私は、災害救助犬の夢之丞(犬の名)を昨年、広島で起きた土砂災害の報道写真で知った。泥まみれになって災害現場で働く姿は、大の犬好きの私の胸を熱くした。主人である人間に褒められたい一心で働く犬たちの気持ちを思うといつも犬の素晴らしさを感じずにはいられない。犬は人間を最良のパートナーとして受け入れてくれる。信じてくれる。
記事を読むと、夢之丞は元捨て犬で殺処分対象の犬だったという。人間に殺されようとしていた犬が、人のために危ない現場で働いているのだ。「ありがとう。夢乃丞」と感謝の気持ちでいっぱいになった。
夢之丞を知ってから数カ月後、本書を本屋で見つけた。
特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパンの運営するピースワンコ・ジャパンは、活動のひとつとして災害救助犬を育てている。夢之丞は第一号の救助犬。保護当時、怯えていた夢之丞に根気強く接し、可能性を信じ育てていく様子は、はじめからうまくいく者(犬)だけに素質があるわけではないということを教えてくれる。
居場所がないから殺される。役に立たないから殺される。のであれば、居場所を作ってやる。長所を見つけて生かしてやればいい。「生きてこそ」可能性が生まれる。
命を奪われる瞬間、生き物は弱い状況に置かれている。だから助けが必要なのである。助けは人だけでなく、犬でも同じ。殺される寸前だった弱い子犬(夢乃丞)はピースワンコジャパンの人に助けられ、助けられた夢乃丞が、災害にあった人の命を助ける。この助けあいがあるから、安心して生きられるのではないだろうか。希望を感じられる一冊。
殺処分ない社会を。命を救う社会を願う。