対して非常に厳しい警告を発しています。

さらに、バイデン大統領もこの段階においてエスカレーションを完全に諦めているわけではありません。一方、トランプ氏は停戦を目指し、和平を実現するための活動を積極的に展開しています。この和平に向けた動きは、イランやロシアとの関係において特に顕著です。たとえば、11月7日にはトランプ氏とプーチン大統領が電話会談を行ったとの報道がありました。この件についてロシア大統領府は公式に否定していますが、私は実際に会談が行われた可能性が高いと考えています。

また、イーロン・マスク氏がトランプ氏の意向を代弁する形で、イランの国連大使であるイラバニ氏とニューヨークで会談を行ったとの情報もあります。この出来事は11月11日に発生したとされていますが、イラン外務大臣のアラグチ氏は後にこの事実を否定しました。それにもかかわらず、私はこの会談も実際に行われたのではないかと推測しています。このように、トランプ氏はすでにロシアやイランとの和解を目指した具体的な動きを始めていると言えるでしょう。


ウクライナ和平の可能性

11月29日、英国のスカイニュースが報じた内容に応じて、ウクライナのゼレンスキー大統領が初めて停戦の可能性を認めました。和平が近づいている兆しといえるでしょう。

一方で、タッカー・カールソン氏がロシアのラブロフ外務大臣に行ったインタビューが12月5日に公開されました。ラブロフ外務大臣は20年以上もその職に就いている人物です。このインタビューは英語で行われましたが、日本語訳も提供されていると思われます。内容を確認すると、ロシアのこれまでの立場を繰り返していることが分かります。また、このインタビューから、第3次世界大戦の危険性が依然として存在していることも浮き彫りになっています。そのため、戦争を回避する必要性が一層高まっています。

関連する話題として、11月15日、ロシアはウラン燃料のアメリカへの輸出を禁止すると決定しました。実際、アメリカで使用されている濃縮ウランの27%はロシアから輸入されています。これは驚くべき数字であり、経済制裁を課すとしたバイデン大統領も、ウラン燃料については例外としてきた背景があります。この低コストのウランによってアメリカの原発は利益を上げているため、輸出禁止の影響は重大です。

さらに、11月17日、バイデン大統領はアメリカ製のミサイルをウクライナがロシア領土への攻撃に使用することを許可しました。それまで許可されていなかった措置です。このミサイルの射程距離は約500キロで、許可のわずか2日後、19日には実際にウクライナがロシア領土に向けて発射しました。また、11月20日には、バイデン政権が対人地雷の使用をウクライナに認めています。一方、11月21日には、ロシアが中距離弾道ミサイル「オレシニク」を初めてウクライナ攻撃に使用しました。これらの一連の出来事は、危険なエスカレーションを示しています。

タッカー・カールソン氏のインタビューも、この第3次世界大戦を回避しなければならないという強い使命感のもとで行われたものだと考えられます。トランプ元大統領の意向を直接反映している可能性も高く、カールソン氏とトランプ氏の親密な関係を考慮すると、その意図が感じ取れます。

さらに、11月7日にはトランプ氏とプーチン大統領が電話会談を行ったのではないかという話が浮上しましたが、ロシア大統領府はこれを否定しています。同様に、11月11日にはイーロン・マスク氏がニューヨークで国連のイラン大使イラバニ氏と会談したとの情報もありましたが、これについてもイラン外務省や外務大臣が否定しています。ただし、マスク氏自身はこの件についてノーコメントを貫いています。

これらの動きは、トランプ氏が対ロシアおよび対イランにおいて和解の姿勢を示そうとしているということです。

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習近平の憂鬱——内部に不満がたまりすぎた中国

2024-12-22 00:00:00 | 政治見解
習近平の憂鬱——内部に不満がたまりすぎた中国



中国で起きている無差別殺傷事件、無差別大量殺傷事件は、2月から11月の間に表向きに出ているだけで25件もあります。これには、何十人も殺したという事件もあれば、一人だけが犠牲になった事件や、人を殺さずに殺傷だけで済んだテロ事件も含まれているわけでが、実際にはもっと多く起きているんじゃないかと思います。

これが、中国共産党独裁体制の崩壊の「終わりの始まり」なのかもしれないと思われ。要するに、もう治安が保てなくなっているということです。景気が悪くて庶民がいろんな問題を抱え込んで、それが煮詰まってしまって、社会全体に復讐してやるぞというような無差別殺人や殺傷事件を起こす、という状況が見られるわけです。

現在の中国の内部状況について、国際政治学者のご意見を伺ってみました。


無差別殺傷事件についてです。今年2月から11月までに、なんと25件も発生しました。この件数は、ネット上で調べてわかる範囲での数字に過ぎません。非常に深刻な問題であり、私たちのレポートでは可能な限り詳細に、この25件について記録しています。

最も注目された事件の一つが、11月11日に広東省珠海市にある運動施設で発生したものです。一台の車が暴走し、多くの人をはねて、35人が死亡、43人が負傷しました。運転していた62歳の男は、離婚後の財産分与をめぐる不満が動機であったと当局は発表しています。しかし、中国の共産党支配のもとでは、情報や言論の自由が制限されているため、事件の本当の背景については不明な点も多い状況です。

