あれは何だったんだろう
時々ふっと思い出す
私は暗闇の中に立っていた
左側はどこまでも暗く
右側を向くと
トンネルの出口のような光が見えた
目がくらむような眩しい光ではなく
どこまでも優しい光
私はそこに行ってみたいと思った
そこまでは
近くもないけれど
遠くもない
まだ行くことは出来ないと思った
一瞬とも呼べないような一瞬のこと
目の前の出来事ではないのなら
私は何を見たのだろう
それが何なのか
不思議だけれど
私はすぐにわかった
光の向こうがどんな所なのか
今は見ることは出来ないけれど
必ず光の向こうに行くことは出来るだろう
ただそれが大切なことなのではなく
近くもないけれど
遠くもない道
その道が
大切にしなければならないもの
暗闇にいるのは誰でもない私で
暗闇は暗闇ではないと
眠っていたわけでもなく
ぼんやりと考え事をしていた時でも無かった
ひとつだけ
いつもと違っていたことと言えば
自分の中にあった
それまで私が
いちばん大切にしたいと思っていたものを
私の中で手放した瞬間だった事だろうか
たぶんその時から
手放したいちばん大切なものは
それまで以上に大切なものになっている
何だったのか
なぜそれを見たのか
本当の所はわからないのだけれど