鮎川玲治の閑話休題。

趣味人と書いてオタクと読む鮎川が自分の好きな歴史や軍事やサブカルチャーなどに関してあれこれ下らない事を書き綴ります。

貴方も「貴族」になりませんこと?―シーランド「以外」での爵位称号購入のススメ―

2022-06-28 19:19:20 | その他サブカルチャー
皆様ごきげんよう、東條でございますわ。
まだ6月というのに暑さ厳しい折、皆様いかがお過ごしでらっしゃいますかしら?
賃金労働者の方々におかれましては待ちに望んだ賞与の支給もあったと存じますけれども、昨今の情勢下、なかなか大きな買い物とか旅行とかをするという訳にも参りませんわよね。
ですのでわたくし、皆様にあまり金銭的負担なく豊かな生活を送っていただきたいと思いまして、次のようにご提案いたしますの。


爵位買いましょう、爵位。


ええ、先ほどから慣れないお嬢様口調みたいな文章でこの記事を書き綴っておりますのも、つまりはそういうことでございますわ。ちなみに今回は全編通してこの口調で参りますのでお覚悟くださいませ。

爵位を買う、というと皆様おそらくシーランド公国の爵位のことを連想されるでしょうね。
けれどもわたくし、シーランドの爵位についてはあえてここでおすすめしようとは思いませんの。と申しますのも、シーランドの爵位を購入する方法については「爵位 購入」などのキーワードで検索すれば大量の記事がヒットいたしますし…正直なところ、「爵位を買うならシーランド」のような固定観念が広まってしまうのはあまり面白くありませんわ。皆様には、もっと広い選択肢があるということを知っていただきたいんですの。

ですから今回は、シーランド「以外」の爵位称号を購入する方法についてご案内差し上げたいと思いますわ。

実を言いますと、称号を販売している組織というか団体というか、とにかくその手の主体というのは結構ありますの。ただし、その多くはシーランドのように独立国を称している訳ではなく、単なる「ちょっとユニークなプレゼント」の通販サイトのような形になっておりますわ。下記にその例を挙げていくことといたしましょう。なお、中にはわたくし、およびわたくしのお友達が既に購入して郵送物が届くことを確認している主体もありますので、そうしたところにつきましては実際に届いた書類などの写真をご参考までに皆様へお披露目することにいたしますわね。あ、ちなみにそれぞれの称号には女性形もございますけれども、煩瑣を避けるためにここでは男性形のみ挙げさせていただければ幸いですわ。例えば「”Lord”を販売している」と書いた場合、大抵は”Lady”も販売しておりますので、そこは補って読んでくださいましね。


1.Consultingdigital.com(http://www.consultingdigital.com/adelstitel.php)
 2004年以来、貴族の称号を含む様々な称号の証明書を販売してきたサイトだそうですわ。取り扱われている爵位称号の中で最も安いものは15ユーロで、領地名(例えば” Herzog von Pleß”でしたら” von Pleß”に相当する部分を本記事では便宜上このように表記させていただきますわ。支配権を喪失した旧領名や家門の発祥地、あるいは叙爵される前からの姓をこの位置に持ってくる場合もありますので必ずしも適当ではない場合があることについてはご勘弁くださいませ!)がなく、かつ電子メールによるPDFでの配送となるようですの。実体のある証明書が郵送されてくるわけでないのは残念ですけれど、逆に考えれば住所の入力間違いや郵便事故などで証明書が届かない、というリスクについては避けることができるというメリットもありますわね。ちなみに実体のある証明書が発行されるプランは29ユーロで、領地名があるものも含め基本的にはこの価格が標準になっているようですわ。特徴的な称号としては” Bojar de Transilvania”というものがありまして、こちらを購入するとスラヴ圏における称号である「ボヤール」を名乗れる、ということになりますわね。立て付けとしては発行主体がトランシルバニアに土地を所有していて、このプランを購入することによってその土地の共同所有者になるので土地所有に結びついた「ボヤール」称号を名乗れる、ということになっているようですわ。