11月16日には江蘇省無錫市の職業技術学校で、21歳の男が刃物を使い、8人を死亡させ、17人にけがを負わせる事件が起こりました。この男は同校の生徒で、試験に不合格となり卒業証書を得られなかったことに不満を抱いていました。また、学校での「実習」と称して労働を強いられ、報酬が非常に低かったことにも不満があったとされています。

こういった事件では、車を使った暴走や刃物での襲撃が特徴的です。日本でも秋葉原の事件のように、同様の無差別殺傷事件が時折発生します。また、アメリカでは銃を使った無差別殺傷事件がレストランなどで起こることがあります。しかし、中国におけるこれらの事件の背景には、経済的な困窮と社会的な閉塞感が大きく影響していると考えられます。

中国では経済がうまく機能しておらず、個人の倒産や失業が増加しています。それを救済する経済政策も不足しており、不満を訴える手段すら制限されています。SNSや通常の言論活動は共産党によって厳しく抑制されており、不満のはけ口がほとんどありません。

一方で、日本などの社会では、選挙やメディア、インターネット上での自由な発言などを通じて、不満を表明し社会を変える手段があります。また、裁判を利用して正当な権利を主張することも可能です。しかし、中国ではこうした手段が事実上存在しません。

共産党の支配体制に抗うことができない中で、人々の欲求不満は蓄積し、それが暴発するケースが増えています。かつて高度経済成長期には、多くの人々が経済的な恩恵を享受し、社会全体が比較的安定していました。しかし、現在の経済不況の中では不満のはけ口がなくなり、それが社会問題として表面化しているのです。

以前は地方で問題が発生した場合、北京に出向いて当局に直訴することがある程度許されていました。日本で言うところの「百姓一揆」のようなものです。しかし、そのような手段さえも現在では厳しく制限されています。これが中国社会の現状です。

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独仏各政権の弱体化について

2024-12-21 00:00:00 | 政治見解
独仏各政権の弱体化について



早速、国際政治学者の解説をご覧ください。


概要:独仏の弱体化とアメリカ1強

12月4日、フランスのバルニエ内閣が崩壊しました。大統領は引き続きマクロン氏ですが、新たな首相を任命し、内閣を再編しなければならず、マクロン氏にとっても非常に大変な状況です。

一方、ドイツでも連立政権がすでに解体されています。そして来年2月23日には総選挙が予定されています。イギリスに目を向けると、EU離脱後の経済状況は依然として厳しく、総選挙で労働党内閣が成立しましたが、その後、再選挙を求める署名が300万人以上集まり、政府に突きつけられています。このように、英独仏ともに経済が行き詰まり、それに伴って政治的にも混乱が続いている状況です。

これらの根本的な原因の一つとして挙げられるのが、CO2削減政策です。「絶対的にCO2を削減する」という目標のもと、全ての車を電気自動車に移行させる動きが進んでいます。また、ウクライナ戦争への支援に多額の資金が投入されている点も、英独仏をはじめとする多くのEU諸国に共通しています。しかし、イタリアやハンガリーはこれらの方針と距離を置いています。それでも、特に英独仏においてはこれらの政策が経済の停滞を招いているのは明らかです。

さらに、右派にしても左派にしても、政権を担うのはグローバリスト的な立場の政党が主流であり、こうした体制が結果として政治の行き詰まりを招いています。現在、イギリスでは内閣が継続していますが、ドイツとフランスでは内閣崩壊が起きています。これらは構造的な問題によるものと考えられます。ヨーロッパ経済が完全に行き詰まっているのです。

一方、アメリカではトランプ政権が誕生し、経済的には「アメリカ1強」の体制がますます強まっています。投資先としても、これまで経済の優等生とされていたドイツですらその地位を失い、フランスやイギリスはさらに弱体化しています。その結果、世界の資金の行き場として、アメリカが唯一無二の存在となりつつあります。この「アメリカ1強」の状況は、しっかりと把握しておくべき重要なポイントです。


独仏の弱体化は中国への依存しすぎにある

フランスのバルニエ内閣が崩壊という事態は、ドイツでも同様で、トランプ氏が11月5日に選挙で勝利した流れが間接的に反映されていると言えるでしょう。アメリカが「CO2削減を絶対視する政策を取らない」という姿勢を示す中で、CO2削減に固執してきたフランスとドイツの連立内閣が次々と崩壊しているのです。

トランプ氏がウクライナ戦争の和平を訴える一方で、独仏の内閣は「ウクライナ戦争を推進する」と明言していました。同時に、CO2削減政策を掲げた両内閣が崩壊した点も注目に値します。この政策では、ガソリン車やディーゼル車を廃止し、全面的なEV化を推進する方針が採られてきましたが、その結果、ドイツの自動車産業は深刻な打撃を受けています。現在、ドイツの自動車産業は大規模な危機に直面していると言えるでしょう。

この問題の背景には2つの要因があります。1つ目は、ドイツがロシアからのエネルギー供給、特に天然ガスに過度に依存しようとしたことです。ノルドストリームを通じた安定供給を期待していましたが、ウクライナ戦争の勃発によりそれが不可能となり、大きな打撃を受けました。この点については、ある程度の同情の余地があります。

