完結はしていないが、『ロイヤルストレートフラッシュ』の3を公開してみた。
たとえ連載ものでも完結しているものを、というのが僕の考え方なのだが、それをやっているといつになるかわからないので、とりあえず載せてみた。
少しでも動いている証と云おうか、これしか書いていないんだ、という恥を晒したと云おうか、まぁ、そんな感じだ。
察しの良い方は去年の総まとめで乗せたものと冒頭が全然変わっているこ . . . 本文を読む
零は家を出るとき鍵を掛けるという行為をしない。オートロックのついた高級マンションの一室が、彼のいまの家であるからだ。
いまという云い方をしたのは、本来の家はここよりもっと郊外にある山の上にそびえる豪邸だからだ。その家にさえ、生まれてからの十七年間で三百六十五日も生活していない。幼いときより海外での暮らしの方が長かったからである。
ある意味では人も羨むような生活ではあったのだが、常に注目される . . . 本文を読む
擬音をつければ『ヌッ』という音が似合うであろう。
大きな影が少女に覆いかぶさる。
確かに少女は少し震えていたが、それは脅えているからではない。たぶん、痛みのせいでもないだろう。
ほどなくして全てが終わり、影が引いた。
「あ、ありがとうございます」
同じ高校の一学年下の生徒であることを示したスカーフを首に巻いた少女は、大輔の顔を見上げながら照れたようにそう云った。
これまで医者以外の男性 . . . 本文を読む
久住零は変に恥ずかしがり屋なところがある。食事をしているところを見られるのも、見てしまうのも恥ずべき行為と感じている。
学校でも昼食はひとりだ。購買で買うという行為すら人に見られるのを嫌い、毎朝自分で弁当を作り、学校に持っていく。それを人気のないところで食べる。
その隠れっぷりは天才的で、高校に入学してからの一年と三ヶ月、誰にも見つかったことはない。
ただ一度だけ、おせっかいな同級生の女子 . . . 本文を読む