『トリスタンとイゾルデ』は、ケルト起源の説話で、12世紀フランスでは韻文の物語としてまとめられ、12世紀終りごろにはドイツにも伝えられます。13世紀になるとフランスでは散文で書かれます。そこではトリスタン(Tristan)はアーサー王物語に組み込まれ、円卓の騎士の一人に数えられ、物語が展開します。
騎士トリスタンと、主君マルク王の妃となったイゾルデ(Isolde)の悲恋を描く『トリスタンとイゾルデまたはトリスタン物語』は、中世に宮廷詩人たちが広く語り伝えた恋愛物語です。
エドモンド・ブレア・レイトン(Edmund Blair Leighton) 1902年画
1900年代になっても描かれ続ける画題『トリスタンとイゾルデ』の息の長さに驚かされます。しかし、それにもましてかくも画家を、そして詩人をして描かずにはいられない心を揺り動かす「原動力」となっているものは何なんでしょうか。それは「キリスト教に対して反発せざるを得ないあまりに大きい矛盾点の多さ」です。縛られているとこがわかっていながら振りほどくことのできない、わめきたくなるようなもどかしさであると私は考えています。