2.Noble-society.net(https://noble-society.net/ja/)
 こちらも大体2000年頃から称号を販売しているらしいサイトですわ。というかわたくしも先ほどアクセスして気づいたのですけれど、いつの間にか公式に日本語対応してますわね…。確実に日本にそういう需要があることが把握されているようですわ…。ともあれ、こちらのサイトではドイツ系の爵位称号のみならず、スコットランドやアイルランド、フランス、イタリアなどの称号が販売されておりますわ。ちょっと珍しい例をいくつか申し上げますと、例えば(ご時世的に少々いかがなものかとは思いますけれど)ロシアのバシコルトスタンにある土地の共同所有者になるという立て付けで得られる” Tsar of Marinovka”、つまり「マリノフカのツァーリ」という称号ですとか、「エジプトにおける称号」とされている” Pasha of Safaga”、つまり「サファガのパシャ」などというものもありますわね。面白いのが東アジアの称号とされるものも取り扱われているところで、例えば日本の称号とされている”Shogun kara Taishi”などというものもありますわ。これ、おそらくはドイツ語のvonや英語のofに相当する語として「~から」を入れているのだと思いますけれど…Taishiが何なのかはよく分かりませんわね。明らかに自動翻訳された「神の恩寵による、侍マスターである私は…」から始まる文言と謎のおじさまや鳥居といったエキゾティックジャペァーン要素がこれでもかとばかりに詰め込まれた証明書は一見の価値ありですわ。わたくしが自分のお小遣いで買えと言われたら躊躇してしまいますけれども。ちなみにこちらのサイトと全く同じ称号を扱っているhttps://adelstitel-kaufen.com/というサイトもあるのですけれど、どうやら両方とも同じくterra presenta ltd.という企業(?)が運営しているようですわ。


3.ADELSTITEL KAUFEN(https://adelstitel-kauf.eu/)
 「高貴な称号を購入する」というそのものずばりのサイト名、決して嫌いではありませんわよ。こちらではKaiserからRitterまで様々なドイツ系の称号が販売されておりますけれども、それぞれの称号と「利用することが可能」な領地名を自由に組み合わせて購入することができるのが特徴ですわね。ただ、この領地名の選択が購入の際に入力必須な項目となっている点がいささか気になりますわ。わたくしでしたらKaiserの称号などはそういったものがない方がよいと思うのですけれど…。他の販売主体に比較して価格や称号の独自性の点で少々物足りない部分があるようにも思われるのですけれど、一応こちらのサイトで購入できる称号についてはその使用権を法的に確保するため、ブランド名として特許庁に登録されている、ということが謳われておりますわ。


4.4micromax(https://www.4micromax-online.de/)
 こちらでは基本的にFürst(公爵/侯爵)、Graf(伯爵)、Lord(貴族の称号としては訳しにくいですけれども、あえて訳すならば「卿」になりますかしら?)およびそれ以外のいくつかの称号を購入することができますわ。日本への配送は行わないということになっておりますけれども、実際には日本へ送ってほしい旨と支払いをPaypalで行いたい旨を問い合わせ欄からご相談すれば送料を含む支払総額や支払先を教えていただけますわ。親切ですわね!
価格は爵位称号そのものよりもむしろ領地名の方に紐づけられているようでして、例えば同じFürst でも”von Lilienthal“なら19,95ユーロ、”von Königsberg”なら29.95ユーロで、ここに日本への送料とPaypal使用手数料が上乗せされて支払総額になるとイメージしていただければ結構ですわ。ちなみに2022年6月現在で19.95ユーロの称号を購入した場合、支払総額は25.65ユーロとなっておりますけれども、送料などについては変更になる可能性も考えられますので注文の度に支払総額をたずねるのをお勧めいたしますわ。
ちなみに、こちらから届くのは以下のような書類ですわ。証明書と領地名に関する小冊子が主ですわね。

   


さて、爵位称号を販売している主体の中には、そこが独立した国家である、もしくはその系譜を受け継いでいると称しているところもございますの。もっとも有名でかつ一定の実態があるのがシーランドですけれども、他にも例えばこんなところが爵位を販売しておりますわ。


5.GRAND DUKEDOM OF POMERANIA AND LIVONIA(https://www.royaltitles.net/)
 「ポメラニア・リヴォニア大公国」ですわね。ルードヴィヒ1世(Prince Ludwig I)を元首、彼の兄弟であるフェルディナンド(Prince Ferdinand)を継嗣とする亡命政府のようなもの…と主張しているようですけれど、まあミクロネーションと見なしてよろしいと思いますわ。実際、爵位称号を販売する以外の目立った活動は行っていない様子ですし…。ちなみにこちらで扱われております称号はLordからPrince Elector & Margrave (Kürfurst und Margrave)、すなわち「選帝侯にして辺境伯」まですべて同一価格の199ユーロ(送料として別に20ユーロ)だそうですわ。配偶者の方もご一緒にペアで申し込まれると299ユーロと少しお安くなる感じですわね。これまでご紹介した他の主体に比べて少々お高い価格帯になりますけれど、書類のみならず” Blue & Gold Neck Medal with Blue Ribbon”が付属するという特長がありますわ。見たところプール・ル・メリット勲章ですけれど。