しかし、2つ目の要因は明らかに戦略的な誤りです。それは、中国に対する過剰な依存です。ドイツは中国を製造業の中心地として利用すると同時に、14億人の巨大市場として楽観視してきました。安価なロシアのエネルギーを使って製品を生産し、それを中国で販売するという構図を描いていたのです。この戦略は結果的に失敗に終わりました。

ロシアとの関係については、ウクライナ問題が解決し、ロシアとヨーロッパが再び友好的な関係を築けるようになれば、ノルドストリーム1や2が再稼働し、天然ガスの安定供給が可能になるかもしれません。これは、トランプ氏も望むところでしょう。

一方、中国については共産党独裁体制が続いているため、非常にリスクの高いパートナーと言わざるを得ません。フォルクスワーゲンをはじめとするドイツ企業が中国依存を深めすぎた結果、抜け出せない状況に陥っているのは明らかな戦略的失敗です。この点は、日本企業にも警鐘を鳴らすべきでしょう。

CO2削減政策は経済を圧迫し、さらにウクライナ戦争の影響でコストが増大しています。このような中で、フランスやドイツの連立内閣は、右派であれ左派であれ、グローバリスト的な性格を持ち続けています。その結果、経済と政治の両面で行き詰まり、崩壊が続いているのです。


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米中間の確執の原因、フェンタニル問題

2024-12-20 00:00:00 | 政治見解
米中間の確執の原因、フェンタニル問題



米中間の問題に、日本メディアではほとんど報道されていない、そして非常に大きな問題が存在しています。それが「フェンタニル問題」です。

簡単に言えば、これは麻薬密輸の問題を指します。フェンタニルは、別名「オピオイド」とも呼ばれる薬物で、米中間で現在最大の問題とされています。具体的には、アメリカ国内で年間約10万人が薬物の過剰摂取によって亡くなっていますが、そのうち3分の2がフェンタニルによるものだとされています。

国際政治学者に、特別な解説をお願いしました。


フェンタニル問題とは何か

フェンタニル問題を取り上げたあるレポートでは、次のように述べられていました。「1日に大型旅客機が1機ずつ墜落しているほどの人数が死亡している」というのです。この表現からもわかるように、アメリカにとってこの問題は非常に深刻で大きな課題となっています。

では、このフェンタニル問題の背景には何があるのでしょうか。中国がその原料をカナダやメキシコに輸出し、そこで犯罪組織がその原料を基にフェンタニルを製造し、それを完成させてアメリカに密輸しているという構図が明らかになっています。そして、それが原因でアメリカ国内で多くの死者が出ているのです。

この状況を踏まえて、トランプ前大統領は先日、対策として中国に10%の追加関税を課すことを発表しました。同時に、カナダとメキシコに対しても25%の関税を課すと述べ、「この問題を解決しなければならない」と強調しました。カナダとメキシコから直接フェンタニルが流入してくることから、そちらに高い関税率を適用する必要があると判断したのです。これは、懲罰的な関税措置といえます。

さらに、フェンタニルの製造には原料となる化学物質が必要ですが、それを密輸しているのは中国であることがはっきりしています。しかし、アメリカがトランプ政権時代からバイデン政権に至るまで何度も交渉を試みても、中国はこの密輸行為を止めようとはしませんでした。これにより、中国共産党がアメリカを弱体化させようとしているのではないかと推測されています。

このような状況が続けば、米中関係は最悪のコースをたどる可能性が高いでしょう。習近平国家主席がこの問題を軽視し、対米協力を拒む場合、フェンタニル問題を発端とした米中間の緊張はさらに高まります。この問題を放置することは、両国にとって深刻な対立を招く結果になるでしょう。

また、こうした事態が起こると、トランプ政権の基本姿勢にも変化が生じる可能性があります。これまでは「戦争はしない」という方針を掲げ、また「中国の国内体制を変えること(レジームチェンジ)は求めない」というスタンスを取っていました。しかし、もし習近平国家主席がフェンタニル問題で協力を拒み続ける場合には、中国共産党体制そのものを崩壊させることを目指す、いわゆるレジームチェンジを仕掛ける可能性が出てくるのです。それほどまでに、このフェンタニル問題はアメリカにとって重大な課題であり、対応が求められるテーマとなっています。

もちろん、貿易問題も引き続き重要であり、高関税を課すなどの厳しい措置が取られることも予想されます。しかし、この問題がもたらす影響はそれだけにとどまらず、軍事的な緊張をさらに高める要因ともなり得ます。

したがって、米中間の緊張が激化することで、日本にとってもこの問題は決して他人事ではありません。


フェンタニル、中国共産党が密輸を通じてアメリカ社会を崩壊させようとしている

たとえ「やめろ」と言っても、中国共産党は止める気配がありません。具体的には、フェンタニルの原材料をカナダやメキシコに密輸し、現地の犯罪組織がその原材料を使ってフェンタニルを製造し、それをアメリカに密輸している状況です。アメリカでは年間10万人もの人が薬物の過剰摂取で亡くなっています。そのうちの3分の2がフェンタニルによるものとされています。

