結婚前から“メグジット”を決めていた?
王室派のタブロイド新聞として知られる英大衆紙「デイリー・メール」は、今回のインタビューにおける矛盾点を克明に検証。17もの項目にわたって示された矛盾点は極めて問題で、指摘されるべくしてされた内容となっている。
前回に引き続き、今回はその中から後半の9つについて筆者の見解を交えてご紹介したい。
9.父親の“ヤラセ写真”発覚 作為的に結婚式直前に報じたと主張
結婚直前にパパラッチと協力し、娘メーガン妃の結婚式出席の準備に励む父を演じて、数々の“ヤラセ写真”を撮らせたトーマス・マークルさん。当時破産していたこともあり、10万ポンド(約1560万円)とも言われる報酬を受け取ったことが報じられると、大スキャンダルとなった。妃はこの件をきっかけにトーマスさんと絶縁状態となり、以来メディア上で醜悪な確執報道が繰り返されている。
妃は「タブロイド紙は1か月ほど前から(パパラッチによる父の“ヤラセ写真”について)知っていたようですが、ストーリーを最もドラマティックに報じるために、結婚式の前週の日曜日まで温存しました」と語り、メディア側の露骨な作為に憤激した。
この主張に対し、“ヤラセ”を暴いた「メール」紙は反論。娘とヘンリー王子に関する記事を読むトーマスさんの姿が撮影されたインターネットカフェの防犯カメラ映像を入手し、カメラマンと映り込んだトーマスさんの姿を報じたが、入手した映像は作為的に温存することなく直ちに掲載したとしている。
もちろんこうした報道で「実の父親がないがしろにされている」というイメージが広がり、妃も苦々しく感じたことだろう。そしてそれが“ヤラセ”であることが分かった時には、絶縁するほど激怒した状況も想像にかたくない。後に父に宛てたプライベートな手紙を報じ、プライバシーの侵害としてメーガン妃に起訴されるタブロイド新聞が、トーマスさんとパパラッチの“ヤラセ”を暴いていたのは皮肉なことだ。
10.パスポートを取り上げられた
「(“王室引退”して)ここに来るまで、パスポートも運転免許証も個人のカギもすべて取り上げられていました」。メーガン妃がこう語ると、オプラは「UAE(アラブ首長国連邦)のラティファ王女の英国版じゃない。まるでとらわれの身のような扱い」と話を膨らませた。
すると妃は「これは真実です」と沈痛な表情を見せて話を締めた。ところが“これは本当に奇妙な話”と「メール」紙は疑問を呈する。
この発言の矛盾は「4か月間で2回しか外出できなかった」と語った点とも重なるが、妃の外出状況を見れば「メール」紙の主張は明らか。妃は「1日で5000万円を使った」とも報じられたニューヨークでの金満ベビーシャワーを始め、出産後にはプライベートジェットの多用でも非難されたホリデーを満喫。それに加えて南アフリカ、オーストラリア、フィジー、ニュージーランド、アイルランド、ドイツ、モロッコへ公務で渡航している。
11.結婚前から“メグジット計画”をしていた?
一体いつ、ヘンリー王子夫妻は王室離脱を計画し始めたのか――。昨年1月に突如として“王室引退”を発表した夫妻。一般的にはエリザベス女王は何も知らされず、2人の発表に驚いたと報じられている。しかし、引退の2年前から女王に“引退について相談していた”ことを今回のインタビューで明かした。その発言は以下の通り。
ヘンリー王子「私は祖母に隠し事をしたことがありません。それは私が彼女を尊敬する証です」
メーガン妃「そう、だから私が覚えているだけでも何回もこのこと(“王室引退”)について話をしていて、それがどのくらいの期間に及んだかと言うと……」
ヘンリー王子「2年になる」
しかし、これは問題である。それは2人が“王室引退”を検討し始めたのが2018年の1月ということになるからだ。ヘンリー王子とメーガン妃が婚約発表してわずか2か月後、そして世紀の結婚式の4か月前の時点となる。結婚前から引退を考えていたとしたら、それこそ血税を注ぎ込まれた国民にはたまらない。
一方、妃はインタビュー内で「王室宛に手紙を書きました。私は自分のすべてをここ(王室)に捧げる覚悟です。いかようにも私をお使いくださいと綴りました」と語っている。いつ手紙を書いたのか明言されていないが、ともかく2018年1月にはそうした王室にすべてを捧げる気持ちはなくなっていたようである。
12.王室はパーティーで“ジャーナリストのご機嫌伺いをする”
「メール」紙が、今回の主張の中でも“特におかしなもの”と指摘しているものがある。それは、ヘンリー王子の「ロイヤルファミリーのメンバーがワインや食事を振る舞い、レポーターに協力すれば良い記事を書いてもらえる」という発言。
すると、メーガン妃がこの言葉に呼応するように「タブロイド新聞が宮殿のパーティーに招かれています」と語った。ところが「メール」紙は「王室がプレスを招いて食事や飲み物を振る舞うようなことは一切しない」と断言。
ただし、バッキンガム宮殿が公式に解放され、一般からの招待客を招くパーティーでカクテルや軽食が提供されることはあるという。しかし、そこに常にロイヤルファミリーが勢揃いするわけではない。またこの件に関し、ジャーナリストたちからは「どこの世界の話?」「だったら私に招待状が届いてないのはおかしい」など、反論の声が一斉に上がっている。
13.バッシング報道の証拠として出した資料が英国のものではない
今回、メーガン妃は英国の報道機関による人種差別の犠牲者であるという主張を大々的に行った。番組中、それを裏付けるため、妃に対する非難の言葉で満ちた新聞の1面や雑誌の表紙のモンタージュが表示され、それらはすべて英メディアのものとして紹介された。
そしてオプラが「他のロイヤルメンバーはこうした記事の対象にはなりません」と厳かに告げ、非難の裏側には英メディアの人種差別主義、性差別意識が存在しているとも示唆した。
しかし、待ってもらいたい。番組が使用したそのモンタージュクリップの3割が、米国やオーストラリアなどの週刊誌だったという。また英高級紙「ガーディアン」の見出しとして「BBCのダニー・ベイカー氏がアーチー(くん)とチンパンジーを比較」というクリップも登場するが、これは完全な捏造だ。
「メール」紙は、この見出しは「番組の制作スタッフが偽造したもの」と断言。なぜなら、「ガーディアン」がこうした見出しを掲載した記録がないためである。
また他にも、英高級紙「テレグラフ」に掲載された「メーガン(妃)は我々と同じ言語を話さない」というコラムタイトルも、妃をスキャンダラスに糾弾するものではない。これはハグやフレンドリーさを前面に押し出した米西海岸風のコミュニケーションスタイルが「英国人にはピンと来ない」というテーマで、米国と英国の文化の違いに触れた内容だからだ。