(ネタバレあり)
ハリネズミがあかくなったわけに泣きました。
かわいらしい絵でやさしく厳しい現実を描いている絵本です。
コハリネズミはお母さんと二人暮らしをしていましたが、お母さんが病気になります。「友だちを見つければひとりではなくなるわ」とお母さんはコハリネズミに教えます。抱きしめてくれるひとが友だちだと伝えて、息を引き取りました。
コハリネズミはたくさんのひとに冷たくされながら友だちを探し続けます。そしてようやく抱きしめてくれるひとが現れます。それなのに、抱きしめてくれたネズミのおじいさんは死んでしまいます。おじいさんが抱きしめるとハリネズミのトゲが体に刺さりました。痛くても抱きしめ続けて血を流して息絶えてしまうのです。
おじいさんの思いに、私は胸が締め付けられるようでした。
ネズミのおじいさんは年老いて友だちはいません。ひとりぼっちだったから、ひとりぼっちのコハリネズミを全身で受け止めずにはいられなかったのだと思います。友だちを抱きしめて死ねたのは幸せだったのかもしれません。
誰かを思いきり愛するにはとても大きな力がいります。おじいさんは残りのすべての力でコハリネズミを抱きしめたのだと感じました。
おじいさんの血で、コハリネズミの体は赤く染まってしまいます。
コハリネズミは泣きに泣きました。生きるには痛みを伴います。生きていくためには痛みを強さに変えるしかないのかもしれません。コハリネズミはあかいハリネズミになりました。もう小さな子どもではいられないのです。
あかいハリネズミは笑顔で友だちにさよならをしました。
あかいハリネズミの住む世界では私はとても生きづらいと感じました。友だちの血であかくならずにすむようなやさしい世界を望みたいです。そして
やわらかく抱きしめ合う友だち関係がよいのだと思います。
胸に痛みの残るおはなしでした。