フェンタニルは別名「オピオイド」とも呼ばれています。この原料を中国からカナダやメキシコに輸出し、それがアメリカに密輸されるという流れです。これに対して、バイデン政権は国境政策において重大な失策を犯しました。特に、メキシコとの南部国境を開放したことが批判されています。この政策によって不法移民が自由に流入するようになり、それと同時に麻薬の密輸も事実上自由化されてしまいました。

このような状況下で、薬物過剰摂取による死者数は10年前の2倍に増加しています。この問題は、今やアメリカ社会で最も深刻な課題の一つとされています。トランプ政権時代にも、この問題を解決しようと試みていましたが、中国側は曖昧な態度を取り続け、協力を拒んできました。

現在、中国国内ではフェンタニルが製造されていないことは確かですが、過去には直接アメリカに密輸していた時期があったようです。当時は郵便物を使った密輸が多く、これが問題視されました。その後、アメリカ側の取り締まりが強化されたため、密輸の手口が変わり、原材料がカナダやメキシコに流れるようになりました。現地では犯罪組織がこの原材料を用いて製造しています。

メキシコには、シナロア・カルテルという世界最大規模とも言われる犯罪組織が存在しています。この組織はメキシコ政府の取り締まりをものともせず、その影響力は政府をも凌駕するほどです。特に以前の左翼政権は麻薬カルテルに対して妥協的な態度を取っていましたが、現在の左翼政権2代目であるシェインバウム政権は、大量のフェンタニルを押収するなど取り締まりの姿勢を強化しています。ただし、これが本当に効果を発揮するのか、それとも単なるポーズに過ぎないのかは依然として疑問が残ります。

麻薬カルテルの勢力は非常に強大で、大統領でさえ対抗するには命を危険にさらす覚悟が必要です。実際、地方の政治家の中には麻薬カルテルによって命を奪われた人も少なくありません。これほどまでに麻薬組織の力が増大してしまった現状において、アメリカとしては南部国境を厳格に取り締まることが不可欠と言えるでしょう。


いくら中国にやめろと言っても、彼らは止めない

確かに中国はフェンタニルそのものは製造していませんが、その原材料を輸出しているのは事実です。

カナダについても触れてみましょう。香港が中国に返還される際、多くの中国人がカナダに移住しました。その結果、チャイニーズマフィアが勢力を拡大し、中国から原材料を輸入し、カナダ国内でフェンタニルを密造してアメリカに輸出しているのではないか、と言われています。この状況を本気で取り締まる必要があります。

中国は自国での麻薬使用を厳しく取り締まっています。これは、かつてアヘン戦争でひどい目に遭った歴史が背景にあります。しかし、他国を弱体化させるために麻薬を利用していると指摘されています。例えば、毛沢東は延安に定住した際、現在の内モンゴル自治区にあたる地域でアヘンを栽培させ、それを国民党に売りつけて利益を得ると同時に、国民党を堕落させました。このように、自国では取り締まりつつも、他国には麻薬を「武器」として使うという行動が取られていたのです。

こうした中国共産党と麻薬生産の関係について、静岡大学の楊海英教授が『墓標なき草原』という著書で詳しく述べています。この本では、中国共産党が文化大革命期にモンゴル人たちに対して行った虐殺や土地の収奪といった残虐行為のほか、麻薬に関する悪事についても記録されています。



国内では麻薬を取り締まる一方で、国外ではアヘンを武器として使うという行為が平然と行われてきたのです。ベトナム戦争の際には、アメリカ軍の戦力を弱体化させる目的で、アヘンや違法薬物を広めるよう意図的に仕向けたとされています。これは、中国共産党の戦略「超限戦」(あらゆる限界を超える戦争)の一環として行われたと考えられます。麻薬の流通さえも戦争の手段として利用する。それが敵を弱体化させるための方法なのです。

しかし、今回のフェンタニル問題については、すでにトランプ氏に知られており、これを本気で取り締まらない限り、米中関係は最悪の状態に陥る可能性があります。トランプ氏は、中国と経済的に縁を切り、高関税を課すことで「デカップリング」を進める考えです。中国経済がその結果どうなろうとも、それは「自己責任」とするのがトランプ氏のスタイルです。

もし中国がフェンタニルの原料密輸を止めない場合、トランプ政権は中国共産党との本格的な対立を選択し、場合によっては体制変更(レジームチェンジ)を視野に入れる可能性もあります。現時点では、トランプ氏が明確にそれを口にしているわけではありませんが、今後の展開次第ではその可能性があると考えられます。

これが現在問題となっているフェンタニルの問題です。習近平氏は、この問題をどこまで認識しているのでしょうか。


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アサド政権後のシリア情勢

2024-12-19 00:00:00 | 政治見解
アサド政権後のシリア情勢



シリアでは、12月8日、アサド政権が崩壊し、反政府勢力を主導した「シリア解放機構」のもとで暫定政権が発足しました。

その直後に、アサド政権の後ろ盾となってきたロシアが暫定政権側に接触し、ロシア軍の駐留の継続に期待を示したと伝えられています。一方、反政府勢力を支援してきた隣国トルコの高官も首都ダマスカスを訪問したと伝えられていて、シリアへの関与をめぐる各国の動きが活発になっています。

