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感想です。

絵本『キツネと星』/友だちは必要だろうか。

2019-07-16 | 絵本

(ネタバレあり)

心に友だちがいれば強くなれると、感じる絵本でした。
 
 
夜空を見上げ、ひときわ輝くひとつの星を見つけたとき、その星が歩いている自分の後をついてきているみたいに思ったことはないでしょうか。それはまるで私を見守ってくれているかのようです。
 
 
この絵本の主人公であるキツネは森の奥に一匹で住んでいます。見上げる空にある星ひとつをたったひとりの友だちだと思います。ある日、星がいなくなってしまい、キツネは元気をなくして、閉じこもってしまいました。
 
 
友だちはいない。
 
 
自分がこの世界にひとりぽっちだと感じ、とても苦しく何もしたくなくなります。再び動き出すにはどうすればいいのでしょう。キツネが動き出せたのは周りからの刺激と、自分の欲求でした。 キツネは大きな声を出して、星を探し続けます。探し続ければ見つけられる。探さなければ決して見つかりません。
 
 
「みあげてごらん」キツネは気付きました。
 
 
その言葉に導かれてキツネが空を仰げば、無数の星が輝いています。たくさんの星の中に友だちの星もいると、キツネは感じとりました。 
生きているものはだれでもひとりであり、またひとりではないのだと思います。周りにはたくさんの生が存在し自らもそのひとつだからです。
キツネはひとり、森に帰って行きますが、体中に星が光っていました。 孤独を経験し考え感じたことで、見えなかったたくさんの星が見えるようになったのだと思います。
 
 
 プレゼントによい本です。
 
 
抑えた色で描かれ、デザイン性が高く、落ち着いた美しさのある絵本です。うっそうとした森の様子やたくさんの生き物たちの息づかいが感じられます。
虫がものすごく嫌いな人はダメかもしれません。リアルには描かれていませんが、コガネ虫がうごめいているのが上手に表現されているからです。
 
 
「大丈夫だよ」と伝えたい人に贈りたいです。
 
 
私の一番の友だちは死んだ愛犬です。人によっては猫だったり子どもの頃の友だちだったり大好きだったおばあちゃんだったりするかもしれません。そばにいなくても空に星がこんなにたくさんあるのだから、その中に友だちの星もきっといます。