6.Großherzogtums Ahlensteyn
 「アーレンシュタイン大公国」ですわ。これはeBayでこの国の紙幣や勲章(といってもメダル本体は紙に印刷されたものなのですけれども。コスト削減ですわね! SDGsですわ!)を販売している個人が創作した架空の国家で、本人が販売ページの説明欄でそのように言及したりしていますわ。称号としては"Edler von"が3ユーロ台で販売されておりまして、送料込みで2022年6月現在の日本円換算ですと概ね1000円強といったところですわね。ちなみにこちらはわたくしのお友達が実際に購入しておりまして、以下のような書類が届くとのことですわ。

     


いかがでしたかしら? 一口に「爵位を買う」と申しましても、ざっと調べただけでもこれだけの選択肢がありますの。シーランドだけですと入手可能なのは”Lord”、”Baron”、”Count”および”Duke”といったところですけれども(あとはナイトとしての敬称ですかしら?)、ドイツ系の称号などまで含めますとぐっと幅が広がりますわね! わたくしが見たところ、一番入手が難しいのは子爵に相当する爵位称号ですわね。「ポメラニア・リヴォニア大公国」での選択肢の一つとして以外には見た記憶がございませんわ…。

なお、一言申し添えておきますけれども、これらの称号はすべて民間称号ですわ。ミクロネーションがその「国家」の爵位と称して授与しているものであれ、それ以外の主体がある種の商標のような形でその使用を許可しているものであれ、いずれにしても月の土地を買うのと似たようなもので、公には概ね何の意味も持ちませんの。と申しますか、下手に公的な場所で通用させようとしたら軽犯罪法でポリスの御厄介になりかねませんわ。そこまで事態がエスカレートするようなことは滅多にないとは思いますけれど…。
まあ、こういう称号の購入と申しますのは、言ってしまえばちょっとしたごっこ遊びのようなものですわね。でも、たった数千円から数万円で生涯、あるいは子々孫々に至るまで(なにしろ一部の発行主体はそれらから購入した爵位について継承できるものと明言しておりますので!)楽しめるとしたら、それはとても有意義なお遊びではなくって?
この記事が、皆様のよりよい精神生活のために多少なりともお役に立てれば幸いでございますわ。それでは本日はこれにて、ごめんあそばせ!

九州金ぴか文化圏の存在について。

2020-12-08 18:21:43 | 旅行
時間の流れるのは早いもので、もう2020年も残すところあと一か月足らずとなってしまいました。
COVID-19のせいでほとんど遠出できないのもあって、なんとなく今年一年虚無のままに過ごしてきてしまったような錯覚に陥りますね。
え、錯覚じゃない? またまたそんなぁ。

さて、先ほど「ほとんど遠出できない」と言いましたが、言い換えると全く一切遠出できない、というわけでもありません。ちゃんと感染対策をすれば大丈夫…というのが建前であれ真実であれ言われているところでありまして、実際そんな感じで行われているのがいわゆるGoToキャンペーンですね(まあ第三波やらで今後どうなるかわかりませんが)。
そんな訳で私も9月の連休、いわゆるシルバーウィークにCOVID-19に負けず熊本~博多~下関と勝手にGoToキャンペーンをしてきたのですが(特にキャンペーンの恩恵に与ってはいないような気がします。あと9月の話をいまさら記事にするのは単に私がだらけてただけです)、そこで従来全く認識していなかった九州の文化的特徴に気づきました。


九州の石碑類、文字をめっちゃ金ぴかにしますね?