これらの背景を踏まえ、シリアの最新情勢について、国際政治学者の解説をお願いしました。


アサド政権崩壊後の全体像

アサド政権が予想外にもあっさりと崩壊するという事態が発生しました。特に注目すべきは、シャーム解放機構(HTS)の動向です。この組織はジャウラニという人物が率いており、首都を陥落させたと報じられています。しかし、ここからがさらに深刻な問題となります。(後半に詳しい解説あり)


このシャーム解放機構を支援しているのはトルコであり、さらにその背後には中東の混乱を意図的に引き起こしてきた英国守旧派の存在が指摘されています。これまでにも、イスラム原理主義を利用して中東を混乱させる戦略が展開されてきました。例えば、イスラム国やアルカイダといった組織の台頭を陰で支えた勢力が同じく関与していると見られます。今回も同様の構図が浮かび上がってきています。

表面的にはトルコのエルドアン政権がシャーム解放機構(HTS)を支援しているとされていますが、その背後には英国守旧派がいることはほぼ間違いありません。こうした動きに対して、アサド政権を支えてきたロシアとイランが弱体化しました。

ロシアはウクライナ戦争に注力しており、結果としてアサド政権への支援が手薄になっています。一方、イランはイスラエルとの衝突が激化しており、影響力が著しく低下しています。特に、イランの代理勢力であるヒズボラは、イスラエルの攻撃を受けてほぼ壊滅状態に陥っています。

ここで注目すべきは、トランプ氏の立場です。彼は一貫して「アメリカはこの問題に絶対に関与すべきではない」と主張しています。アサド政権は、アメリカにとって友好国でも同盟国でもなく、むしろ敵対的な立場にある国です。一方で、イスラム過激派もまたアメリカの敵です。したがって、このような状況にアメリカが関与することは無益であるとトランプ氏は明言しています。この姿勢は非常に理にかなったものと言えるでしょう。

さらにトランプ氏は、「チャイナが仲介に乗り出す可能性がある」と示唆しています。実際、イランとサウジアラビアの国交正常化においても、中国が仲介役を果たしました。これにより、中国共産党が国際的に良い役回りを担った形になっています。本来であれば、アメリカが果たすべき役割とも言えますが、現在の状況ではアメリカが手を出す余地はほとんどありません。

ロシアはアサド政権を支援しているため、この問題において仲介者として機能することは期待できません。結果的に、中国が大国として仲介の場に立つ可能性が高いでしょう。トランプ氏の立場としては、「中国がやりたければやればよい」という考え方に基づいているようです。このような中国の動きが一定の国際的影響力を持つことになるかもしれませんが、アメリカとしてはあえて関与しない方針を取るべきだというのがトランプ氏の主張です。


シャーム解放機構(HTS)のジャウラニ

シャーム解放機構のジャウラニさんについて話します。今のところ言われているのは、この人たちは元々スンニ派の宗教原理主義で、アルカイダの流れを汲んでいましたが、そこから分かれた存在だということです。


ただ、今回に関しては、シリアの中にもシーア派の人たちがいるわけです。そして、アサドファミリーというのは、アラウィー派というシーア派の中の少数派に属しています。これまでは少数派でしたが、アサド政権はシーア派の人たちに対しても弾圧を行わず、さらに一部のキリスト教徒に対してもクリスマスを祝うことを許しているようです。「弾圧はしない」という姿勢を示していて、今のところはソフトフェイスを装っているというわけです。つまり、自分たちのやり方を全て押し付けるわけではなく、あくまで目的はアサド政権の打倒に絞っているということですね。

一方で、スンニ派の宗教原理主義を押し付けないと言っていますが、これがどこまで続くのか、それとも本当にそうするのかは分かりません。そして、ロシアとしてはウクライナ戦争に忙殺され、イランとしてはイスラエルとの事実上の戦争に直面しています。その結果、ヒズボラも自分たちが支援してきた勢力がほとんど壊滅してしまった。ハマスも同様です。つまり、イランもロシアも弱体化している状況なんですね。そのため、ロシアとイランが支えていたアサド政権が崩壊してしまったというわけです。

これはある意味、ロシアにとってウクライナ戦争をやめるタイミングとも言えますよね。これまで大事にしてきた中東の非常に重要な拠点であるシリアを失うことになったわけですから。ロシアも、まだ余力があるとは言っていますが、かなり厳しい戦争を強いられているのは確かです。

特にアサド政権を強力に支援していたのはロシアの空軍でした。地上戦で制空権を確保し、上から爆弾を落とす、射撃するという形で、陸上の戦いを非常に有利に進めることができていました。しかし、ウクライナ戦争に注力しているため、ロシアの空軍の力は大幅に弱まっています。これが、シリアまで手が回らなくなった大きな要因だと言われています。

その結果、シリアでの力が弱まり、今回のような状況に至ったわけです。では、誰が資金を出しているのかというと、戦争屋にはお金が流れていて、兵器を供給しているのはどこか。例えばトルコのエルドアンだという話もあります。今のところ出ている情報ではそうですが、私としては裏で動いているのは英国守旧派だと思います。


イスラム原理主義の政権はイスラエルに脅威

英国の保守派は、これまでイスラム原理主義派を利用して中東をかく乱することを繰り返してきました。今回も中東の安定を崩し、混乱を招こうとしているのです。アサド政権は曲がりなりにも安定政権でしたが、それを混乱させ、イスラム原理主義的な勢力を再び台頭させる狙いがあるわけです。

