とろとろとねむっていたら、いきなり白の蛍光灯がギラッとたかれた。
深い睡眠のなかにいて、人工の灯りとわからないほど。薄目をおそるおそるあけてみる。Nが、薄手の黒いストッキングを、爪をたてないようにして履いているところがみえた。そうか。今朝は朝3時半にタクシーが自宅にくるのだった。
紅茶だけ煎れてやり、Nを見送る。
静けさの中。まだ4時にもならない。起きるのには早すぎると、そのまま夢のなかへ入っていった。
電車の踏み切りの音や駅名のアナウンスが聞こえる。結局目が覚めたのは8時をまわっていた。ホテルではない他人の家で一人っきり。本棚から「旅ドロップ」を選び、そのままお風呂へ移動。ついでに沖縄のさんぴん茶を開封し、あったかいお茶をいれてゆっくりと読んだ。
深い睡眠のなかにいて、人工の灯りとわからないほど。薄目をおそるおそるあけてみる。Nが、薄手の黒いストッキングを、爪をたてないようにして履いているところがみえた。そうか。今朝は朝3時半にタクシーが自宅にくるのだった。
紅茶だけ煎れてやり、Nを見送る。
静けさの中。まだ4時にもならない。起きるのには早すぎると、そのまま夢のなかへ入っていった。
電車の踏み切りの音や駅名のアナウンスが聞こえる。結局目が覚めたのは8時をまわっていた。ホテルではない他人の家で一人っきり。本棚から「旅ドロップ」を選び、そのままお風呂へ移動。ついでに沖縄のさんぴん茶を開封し、あったかいお茶をいれてゆっくりと読んだ。
小窓がないので、外の空気は入らないが、そのかわりに循環式の追い炊き機能がついているので、何時間でも永遠とはいっていられそう。水没をさせないように気をつけて本を読む。
と、メールをつげる着信音。
「11時には仕事がおわるので、池上まで出てこられる?」
「はいはーい。5時の便でかえるので、少しなら行けるよ」
「池上」駅は大田区内にある東急沿線の小さな駅だ。
ウィンドウに並ぶのは、カラフルな生ショートケーキやクッキーなど。パティシェがつくるケーキというよりは熟練職人のおじさんがこしらえたと見うけられる色かたち。お目当ての「窯出しクッキー・シュー」があった。
せっかくなので、持ち帰りではなくザ・下町風のサロンで食べたい。
化粧も薄く、買い物籠などをさげて、日常の延長戦に飛び出してきたという人。品のいい夫婦連れ。大きな宝石を指につけた金持ち風のおばさまも、服装はシックな装いに、薄化粧というのが共通点なのだった。というべきか大田区の特徴か。
本題の、シュークリームである。これが想像以上だった。
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日蓮宗の大本山「池上本門寺」で参拝。
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お昼は、Nがみつけたという古民家カフェ「蓮月」で。
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坪庭がのぞめる一軒家。昭和初期に建てられた木造家屋で古きよき世代の名残が、奥庭に面したゆがんだガラス窓や、柱の傷、古時計などに漂う。1階はそば屋、2階は旅籠、結婚式の宴会場として使われていたこともあったそうだ。ちょうど雑誌の撮影部隊がきていた。
お昼時なのでランチセットをいただいた。「東京の中にある地方、池上はそんなあったかい町です」。店にあった池上のタウンマップにはそんな風に書かれていたと記憶する。
と、メールをつげる着信音。
「11時には仕事がおわるので、池上まで出てこられる?」
「はいはーい。5時の便でかえるので、少しなら行けるよ」
「池上」駅は大田区内にある東急沿線の小さな駅だ。
駅の改札を出てすぐの商店街「池上駅前通り商店街」を1分、歩いたところに昔懐かしいサロン風の喫茶店。
欧風菓子の看板をみて「エノモト」。お目当ての店だ。ダンチュウの表紙を飾った王道のシュークリームの店だ。
欧風菓子の看板をみて「エノモト」。お目当ての店だ。ダンチュウの表紙を飾った王道のシュークリームの店だ。
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ウィンドウに並ぶのは、カラフルな生ショートケーキやクッキーなど。パティシェがつくるケーキというよりは熟練職人のおじさんがこしらえたと見うけられる色かたち。お目当ての「窯出しクッキー・シュー」があった。
せっかくなので、持ち帰りではなくザ・下町風のサロンで食べたい。
奥の喫茶店に座る。 Nも何度か来たことがあるようで、好きな席を選び座りこむと、早朝からの仕事内容などを、あれこれ話し始めた。
私はといえば、背景のおじさん・おばさんが気になる。なんたって、ケーキ屋なのにナポリタンスパゲッティやカレーライスを味わう人が多いのだから。パフェのガラス瓶にスプーンをつっこみながら世間話しをしているおばちゃんの集団も大阪とはどこか違う。東京の下町ではみな服装が気楽だ。ヒョウ柄や、原色カラーに縦ロールの巻き髪というスタイルで、いきって決めてくる関西人のおばちゃんとは少し違う。
化粧も薄く、買い物籠などをさげて、日常の延長戦に飛び出してきたという人。品のいい夫婦連れ。大きな宝石を指につけた金持ち風のおばさまも、服装はシックな装いに、薄化粧というのが共通点なのだった。というべきか大田区の特徴か。
本題の、シュークリームである。これが想像以上だった。
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バターの香りがするシュー皮はサクッと。アーモンド入りのクッキー生地をのせてこんがりオーブンで焼いた上質の香りがする。ここに、カスタードと生クリームをあわせた幸せの黄味のクリーム。舌の上でとろける甘み。バニラビーンズの風味がすばらしい。これが欧風菓子か。
ちょっと洒落れていて、どこか懐かしい。コーヒーと相性抜群だった。
そのまま、池上街ウォッチングへ。
そのまま、池上街ウォッチングへ。
歩いていると小さな寺院によく出くわす。太田区の梅の名所、「池上梅園」も。餅屋、甘味処や草加せんべい、カルメラ焼きを売る店。豆腐屋、蕎麦屋などもある。小さな純喫茶もある。いわゆる門前町の風情。商売の家々は古い日本家屋が多く、それにも、大いにそそられる。なかなか、味わい深い街だ。
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日蓮宗の大本山「池上本門寺」で参拝。
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長い階段をあがると、境内はひらけて、由緒正しい静かな寺だった。釣り鐘があった。帰り、階段上から見下ろせば、蒲田から田園調布あたりまで見渡せそう。
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お昼は、Nがみつけたという古民家カフェ「蓮月」で。
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坪庭がのぞめる一軒家。昭和初期に建てられた木造家屋で古きよき世代の名残が、奥庭に面したゆがんだガラス窓や、柱の傷、古時計などに漂う。1階はそば屋、2階は旅籠、結婚式の宴会場として使われていたこともあったそうだ。ちょうど雑誌の撮影部隊がきていた。
お昼時なのでランチセットをいただいた。「東京の中にある地方、池上はそんなあったかい町です」。店にあった池上のタウンマップにはそんな風に書かれていたと記憶する。
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