私がこの九州金ぴか文化(仮称)に気付いたのは、熊本城のすぐそばに位置する熊本県護国神社に参拝した時のことです。このブログを見てらっしゃる方はよくご存じだと思うんですが、護国神社の境内にはたいてい戦友会による記念碑とか慰霊碑とかの石碑、石造物が少なからず建立されています。こういう石造物をチェックするのも護国神社参拝の醍醐味の一つですね(不謹慎)







で、熊本県護国神社にある石碑(一部)の写真がこちら。
はい、めっちゃ金ぴかです。
流石に建立されているものすべてが金ぴかなわけではないのですが、それでも結構な数の石碑の文字が金ぴかに彩られています。他の地域でここまで金ぴかな石碑群というのは見たことがなかったので非常に印象深かったですね。

なんでこんなに金ぴかなのか? と護国神社の方にお伺いしたのですが、境内地の石碑については場所を提供しているだけで建立についてはノータッチだとのこと。
ただ、どうやら昭和50年代くらいから一気に金ぴか文字が増えてきたらしいことはお話の中で分かりました。

で、同様の石碑金ぴか文化は熊本のみにとどまりません。
今回の旅行だけでも直方、大宰府、志賀島などで金ぴか文字の石碑が確認できました。内容も史跡を示すもの(「五卿遺跡」碑)や歌の発祥地を示すもの(「炭坑節発祥の地」碑)といったプラス方面のものから、元寇の際に死んだ元軍将兵の慰霊碑(蒙古塚)といったマイナス方面(?)のものまで多岐に渡ります。
面白いことに、関門海峡を渡った下関では金ぴか石碑は一見したところ確認できませんでした。


大宰府の「五卿遺跡」碑


直方の「炭坑節発祥の地」碑


志賀島の「蒙古塚」碑

ネットで「九州 石碑 金色」などと検索すると結構な数のサイトがヒットするのですが、その内容の多くは「九州ではお墓の文字を金色にする」といったもの。ただ、熊本における学校・史跡関係の石碑の金文字を紹介しているサイトもありました(リンク先)。

お墓を金文字にする理由については現状でもよくわかっていないようですが(実態としては「周りが金色だからうちも金色に」という感じが多いようです)、一説には金ぴか文字が多くみられる長崎については中国の風習に由来するものではないかとも考えられるとのこと(リンク先)。
ただ、これだと長崎以外の九州における石碑金ぴか文字の理由がいまひとつよくわからないんですよね。
蒙古塚なんか、昭和2年に建碑された旧碑の方は彩色痕はぱっと見では確認できないのに、平成17年の地震による被害の後に再建された碑の方は金ぴか文字になってますし。なんなんだろいったい。

いずれにしても、九州にはほかの地方では及びもつかないような謎の「石碑金ぴか文化圏」が存在しています。旅行などで訪問される際にはぜひ石碑の金ぴか文字にも注目してみてください(強引に終わる

バーチャルYouTuberのすゝめ(自分がなる方の意味で)・その2「3Dモデルが動く動画を作ろう」

2020-09-08 21:34:04 | その他サブカルチャー
前回に引き続き、バーチャルYouTuber(VTuber)になる、つまりVTuberとしてのコンテンツをどう制作していくかというお話です。
その1では「名乗ってしまったもの勝ち」の精神で紙芝居動画でのVTuberデビューについてお話をさせていただきましたが、あれはあれで低スペックのPCでコンテンツが作成できるというメリットはあるものの(なにしろどっからどう見ても低スペックであるドン・キホーテの「ジブン専用PC&タブレットU1」でも紙芝居動画なら作れるのです)、それ単独で我はVTuber、と名乗るのが気持ち的に厳しいこともまた事実であろうかと思われます。全身の動きをトレースするとか表情を実際の顔に連動させるとかは別として、とりあえず今回はアバターを静止画ではなく動画として活用する、ということについて考えていきたいと思います。

動くアバターという点ではFaceRigとかを使う方法もありますが、あれはソフト本体を購入しなければならないので今回はパス。無料で導入でき、かつ自分の好みでアバターをアレンジできるという点で、前回に引き続きカスタムキャストを利用した方法をご説明していきたいと思います。というか、自分がそれでやってるので実体験に即した話がやりやすいんですよね。



カスタムキャストを利用する場合、キャラクターの設定なんかは前回ご説明したスクリーンショットの撮影に至る過程とほとんど同じなのでそこは省略します。わかんなかったら他のサイトとかでの解説を参照してください(他力本願
最低限「背景をアバターの色と違うタイプの単色にする」ことと「ブルームを0にする」ことにだけ注意していただければ大体大丈夫です。アンチエイリアスとかグラフィッククオリティとかは各自お使いの端末の性能とご相談ください。
キャプチャの撮影は「配信」画面で行うのがよいでしょう。nicocasアプリを入れていなければ勝手に外部サイトで配信されることはないので大丈夫です。