ジャウラニがどうなるかは分かりませんが、イスラム原理主義の政権ができれば、イスラエルにとっても大きな脅威になります。そうなると、イスラエルもシリアと戦わざるを得なくなります。せっかくこれまで絶対的に有利に戦争を進めてきたのに、逆に巻き込まれる可能性があるわけです。

さらに、もしバイデン政権が慌ててシリア政権を叩こうとすれば、アメリカもイスラエルも巻き込まれて、中東全体が大戦争に発展する恐れがあります。そして、まさにそれを狙っているのが英国守旧派でしょう。今回、手先として動いているのがトルコのエルドアンということになります。

だから、ここでイランとロシアがこの挑発に乗らないことが非常に重要だと思います。もし挑発に乗ってしまえば、相手の策略に引き込まれてしまう可能性があります。残念ながら、アサド政権は崩壊してしまいました。しかし、アサド氏はおそらくロシアへ亡命したのではないかと思われます。



今回は、新しい政権に対して本格的に介入しないことが重要です。もし介入すれば、大規模な戦争に発展する恐れがあります。そのため、ここは介入せずに状況を見守るべきだという判断が必要です。


難民問題の深刻化

一方で、シリアにおいては難民問題がさらに深刻化するのかどうかが懸念されます。

現在、シャーム解放機構=HTS(タハリール・アル=シャーム)の指導者であるジャウラニ氏が主張しているのは、「我々は宗教的寛容を重視する政権を目指しており、これまでのアサド政権とは異なる」といった内容です。さらに、ヨーロッパに避難した難民がシリアに戻ってくる可能性もあると述べています。ただし、これが実現するかどうかは現時点では不明です。もしそれが本当ならば喜ばしいことですが、現実はまだ見通せません。

ここで重要なのは、英国守旧派が仕掛けた罠にイランやロシアが引っかかるかどうかです。もしイランやロシアが罠にかかり行動を起こせば、トランプ氏が進めようとしている中東和平やウクライナ和平の取り組みにも悪影響が及ぶでしょう。ロシアがこれらの和平に参加できなくなる可能性もあります。

さらに言えば、この状況はロシアとアメリカを再び戦争状態に追い込もうとする策略の一部とも関連していると考えられます。そのため、ロシアとイランがどのような対応をするのかが非常に重要なポイントになります。また、トランプ氏が主張しているように、アメリカも絶対に介入すべきではなく、不関与の立場を堅持することが求められます。

しかし、バイデン政権だから、一部の兵隊はシリアに駐留していて、アメリカも何百人が派遣されているんですよね。なので、変に関与すると、シリアでアメリカとロシアがぶつかることになりかねないので、絶対にやってはいけないことです。トランプはまだ大統領ではないが、絶対に不関与をすべきだと言って、圧力をかけているわけです。

「仲介をやるなら、中国にやらせたらどうだ」と言っています。これは中国とすればできないことはないです。残念ながら、我々としては中国にいい顔をさせるのは悔しいですけど、イランとサウジアラビアの国交正常化もやりましたしね。なので、そこには第三者的に関与できる大国として、役割があるのかもしれません。

こういうところは、意外にトランプさんは中国に対して寛容です。

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韓国の北朝鮮化がはじまった

2024-12-18 00:00:00 | 政治見解
韓国の北朝鮮化がはじまった



ユン大統領が完全に無力化されました。「レームダック」という表現を超える状態にあると言えるでしょう。

この状況では、次期大統領選挙への道筋が避けられず、次の政権は左派政党「共に民主党」が担う可能性が高いと考えられます。

同党の代表であるイ・ジェミョン氏は、極左的な思想の持ち主であり、前任のムン大統領を上回る反日・極左政策を掲げています。また、深刻な汚職問題を抱える人物としても知られています。

このような情勢において、韓国は反米・反日の方向へ急速に傾いていくでしょう。結論を先取りするならば、韓国は事実上、北朝鮮の間接統治下に置かれるような状態になる可能性があります。イ・ジェミョン氏が北朝鮮の意向を受けて動いているという見方もあります。

国際政治学者に詳細な解説をお願いしました。


日本に及ぶ悪影響

現在のところ、北朝鮮は統一について明確に言及していません。そのため、北朝鮮主導の統一国家がすぐに実現するわけではないのは幸いです。しかし、韓国国内では反日・反米的な政策が推進され、極左的な体制が進む見通しです。

このような政権が誕生すれば、日韓関係に大きな変化が生じるのは避けられません。特に、現時点で石破内閣が韓国との友好関係を重視する姿勢を示していることが、大きな問題となっています。


これまで日本は、韓国に対して様々な優遇措置を取ってきました。例えば、自衛隊機へのレーザー照射問題の棚上げや、通貨危機の際に韓国にドルを供給する通貨スワップ協定の再開といった対応です。さらに、半導体関連の制裁措置も解除されており、これらはすべて、ユン大統領を日本側に引き寄せる意図があったのでしょう。この判断が一定の理解を得られるとしても、私は当時から反対の立場でした。特に、自衛隊機へのレーザー照射問題については、韓国側に謝罪と責任者の処罰を求めるべきだったと考えています。

