【第五部。初出は1954(昭和29)年。郷里の中学校を追われ、朝倉先生を追うように上京した次郎は、そのまま朝倉夫妻の家に居候していた。そんなとき、先生から「塾を開く」という話を聞き、助手をつとめることに。道江が兄の婚約者になったことや、二・二六事件の勃発で迷いが深まる中、自己を見つめ直そうとする次郎の精神的成長を描く。】
五・一五事件についての発言で中学校を辞めさせられ上京した朝倉先生は、青年育成のための友愛塾を開く。
先生の留任運動での責任をとって退学した次郎は東京の先生の元へ行き、塾の仕事を手伝うようになる。
塾は、すばらしい人間、青年リーダーを育てていったが、その非軍国主義的(自由な)教育方針が上から睨まれる。
二・二六事件が起き、日本はどんどん軍国化が進む。そして塾はついに閉鎖を余儀なくされる。
時勢、軍国主義への国や世間の波は大きくとても止めることはできない。朝倉先生は、塾は無くなっても塾の卒業生が地方に帰って塾の精神を広め深めてくれることを願う。朝倉先生と次郎は伝道師のように全国を回ることになる・・・というところで終わってます。
この巻では、次郎は道江に対する恋愛感情と兄への気遣い、恋愛感情と自己の成長との折り合いなどについて悩む。うんと悩む。若いから、大問題です。塾の精神である自由と恋愛とは、考えようによっては矛盾するところがあるからね。
つまり、自由とは心を解放することで恋愛は執着、その矛盾。まあ、そこを乗り越えたところに慈悲(本当の愛情)があるのですが。
とにかく、ものすごく真面目に悩みます。次郎らしいね。青年よ、悩め悩め。
そして、国がおかしくなること。国がおかしくなるのは国民にも責任があること。その時の心構え。
>今は愛情を育てることだけが、ただ一つの道だ。・・・愛情はあらゆる運命をこえて生きる。それは破滅の悲劇にたえて行く力でもあり、破滅の後の再建を可能にする力でもあるんだ。人間の社会では、愛情だけがほんとうの力なんだよ。それさえあれば無からでも出発が出来るし、反対に、それがなくては、あらゆる好条件がかえって破滅の原因にさえなるんだ。
>目あきもめくらもいっしょになって地獄に飛びこむのが運命だとすれば、その運命をおそれてじたばたするより、その運命の中で生きて行けるたしかな道を求める方が賢明・・・
>君は一粒の種をまく、という言葉を知っているだろう。ほんとうの仕事はその一粒からはじまるものなんだよ。
・・・・・権力に(やみくもに)力で対抗するのではなく、一人一人の人間力を高めること、苦しい時にもそれを乗り越えられる心の強さ(一番強いのは慈悲の力、そして自由にものを考え判断できる柔軟さ、根気強さ冷静さ、平常心)をもつことが大事だということ。相手を打ち壊すのではなく、自ら変わること。敵と味方ではないということ。
一人一人が賢くなること。そんなことを教えられました。
作者が高齢で5部を書かれた翌年亡くなったので、この作品は未完です。第6部第7部と予定していたそうです。ホントに残念です。この後、戦争と戦後の次郎がどう生きたのか。
七巻まで読みたかったなあ。
かなりの長編ですが、最後まであっという間でした。こういう名作が無料で読めるのは有り難いことです
星5つ
よく覚えてないです。(悲しい…)
でも、曽野綾子さんの「太郎物語」は、確かに読みましたよ。
これも面白くて一気読みだったことは覚えているけど、
中身については、やっぱりよく覚えてないです。悲しい
まるちゃんの連続五つ星の「次郎物語」
もう一度(初めてかもしれないけど)読んでみようかなあ。
私は抜歯がこわいので、必死こいて磨いてますよ。アーメン
・・・はさておき、
「次郎物語」amazonで無料ですぐに読めますよ。
よかったです。第5部で終わってるのが惜しいですが、時代は昭和初期でずいぶん違いますが、いい本です。(と私は思う!)
ぜひ読んでみてください。