カスタムキャストのキャプチャを動画として利用する上で注意したいのは、「リップシンクの設定をどうするか」と「フリック設定をどうするか」です。
リップシンクは音声認識と映像認識の二種類がありますが、私は音声認識を利用しています。これは私がカスタムキャストをエミュレータで利用しているPCにカメラを接続していないからという単純な理由でして、どちらを選ぶかはご自分の住環境などに即して決めていただければよいでしょう。音声認識にした場合、動画作成で自分の声を活用したい方は同時に録音まで済ませてしまえば手間が省けます。



フリック設定については、私は正直フリックによる表情/ポーズ変化をほぼ活用していないのでよくわかりません。だってPCでキャプチャしてる時にフリックするとマウスカーソルが録画に入っちゃうし、どの向きにどの表情/ポーズを登録したかとかいちいち覚えるの面倒なんだもの(酷い
後でトリミングするような位置、つまり画面のめっちゃ下の方かめっちゃ上の方で操作すればフリック操作もカメラ操作もできるのですが、いちいちマウスカーソルを撮影範囲外に迂回させて移動するのもプチ面倒ですし、どっちかを犠牲にするとしたらフリックによる変化よりもカメラぐりぐりして体の向きとか変える方が楽なので、私は画面の変化はもっぱらそれに頼っています。スマホ/タブレットで撮影する際にはカーソルがないのでどうとでもなると思いますが、エミュレータかませてPCで撮影する際にはカメラ位置の変化とフリック操作はどっちかだけに限定した方が事故らなくていいような気がします。



ここまで設定したうえで「配信」画面にたどり着くと、アバターの顔がでかでかと画面に貼り付いているのでビビると思います(特にカメラのないPCで操作している、つまり私と同じ環境の場合)。これはジャイロカメラ(3Dモデル)が有効になっているからなので、落ち着いて右上にある半透明の歯車ボタンからカメラ設定を開いて無効にしておきましょう。

自分の音声/口パクやカメラ操作、フリック操作によってアバターが自分の思い通りに操作できるようになっていることを確認したら、画面の動画撮影に移ります。PCでNoxPlayerを利用している場合は公式に画面の動画撮影機能があるのでそれを利用するのが一番簡単でしょう。スマホ/タブレットの場合はAZスクリーンレコーダーなんかのアプリを活用してください。
話す内容は事前に台本化しておくか、そうでなければその場で喋った内容を別に録音しておき、必要に応じて文字起こしするということになります。VOICEROIDなんかを活用する場合は先に台本と音声を作っておいて、聞きながら口パクする(もしくは台本を読み上げる)のも手でしょう。私は音声の最終確認も兼ねてこの方法を採っています。

後は適当な背景に撮影したアバターの動画をオーバーレイして適宜トリミングしてクロマキー処理して追加のオーバーレイ画像や音声や音楽とくっつけて字幕つけて動画にしてアップロードすればOKです。簡単ですね。
…いやまあ、はい。ここを手順としてさらっと流すわけにはいかないですね。ただ、この部分は使うソフトによって機能も使い勝手も(ついでに価格も)千差万別なので、説明しづらいのが事実です。私はCorelのVideoStudioを使っていますが、これは別件で使うために既に持っていたソフトを流用しているからで、VTuberとしての動画を作成するために最適化されたソフトはもっと他にいろいろあると思います。無料ソフトとしてはAviUtl、有料ソフトとしてはFilmora辺りが有名なところでしょうか。ニコニコとかYouTubeとかにもレビューとか使用方法の解説動画とか上がってますし、使ってない私があれこれ言うよりもそういう方の説明を見た方がわかりやすいと思いますのであえてここでは深く触れません。あえてね、あえて。

というわけで、今回はこの辺までにしておきたいと思います。
ありがとうございました。起立、礼、着席。

バーチャルYouTuberのすゝめ(自分がなる方の意味で)・その1「とにかくVの者を名乗れ、話はそこからだ」

2020-09-07 02:14:55 | その他サブカルチャー
前回の記事で「いつの間にか令和2年に~」とか書いてましたが、気づけばもう秋ですね。
COVID-19のせいですっかり虚無と化した2020年ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
私は前回の記事を書いた数週間後に家を追い出されてパンデミックが収まるまでアパートでの仮住まいを余儀なくされることとなっております。早く帰りたい。