しかし、実際には問題が曖昧なまま放置され、韓国に対する対応が「ズルズル」と甘くなっている現状です。次に左派政権、さらには極左や反日的な政権が韓国で誕生する可能性を考えると、これまでの優遇措置を元に戻し、しっかりと制裁を行う必要があります。

ところが、石破内閣はこれらとは逆の方向性を取っています。その結果、日本がアメリカと対立する道を進む可能性が高まりつつあります。このような路線を取る政権は、自民党が戦後に誕生して以来、初めての「反米政権」となるでしょう。この点が非常に危険であり、日本の外交や安全保障にとって重大なリスクを伴います。

さらに、この状況は習近平政権の中国にとって、日本への影響力を強める絶好の機会となる可能性があります。石破内閣の政策は、日本をより一層危険な立場に追い込むものだといえるでしょう。


大統領が内乱罪に問われる??

韓国のユン大統領は、12月3日、深夜10時半ごろに非常戒厳令を発令しました。これは、現在完全に麻痺状態にある国政を立て直すための措置とされています。

日本のマスコミでは、ユン大統領がなぜ戒厳令を発令したのか理解できない、というような報道が見られます。しかし、この発令の背景は決して不可解なものではありません。ユン大統領の戒厳令発令時の演説を見れば、その理由が明確になります。

ユン大統領は演説の中で、現政権が国会の妨害によって機能不全に陥っていると指摘しました。韓国の国会では、300議席中200議席近くを野党が占めており、その圧倒的な優位性を背景に、行政府や司法府に対して独裁的な妨害を行っていると非難しました。その結果、政治が全く前に進まない状況にあるというのです。

具体的には、ユン政権発足後、政府高官や大臣を含む22名が弾劾訴追されています。今年6月に新たに発足した国会では、野党が優勢を誇り、10人以上の弾劾手続きを進めています。また、司法に対する干渉も顕著で、判事への圧力や、多数の検事の弾劾が行われており、司法業務が麻痺状態に陥っています。加えて、国家予算が通過せず、さらには大幅な削減が行われ、国家の基本的な機能が損なわれています。

ユン大統領は、これらの問題が韓国を「麻薬天国」へと変貌させ、民生や治安が危機的な状況に陥っていると述べ、野党を強く批判しました。



これは事実です。「野党『共に民主党』は予算案の成立を妨害し、さらに軍幹部の待遇改善にも反対しており、これも実現不可能となっています。予算妨害によって韓国の国家財政を破綻させようとしているように見えます。こうした行為は、大韓民国という国家の憲政秩序を踏みにじるものであり、憲法と法律によって正当性が認められている国家機関を撹乱しています」とユン大統領は述べています。

これらの行為は、内乱行為に該当し、反国家的な行為だとして戒厳令発動の理由とされています。この点については一定の正当性が認められる部分もあります。特に韓国は北朝鮮との対立を抱える国であり、安全保障の観点からもこうした問題は極めて重要です。しかし、これだけが戒厳令発動の背景ではありません。

実際には、ユン大統領が非常事態宣言に踏み切ったもう一つの理由として、支持率の低迷が挙げられます。直近の韓国の世論調査では、大統領の支持率はわずか17%で、反対率は70%を超えていました。この低支持率の背景には、第一夫人に関する収賄スキャンダルが大きく影響しています。

この収賄疑惑は、韓国における長い贈収賄の文化、いわば朝鮮半島に根付いた慣習が絡んでいます。韓国では右派・左派を問わず、大統領やその周辺が贈収賄に関与する事例が多く見られます。しかし、今回のスキャンダルは特に露骨であったため、国民からの支持を失ったのです。

加えて、ユン大統領はかつて検事総長を務めていた経歴を持つ人物でありながら、その妻の不祥事が注目されたことで、政治的な正当性に対する批判が高まりました。このような状況下で、国会の3分の2近くを左派野党に占められる事態となり、韓国の政治そのものが根本的な問題を抱えていると言えるでしょう。


李在明(イ・ジェミョン)の本質

次期大統領の最有力候補は、共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)という人です。

彼は前のムン・ジェインさん以上に反日的で親北朝鮮的な姿勢を持ち、しかも金銭面でも非常に汚い政治家です。この人は、いくつもの汚職事件で立件されているんですが、なぜか有罪にならず、今まで助かっています。「刑務所の塀の内側に落ちず、外側に落ちている」とよく言われます。まるで刑務所の塀の上を歩いているような人だと。そういう政治家なんですよ。それでも運が良いのか、あるいは陰で何かしらの力が働いているのか、壁の内側に落ちずに外側で済んでいるというわけです。



ただし、彼の周辺では、これらの汚職事件に絡んで、なんと6人もの人が不審死しているんです。

そしてこの李在明という人は、「日本解体論」を唱えるほどの反日派です。恐ろしい時代がやってきますね。こういう時代が来るというのは、大体見えています。そして、これは反日だけに留まりません。反日ということはつまり反米でもあります。そういう親北朝鮮的な考えを持っている人です。


