2015年8月2日京都生まれの男の子、三代目アルファの成長日記です
ゴールデンアルファのブログ 「おいでアルファ」
あらためての記-血管肉腫と心タンポナーデ(14)
勤務先の会社の前に広がる川べりで
■2012年6月14日(木)の記/その日①
犬の心臓はどこにあるか。見当を付けるには…まず犬の身体の右側を下にして寝かせます。そして、そのままの状態で左前脚の付け根の後ろあたり、もし助骨が手に感じられるならその助骨の6~8番目あたりが心臓になります。もっと簡単で分かりやすいのは、お座りの状態で左前脚を折った時、肘に当たる部分が犬の心臓の位置です。
今まで考えたこともなかったアルファの心臓ですが、この病が発覚してから、彼の心臓にあたる部分が気になって仕方ありませんでした。その部分を両手でそっと触ると心臓の拍動が感じられますが、これがもし異様に強く感じると心臓の機能にトラブルが起こっているということになります。犬が健康なうちから、こうして小まめにチェックをして自分の手に正常な拍動の感覚を覚えさせておくと万が一の時、心臓の異常に早めに気付くことができるかも知れません。
昨日、アルファのこの心臓当たりに手を当てると、手の平に包み込めるような感触で大きな塊が現れていることに気づきました。あれは一体何だったのか。アルファが亡くなってからのことですが、私の疑問に応える形で、先の大学の先生からメールが届きました。素人の悲しさで、私は、単純に腫瘍が大きくなっていたと思っていましたが、先生は、以下のような話をして下さいました。
都会の中の兄ちゃん
心臓は、肋骨と胸骨で守られている臓器のため、心臓が腫瘍で大きくなったとしても、外側から手に触れるようなことがあるだろうか?この大学の症例は、アルファと性別も年齢も病状も似たラブラドールの心タンポナーデでしたが、握り拳大まで腫瘍が大きくなっていたにも関わらず外側からは分からなかったとのこと。
そこで先生が考えられたのは、「血管肉腫の皮膚への転移」の可能性でした。しかし、転移した場合、このような形をとるだろうか?という疑問が新たに出て来たのだそうです。また、どのくらいの頻度で皮膚へ転移するのだろうかということも。
先生は腫瘍専門家の意見も聞いてみようと、所属している獣医コミュニティを通じて海外のオンコロジストOncologist(「腫瘍専門医」の意味で、海外には各専門の免許を持つ専門医制度というものがあるのだそうです)に質問までして下さいました。
仮診断を確定するためには、病理診断が唯一の手段だとしながらも、「腫瘤の様子から皮膚への転移像とは少し違うようだ」、あるいは、「腫瘍細胞が播種した」、又「皮下血腫」と様々な意見が出されたようでしたが、どこまでも推測の域は出ないものの、心膜穿刺の際、胸腔から皮下へ血液が漏れていた可能性があって、つまり「皮下血腫」があの塊の正体だったかも知れないということでした。
勿論これも解剖をしてみなければ分からないことですが、私の心に刺さっていた小さな疑問に、こんなにまで真摯に応じて下さった先生のお気持ちが有り難くどれほど救いになったか知れません。本来なら、主治医に聞くべきところですが、アルファが亡くなってから随分時間も経過していたし、訊ねる機会を逸してしまっていたのでした。
ちなみに、当大学の症例になったラブラドールは、この先生の愛犬でした。山歩きの道中、急な階段を駆け下りた後、心タンポナーデを起こしたのだそうです。獣医であり研究者であるだけにどれほど辛い思いをされながら治療と研究にあたられたかと、アルファと重なって胸が締め付けられるようでした。
死後、解剖をされたのですが、心臓の腫瘍は巨大化し、肺にも胸膜にもひどく転移していて、それを見たときは、もう彼は最大限に生き切ったんだと納得されたそうです。私たち一般の飼い主には、そのような納得の仕方はそう出来るものではありませんが、さすが研究者だと感服の思いで話を聞きました。翻って、私はどのように納得すればいいのか、腑の落としどころを懸命に探すばかりでした。
-続く-