さておき、ここ数か月でいろんなことが激変しておりますが、それ以前、ここ数年ほど前からネット上で話題になって今やすっかり定着したものがありますね。
そう、「バーチャルYouTuber(VTuber)」です(強引な話の展開)。

VTuber。この言葉がどのような存在を指し示すものであるかという定義はいまだに若干の混乱がありますが、企業Vだの個人Vだの収益化がどうのスパチャがどうのみたいな話はひとまず置いておいて、広義では「投稿者とイコールであるところのバーチャルなキャラクターのアバターを用いて動画コンテンツを作成し、それを公開している人」程度の意味になりますでしょうか。

私、個々のVTuberにはそこまで関心がないというか、認知はしていても配信めっちゃ見る!というような推しはいないのですが、その全体としてのありようは非常に好もしく思っております。
以前からTwitterでは何度か言っていることではあるんですが、人類にとって性別や容姿は生活にとって無視し得ざる重要な要素であるにもかかわらず、その本質的な再配分や再選択は現時点ではかなり困難、というか実質的に不可能です。美容整形や性転換は所与のものとしての肉体に一定の変化をもたらし得るものですが、未だ十全とは言い難いところがあります。しかるに、バーチャルの世界においては自らの疑似的な肉体に相当するアバターを比較的手軽にリデザインし、おおむね自らの思うように構築することができるわけで、そこでは現実における自らの肉体的なあり方に囚われなくてよいわけです。自らの性別、容姿、背景となる設定を自ら作り出し、自由に構成することができる(企業Vとかだと自由の制限はあるでしょうし、使用するアプリやアバターの作成・発注等に係る費用とかの問題もあるでしょうが、現実世界で自分の肉体を変化させるよりは手間はかからないんじゃないでしょうか)。VTuberという存在は人類への光明です。未来への福音です。わかったか。わかったらそこのお前もVTuberになれ。

はい、というわけで今回の記事の本題、「そこのお前がVTuberになるために何をすればよいか・超低スペック版」に入りたいと思います。私は真面目に言っているんだ。

必要なものは次の四つ。

①画面のスクリーンショットが撮れるスマホないしタブレット(Androidエミュレータが動くならPCでも代用可能)
②画像加工ソフト(画像の透過やレイヤー合成がやりたいのでWindowsペイントだと厳しい。GIMPあたり使えば無料で何とかなる?)
③音声合成ソフト(地声でやるならなくてもいい。ボイスチェンジャーでも可。一応無料ソフトもある)
④動画作成ソフト(Windows10標準付属のフォトアプリでいい)

先に述べました通り、今回ご紹介するのは超低スペック版。
「金をかけず、かつ低スペックの機材でVTuberになる」方法です。
人によってはこんなのVじゃねえ!という人もいるでしょうが、そこは「広義のV」で押し通してください。



まず、スマホかタブレットに「カスタムキャスト」をインストールしてください。
アイテム課金制ですが、基本的には無料です。
カスタマイズ画面で好きな感じにアバターモデルを作成してください。この際、各パラメータをどのようにいじったかや、どのパーツを組み合わせたかを記録しておくと、あとで別の端末で同様のアバターを使いたくなった時に便利です。



背景はグリーンバックその他の単色背景に設定します。
また、「設定」で解像度「高」、アンチエイリアス「高」、ブルーム「0」、グラフィッククオリティ「高」に設定しておくといい感じになりますが、ブルーム以外はお使いの端末の性能とご相談ください。重要なのはブルームを「0」にすることで、これをやっておかないと後で背景を切り抜いたときにアバターの輪郭が元のバックの色にぼやけた感じになります。



設定が終わったら、ポーズと表情を変えてスクリーンショットを撮りましょう。
基本的には汎用性の高い立ちポーズと、喜怒哀楽の表情くらいがあればいいでしょう。
ただし、アバターは目パチのアニメーションをしますので、スクリーンショットのタイミングによっては半目とかになりますのでお気を付けください(この画像は悪い例です)。

スクリーンショットを撮ったら、それをPCに移動します(エミュでやってる場合はPCに保存されますのでそのままで大丈夫でしょう)。
そしてこんな感じで周囲の背景色を切り抜いた「立ち絵」を作ります。



次いで、動画の内容となる文章を作成していきます。メモ帳アプリあたりで書いていけばいいですし、最悪その辺の紙とペンでもなんとかなります。
文章が出来上がったら、それを元に動画に必要な画像を作成していきます。
例えばこんな感じですね。





