気の向くままに

終着はいつ、どこでもいい 気の向くままに書き記す

戦国時代

2015-03-28 09:51:53 | 日記

 NHKの大河ドラマは昔ほど視聴率を取れなくなった。録画率の上昇など理由はいろいろあろうが、昭和の終わりに放映された「武田信玄」の最高視聴率は、49・2%もあった。

 ▼当初は、主役に抜擢(ばってき)された当時26歳の中井貴一さんを不安視する声もあった。大ヒットドラマ「ふぞろいの林檎たち」で演じた若者役のイメージが強かったためだが、見事に前評判を覆した。中でも平幹二朗さん演じる父の信虎をクーデターで追放し、国境(くにざかい)で見送るシーンは今も目に浮かぶ。

 ▼人間のすることは、戦国時代も今も代わり映えしない。大塚家具の経営権をめぐる父娘の争いは、株主総会で決着がつき、信虎と同じく父親が追放の憂き目を見た。

 ▼はた目には、ちょっと面白い「ミニ大河」だったが、創業者の父に付き従って記者会見にまで出さされた幹部社員の心境は痛いほど分かる。「総会が終わった後はノーサイド」と娘の社長が言おうと信じる者はまずいまい。

 ▼いまの世界情勢も戦国時代に近づきつつある。ソ連崩壊後、圧倒的な「一強」ぶりをみせつけていた米国が、オバマ米大統領の外交ベタと相まって退潮し始めた隙をついて、盟主の座を中国が軍事力とカネで虎視眈々と狙っている。

 ▼札束で途上国の歓心を買い、同時に中国企業をもうけさせようという意図が見え見えのアジアインフラ投資銀行(AIIB)に英独仏伊を引き入れたのも国盗りの布石である。今さらドイツなどを「裏切り者」と罵(ののし)っても後の祭り。だからといって中国が指定した締め切り期限までに飛び乗ることもあるまい。戦前、バスに乗り遅れるな、と飛びついたヒトラーとムソリーニが運転するバスは地獄行きだった。軍師・山本勘助なら一本待つよう進言するはずだ。

3月28日 【産経抄】