眠れない。
たぶん、何かがちょっと狂ってしまったんだ。
自分が自分じゃないみたいで、ギクシャクする。
もともと、ごく小さい頃から、眠らない子どもだった。
保育園のお昼寝の時間にどうしても眠れず、しかたないので寝たふりをしたら、先生に“タヌキ寝入りしてる!”と怒られた。
《タヌキ寝入り》という言葉をその時覚えた。
実は不眠症は母譲りで、母も“嫌なところが似た”と言っていた。
母は少女の頃、何日も眠れず衰弱してしまい、とうとうお祓いをしてもらったそうだ。
母の年齢でもお祓いとは前時代的、と思ったけれど、不思議なことに効いたそうな。
(スピリチアルなものを全否定はしない私ですが、たぶん私も似ていますが、母は暗示にかかりやすいせいではないかと)
私も高校生の時眠れなくなり、“よし、いっそ、眠くなるまで起きていよう”と思ったら、夜が明けても少しも眠くならなかったことがあった。
良いこともある。授業中に居眠りしたこともないし、電車を乗り越したこともない。
でも、体力を消耗するし、今日もまた眠れないのでは、と思う不安は結構なものだ。
受け入れるしかないんだ、とも思う。何も思い当ることがなくても、躓いたように突然眠れなくなることもある。
18年も一緒に暮らした家族同然だった猫が、逝ってしまったら眠れなくなって当たり前。
それでもうつらうつらしたとき、再び猫は夢に出てきて、膝に座ってくれた。
若く元気なときでなく、痩せてしまった姿だったのは悲しかったけど、夢の中で何故かなんだか申し訳なさそうに、遠慮がちに膝に乗ってきたのを思い出すと、ちょっと微笑んでしまった。
今夜は、すぐに眠れるといいのだけれど。