画像加工ソフトで「適当な背景」>「立ち絵」>「テキスト表示ウィンドウ」>「テキスト」の順にレイヤーを重ねるとこんな感じになります。
これを、立ち絵の表情やポーズを変えつつ、テキストの表示に必要な分量だけ同様に作成していく訳ですね。
あとは、動画作成ソフトで画像と別撮りした音声とを組み合わせて動画にするわけです。いわゆる紙芝居動画ですね。

はい、今「こんなのVじゃねえ!」と思った方。いらっしゃると思います。
でもこれ、表示されている立ち絵のアバターが投稿者とイコールである限り、先に述べた広義の定義を満たしていると言える訳ですよ。
VTuberになるということは決して難しくない、動画にする内容さえあれば誰でもVTuberを名乗っていい。
この超低スペック版の方法は、VTuberになる敷居をかなり低くしてくれると思います。
思い立ったらVTuber。この記事をここまで読んだ貴方が、どうぞ素敵なVTuberになれますように。

後半だいぶ失速した気がするけど別に飽きたとかじゃないぞ? ほんとだぞ?

東條英機とペットな関係、あとミャックスとかシュークリームとか。

2020-03-07 19:55:18 | 歴史
はい、お久しぶりです。
いつの間にか令和2年になっちゃいましたね。新型コロナとか流行ってますけど皆さんお元気ですか。

私も一応匿名で質問を受け取れる例の「質問箱」というのを開設してまして、
まああんまり頻繁にはチェックしていないんですが、
この間久しぶりに開いたら去年の末にこんな質問を頂いておりました。



ふむ、どれも中々面白いですし、かつ短い文章ではお答えしづらい部分のある質問です。
という訳で、掟破りかもしれませんがこちら、ブログの方でお答えさせていただくこととしましょう。
ご回答が遅くなってしまった点については大変申し訳ありませんでした。


1.東條英機はシャム猫を友人からもらって可愛がっていた

一見強面の「カミソリ東條」が実は猫を可愛がっていた、というのはギャップの強さからか面白いエピソードとしていろんなところで言及されています。
平岩米吉『猫の歴史と奇話』(築地書館、1992年新装版)では、次のように言及されています。

「また東条英機が、昭和十六年ごろ、知人から贈られたシャム猫(当時は泰国猫)を飼ってから、たいへんな猫好きになったというのも面白い。
しかし、強気一徹の彼が、猫などに心を惹かれるというのは、いささかきまりが悪かったとみえ、表面は無関心を装いながらも、多忙な官邸の出入りに、
一々、猫の様子を家人にたずね、食物や飲み水にいたるまで、こまかい注意を与えていたという。東条英機は今日のシャム猫流行の先駆者だったのである」(213頁)

東條家がある時期から猫を飼っていたこと、東條英機が家人に猫の食物などに注意を与えていたということについては、
東條勝子夫人の証言(「東條勝子夫人の追憶(談)」上法快男編『東條英機』東條英機刊行会、芙蓉書房、1974年)にもあります。

「趣味と言えるかどうか、英機は犬を好いておりました。
猫は"猫かぶり"等の言葉から気に食わぬと申して嫌っていたようですが、子供達の要望でその嫌いな猫をかうことになりましたら、
かえって『猫にめしはもうやったか、犬はいつもいるから忘れないだろうが、猫にも忘れぬ様にしろよ』と申すようになりました」(690頁)

この証言によれば、東條家で猫を飼うことになったのは「子供達の要望」を受けてのことだったようです。
知人からシャム猫を贈るという話が出て子供達がそれに賛成したのか、子供達が猫を飼いたいといったので知人から猫を貰ってきたのかは分かりません
(この辺りは東條家の人々が書いた本を読めば何かしら載っているかもしれませんが)。

蛇足ながら、著名な軍人のうち、猫を飼っていたことが明らかな人物として斎藤実がいます。
『東京朝日新聞』1911年5月11日付7面の「現代犬猫列伝 海軍大臣の愛猫」によれば、練習艦隊がタイ(当時のシャム)に帰港した際に土産として二匹を持ち帰ったもので、
夫人が喜んで名前を考えたもののあまりいいものが思いつかず「ジロ」「キチ」という平凡な名前にしたとのこと。
斎藤は1936年に二・二六事件で殺害されますが、この当時も「ミイ」という猫を飼っていたようです(樋口正文編『斎藤実追想録』斎藤実元子爵銅像復元会、1963年)。


