今日、歌舞伎の地方公演を観てきました。
演目の一つが勧進帳。弁慶は松本幸四郎氏でした。
「松本幸四郎を生で見るのは初めて!内容も面白かった」と母が言ってくれ、嬉しかったです。
私は初めてではなかったのですが、あらためて、“少し強引な感じのオーラのある人だな”と思いました。(私の偏見)
ちょっと、よそを見ていても目がひき戻される感じ。
兄弟である中村吉右衛門氏とは、ふだんはそんなに似ていないように思うのですが、同じ役で、したがって装束が同じで、声も似ていますから驚くほど似て見えました。
けれど、当たり前ですが芝居はまったく違うのですね。
私の勝手な印象ですが、中村吉右衛門氏はリアル、松本幸四郎氏は華やか、という感じでした。
そうして、演目を見ているうち、ありありと目の前に蘇ってきたのは、この映画でした。
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この黒澤映画を見たのは数年前でしたが、強力の姿で笠を深くかぶってひざまずく義経の姿とか、様々なシーンが目の前に浮かんできました。
と、いうのも、かなり忠実に黒澤映画は歌舞伎の様式を取り入れているように思ったのです。
歌舞伎十八番の内の一つのこの勧進帳が、現代の映画に受け継がれているんだ、と思うと、しみじみとした面白さを感じました。
そうして、ちょっと話は外れますけれど、現代のTVドラマの中で、思いがけず弁慶の話題が出てきて、おっ、と思ったことがあったのです。
『捜査一課9係』というドラマだったと思うのですが、死後硬直の状態が普通の人と違って、死亡推定時間がずれた遺体がキーになったストーリーでした。
渡瀬恒彦氏演じる課長が、“筋肉質の男性が、非常な疲労状態で死亡したとき、死後硬直が急激に起こることがある。たとえば、弁慶の立ち往生がそれです”というようなことを説明していました。
私はへえ~、と感心し、そんな歴史上の、半ば伝説化した出来事が科学的に説明されることがあるのだなぁ、と、とても面白く思いました。
以前京極夏彦氏の小説の中で、“その人を実際に会って知っていた人がすべて死んでしまっている場合、歴史上の人物も架空の存在……だいだらぼっちなどとそう変わりはない”というような文章を読んで、それにも非常に共感したことがあります。
でも、大昔のことが、思いがけなく現代にひと続きになっていることもあるのだなぁ、と、『勧進帳』を見ていて思った、今日の出来事でした。