川沿いの土手を行くと
左に小さな小学校
運動会、お祭り
夏休みには毎日のようにプールに通い
実家に帰る度なつかしく見ていました
学校に入る道の脇の小さなお地蔵さん
お盆の時の灯篭流し
町内に入っていく道の角には
色んなものが売っているお店屋さん
道を挟んで両側に並ぶ家々
昔からそこに住んでいる人達
同級生の酒屋さん
郵便局
友達と探検した細い路地
幼馴染の家
何度通っただろう
白いガードレールのついた橋
松林の中に小さい神社
海の入り口には低い低い日和山
干潟に野鳥達
自転車であっという間に一周出来てしまう
海まで歩いてすぐの
小さな小さな町
私の故郷
その日
息子の高校の手続きの帰り道
お店に入っていた時にゆらゆらと
いつも遠くで地震がある時に揺れるような
少しめまいのするような地震の揺れ
「大きくなるよ!」という私に
「大丈夫だよ」という息子と入口に戻り
二度目の揺れで外に出てしゃがみこみました
三度目の今までとは比べようのない大きな揺れ
「何か変だ!おかしい!気持ち悪い!」
そんな言葉だけが
息子に言うわけでもなく
何度も何度も口から出ていたような気がします
車の中で待っていた義父がラジオを聞いて
「東北だって」という声に
急いて母のいる仙台の実家に電話をしましたが
何度かけても通じませんでした
実家の近くにいる姪の携帯電話も通じません
胸騒ぎがしました
少し駐車場で待機し、家に戻ってみると
ひとりで家にいた義母と
先に家に戻っていた主人が
物が散乱した家の中に立っていました
大きな水槽が壊れたので部屋の中が水浸しでした
片付けながらラジオを聞いていると
大津波警報が出ているということ
実家の母がどうしたのか
胸騒ぎはどんどん大きくなってきます
時間が過ぎていく中で
ラジオから家の近くの小学校の名前が出てきました
屋上に避難している人たちが孤立しているということ
母がその中に入っていればいい
そう願うばかりでした