2.フランスのモーという地名をミャックスといって、それがあだ名になった。

東條英機の「ミャックス」というあだ名については、佐藤賢了『東條英機と太平洋戰争』(文藝春秋新社、1960年)の冒頭で言及されています。
ちなみにこの本は表紙などでは旧字体が使われていますが、本文扉では「東条英機と太平洋戦争」と新字体になっており、本文でも「東条」の表記が用いられています。

「ミヤックスというのは、戦史教官東条英機中佐のアダ名であった。そして私が、東条さんを知ったのも、この陸軍大学校時代である。
東条中佐は、三年学生のわれわれに、欧洲戦史の講義をしていた。東条さんは、学生時代ドイツ語をまなんだが、フランス語はやらなかった。
それで、フランスの地名もすべてドイツ読みをした。MEAUX(モー)をミヤックスと発音するのである。しかも、その地名が講義中何回となく出てくる。
そのたびに学生はクスクスと笑った。が、いくら笑われても平気で、とうとうそれで押し通した。それ以来、学生はこれを東条教官のアダ名として奉ったのである」(9-10頁)

同様のエピソードは、1925年に同じく陸大の三年学生として東條に接した稲田正純の証言(「稲田正純の証言」上法快男編『東條英機』東條英機刊行会、芙蓉書房、1974年)にもあります。

「頑固な一例をあげれば、地名一切をドイツ語読みで押し通し、それが東條さんの仇名になっていた。
Saint Quentin(サン・カンタン)をセントクエンチン、Meaux(モー)をメアウツクスはまだしも、
有名なシャンパン酒の生産中枢Reims(ランス)をレイムスと読み上げて、学生が笑おうが一切知らん顔の半兵衛なのであった」(635頁)

まあ、東條は漢字についても誤読を平気でやっていたという西浦進の証言(西浦進『昭和陸軍秘録』日本経済新聞出版社、2014年。なおこの元となった速記録では「百姓読み」とされていた模様)もありますし、その辺は気にしない人だったんでしょう。


3.東條英機はシュークリームが好きだった。

これについては、大森洋平『考証要集 秘伝! NHK時代考証資料』(文春文庫、2013年。私はKindle本で買ったので頁数を示せません、すみません)の「好物」の項目に
「⑤東條英機:シュークリーム(吉松安弘『東條英機暗殺の夏』新潮社)」とあるのが確認できますが、吉松の本を私がどこかにやってしまったために現時点ではそれ以上のことは分かりません。
確認でき次第追記します。

土屋道雄『人間東條英機』(育誠社、1967年)によれば、「東條は甘いものが好きで酸いものは嫌ひであつた」(201頁)そうで、
「里芋、さつまいも、甘栗、鰻の小串、秋刀魚の塩焼などを好んで食べた。また、すき焼や柳川鍋が好きだつた。漬物類は、奈良漬以外は滅多に口にしなかつた」(202頁)といいます。

また、シュークリームが戦前においてどの程度認知されていたかという点については、『朝日新聞』のデータベースが参考になるでしょう。
「シュークリーム」で検索すると、1924年2月に中牟田子爵家でシュークリームを食べた一家四人が付着していた緑青による中毒を起こしたという事件が報道されており(「菓子中毒は緑青から シユークリーム騒ぎの原因」『東京朝日新聞』1924年2月15日付朝刊7面)、同年4月にも小学校教員の一家がシュークリームで中毒になったという記事が掲載されています(「またシユークリームで教員一家が中毒 二日にたべて未だ臥てゐる」『東京朝日新聞』1924年4月5日付夕刊2面)。
戦前のシュークリームに関する記事はどうにもこうした中毒関連の記事が多いのですが、数を見てみると1912年に1件、1924年に6件、1925年に4件、1926年に8件(うち1件は広告)、1930年、1931年、1932年に各1件ずつ、1935年に2件、1938年、1939年、1940年、1941年に各1件ずつの「シュークリーム」の文言を含む記事が掲載されています。少なくとも、昭和戦前期において誰も聞いたことがないようなハイカラなお菓子、というような存在ではなかったようです。



値段については、1926年2月18日付『東京朝日新聞』夕刊2面に掲載された、日本橋白木屋の広告が参考になります。1つで6銭、10個の箱入りで60銭なのは安売り特価で、通常は「市価一個八銭」だったようです。