韓国内の政治状況

現在の状況を整理すると、北朝鮮は「韓国とは一切交流しない」と明言しています。その理由は、南北間の交流によって北朝鮮の体制が揺らぐ可能性があるからです。北朝鮮の国民が韓国の実情を知れば、自国の貧しさや抑圧された状況を理解し、体制崩壊につながる危険性があるため、北朝鮮は交流を避け、自ら「鎖国状態」を選んでいるのです。

一方、韓国国内では、北朝鮮を賞賛する政治家たちが一定の支持を集めています。こうした勢力が大統領の座についたり、国会で多数派を形成したりすることで、北朝鮮寄りの政策が推進される可能性があるのです。

今回、保守派が辛くも大統領選で勝利を収めたものの、国会では依然として少数派のままでした。自由民主主義を掲げる「大韓民国」を守る勢力が、大統領選と国会の両方で過半数を占める状況には至らず、期待通りの成果を得ることはできませんでした。

韓国の政治状況を理解するうえで、私はよく「世界の政治勢力は4つの象限に分類できる」と述べ、その視点から説明を行っています。韓国の政治も、このような分類を用いて考察することが可能です。

韓国の左翼勢力とは何かというと、北朝鮮を「良い国」と見なし、その独裁的なナショナリズムを支持している人々のことを指します。確かにナショナリズムを持っていますが、それは北朝鮮の独裁的なナショナリズムと結びついたものです。例えば、「共に民主党」のような左翼勢力は、自らも独裁的ナショナリズムを掲げており、いわば左翼全体主義と呼べる性質を帯びています。このような特徴を持つ左派勢力が、韓国の政治において過半数を占めているのが実情です。

一方で、「国民の力」など、かつて朴正煕政権下で力を持っていた右派、つまり保守的で反共主義的な勢力はどうかというと、現在ではその姿が大きく変わっています。現在の右派勢力の中心には、無国籍企業的なグローバリズムに傾倒する人々が多く見られます。たとえば、サムスン、LG、SKハイニックスといった国際的な大企業がその象徴です。これらの企業を支持する右派が主流であり、かつてのような保守的ナショナリズムを掲げる勢力は影を潜めています。

要するに、韓国の現状では、民主的ナショナリズムを掲げる勢力は極めて少数派に留まっているということです。

韓国には、ナショナリズムを肯定しつつ、自由民主主義的な政治体制を堅持しようとする信念を持った人々は存在します。しかし、そのような人々は非常に少数派です。良心的なクリスチャンなど、一部の層がこれに該当しますが、政治的な勢力としては微力に留まっています。

一方で、韓国の右派、いわゆる保守勢力を見てみると、その多くが無国籍企業的なグローバリストとなっています。これにより、韓国の民主的ナショナリズムは非常に脆弱な状態にあると言えるでしょう。現在の韓国では、北朝鮮を支持する独裁的ナショナリストと、無国籍企業的なグローバリストが対立している状況です。そして、グローバリストは競争至上主義を推し進めるため、韓国社会は貧富の差が極端に拡大しています。いわゆる「勝ち組」と「負け組」の格差が広がり、社会全体が超競争的な構造に変わってしまいました。

かつての韓国には、日本の終身雇用制度を模倣した安定した雇用形態が見られましたが、IMFの支援を受けた後、そうした制度は消え去り、社会は一層の競争化を遂げました。この結果、現在の体制で不利益を被る人々は、左翼勢力に傾倒せざるを得ない状況に追い込まれています。

こうして、韓国の政治構図は、無国籍企業的なグローバリストと北朝鮮支持の独裁的ナショナリストの間で行われる、不毛な対立に終始しています。民主的なナショナリズムを掲げる勢力がほとんど存在しないことが、韓国政治の大きな課題であり悲劇なのです。

一言で言えば、韓国では自由民主主義が未だに十分根付いていません。選挙で一方の勢力が勝利すると、勝った側が敗れた側の元大統領に対して復讐を行うのが常態化しています。例えば、大統領職を離れた人物がほぼ必ず訴追され、刑務所に送られるといった状況が続いています。これは、右派も左派も共通して行っている行為です。

自由民主主義を成り立たせるためには、公正な競争を保証し、言論の自由を重視する政治文化が必要です。そのためには、民主的なナショナリズムが強くならなければなりません。しかし、韓国においてその基盤は極めて弱いままです。



日本が朝鮮半島を統治した約30年間、そして戦後のアメリカによる支配の下でも、韓国社会には中華文明の影響が根強く残り、賄賂や腐敗文化を排除することができませんでした。この結果、自由民主主義が韓国に定着することはありませんでした。これこそが、現在の韓国政治の悲劇を象徴するものだと考えられます。


そんな中で、現在の石破政権は非常に親北朝鮮的で、親韓国的な政策を取るという状況になっています。これを改めなければ、結果として反米という立場になってしまいます。以前もお話ししましたが、イギリスの反トランプ派のスターマー氏と組んで反トランプ活動を進めようとしているのが、今の政権の姿です。

現状では、これにさらに中国も絡んでこようとしています。中国はすぐ近くではないものの、外側から支援を得ながら、日英が組んで中国の力を借りて反トランプを進めようとしている。これが石破内閣の姿であり、日本にとってこれほど危険な内閣はありません。一刻も早く引きずり下ろさなければならない状況です。


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