陽だまりのねごと

♪~思いつきひらめき直感~ただのねこのねごとでございますにゃごにゃご~♪

小説家  勝目梓著

2007-06-09 06:07:17 | Weblog
小説家

講談社

このアイテムの詳細を見る


彼の名は読まなくても知っているし、
内容も強烈な広告イラストで察することができる。
およそ彼の本らしかからぬ地味な装丁のこの本は
現在、70歳を越えた彼の半生をふりかえりながら綴られたもと
朝日新聞書評でちょっと前に読んだのが記憶にあった。
図書館で迷うことなく借りた。

図書館で新刊に出会うと、
本屋で買わなくて良かった儲けたと気分になる。
根っから私はいじましい貧乏性らしい。

事実は小説より奇なり。
バイオレンスロマンの第一人者と作者紹介に記されていて
女性遍歴はなるほどと思うところがあった。

後悔もいっぱいあると言いつつも潔い。
自分の子供たちには迷惑をかけたと後で思ったそうだが
彼はペンネームでなく本名で娯楽小説を執筆する。

売れなかった純文学からの転向は
離婚できない妻や同性相手ある身で
13歳年下の女性と新しい生活をする金のためだったと
きっぱり書いている。

後ろめたさを感じながら始めたけれども
今、しっかりと自分の仕事には自負を持たれている。

半生への後悔は
生物学的にしか父親でなかったことや
自分のわがまま心の狭さでふりまわした女性たち。
後悔や反省の言葉は
熱い血の流れた人としての証で
それでもどうしようもないが人なのかもと思う。

仕事をさぼって
ゴトゴト山奥へ向かう鈍行列車に行く宛てなく乗った。
このハードカバーの重い本をバックに入れた時点で
新車軽四のドライブより乗り物に揺られることを無意識に選択していたのだろう。
車窓の新緑で目を癒し、おりる駅をどうしようかなどおもいめぐらしつつ
奥へ奥へ乗り継いで、結局完読した。
私自身がどうしようもない奴なのだ。

この本の集約は
『彼』と言う3人称で最後の最後に語られている。

以下抜粋~

  後知恵ということばがある。
  おもえば彼の人生はそれの連続だったと言える。
    (中略)
  それは七十歳を過ぎた現在も変わっていない。
  命が絶える日が目前に迫っても、
  彼の頭の中にあるのは現在ただいまのことだけで、
  過ぎた昨日のことも、くるかこないかわからない明日のことも
  おそらく考えようとしないだろう。
  彼はそういう男なのだった。