
先日某フォロワー様の記事でカズオイシグロの新作が出た事を知り、仕事帰りの秋里画伯に買ってきてもらった。
カズオイシグロはノーベル文学賞を取る以前から『日の名残り』『わたしを離さないで』が大好きだった。
彼の作品の重要な部分には常に【記憶】と言うモノが描かれる。
そして救いに似た【喪失】が、常に彼の作品にある。
私は、彼の描く取り残されたモノ達の【記憶】【喪失】の美しさにいつも胸締め付けられて切なくなる。
今作の『クララとお日さま』は、少女のAIの物語だ。
少女AIの視線を通して描かれる文章も彼の作品中一番読みやすいし、色合いも明るい。
しかしその根底を流れるモノはいつも同じ。
お日さまとはそのものズバリではなくて、望みの象徴。
人の【記憶】から【喪失】されるモノは純粋ゆえに消える。
彼らはその運命に、ある意味満ち足りている。
だが哀しみに似た感情がそこに同時に存在している。
無機物に宿る魂と、人々とその魂の在り様の物語。
ある意味それは極めて日本的な八百万神信仰にも似て・・・・。
そのテーマに近いニュアンスは80年代前後の少女漫画で内田善美の描いた『草迷宮・草空間』や佐藤史生の描いた『花咲く星々の群れ』にもあったね。
『クララとお日さま』、私は大好きな物語でした。