上記はマニラでのけぞる謎の集団。
さて奥さん、妻の実家へ到着していきなりガク然とした。それはちょっと入り組んだ言語の問題。
ルソン島南部にある妻の故郷ビコール地方はビコール語という独特の言語体系がある。で、妻の実家へは過去、結婚前と結婚式のときの2回、計3日間滞在したが、このときは妻が通訳してくれたのでビコール語について気にも留めなかった。それに妻から娘の将来を考えてタガログ語を学習しなさいとオーダーされていた。
したがって娘が生まれ、妻が来日して一緒に暮らした1年間は妻からタガログ語を学習したのでビコール語とは無縁だった。ところが妻の実家へ到着するや妻は突然家族とビコール語で会話を始めたからたまげた。
「何をしゃべっているのかさっぱりわからん」
ビコール地方の人がビコール語を話すのは至極当然である。
この当たり前のことを気付かずにいたことに落胆した。思わぬ落とし穴だ。
タガログ語を学習したのは一体何だったのか。
さらに追い打ちを掛けたのはテレビだった。ちょうどビコール地方のローカルニュースを放映していた。ところがアナウンサーはタガログ語を話す。しかし、相変わらず妻と家族はビコール語でニュースを語り合っている。父52を除けば家族は皆タガログ語で学校教育を受けているのに。なにか変だ。
そして極めつけは母48の兄、伯父52が来たとき。伯父52は独身のヤモメ暮らし。父52の仕事のパートナーで朝夕2人で漁に出る。伯父52はまったくタガログ語が分からない。テレビで隣村の民家にトラックが突っ込んで横転したローカルニュースに家族全員が「あー」と驚嘆の声を発した。すかさず妻がビコール語に翻訳して伯父52の伝える。そのちぐはぐで異様な光景に思わずのけぞった。
父52はタガログ語を多少理解するが話すことはできない。
けれども2年半前、初めて父52と会ったとき、父52はビコール語でこう言った。
「プリンス、タガログ語を勉強しろ」
妻がタガログ語に翻訳して教えてくれた。そのときは何気に「そうだな」と思った。
今にして思うとアレは一体何だったのか。
それにしても妻は家族とビコール語でどのような話をしたのだろう。
やはり「面白いからプリンスをヤギと獣姦させようぜ」か。
奥さん、言葉が解からないといらぬ疑念と不安が生じることを思い知らされた。