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安倍政権は外交も失敗続き

2015-09-02 19:06:56 | 政治・経済
 少し前まで、安倍政権のこれまでを検証しようという記事をシリーズで投稿していた。その続きとして、今回は、安倍政権の外交について考えてみたい。
 まず中国、韓国との関係が冷え込んでいるというのは、いうまでもないことだろう。もうそれが当たり前の状態になってしまっていてほとんど問題にもされないぐらいだが、ここまで冷却した関係が続くのも異常である。そして、中韓がともに日本との関係を悪化させると、この二国が連携してしまうから厄介だ。そして、安倍政権が続くかぎり、根本的な関係改善は不可能だろう。総理や閣僚たちが関係改善しようと思っても、閣外にいる自民党議員たちの言動でそれが相殺されるということが延々と繰り返されるにちがいないからだ。
 また、北朝鮮の拉致再調査もどうなってしまったのかよくわからない状況だとなっている。
 一部報道によれば、北朝鮮側はすでに調査を終了させその結果を出しているが、日本側がその受け取りを拒否しているもという。8月22日の朝日新聞電子版にアップされた記事によると、訪朝した日本の民間団体関係者に対して北朝鮮高官がそのように話した。「日本政府の従来の主張と食い違うので、誰かがその責任を問われることになると懸念して受け取らないのではないか」といったという。
 当然というか、政府側はそのことを否定しているし、もちろん、北朝鮮という国のいうことだからそのままに受け取ることはできないのだが、安保法案反対の署名受け取りを拒否するなどという対応をみていると、いまの政府・自民党ならそういうことをやりかねない、と思えてしまうのもまた事実だ。
 いずれにせよ、再調査の結果がいまだ公表されていないというのは事実である。北朝鮮側にもともとまともに調査する意志などなく、孤立状態を打開すべく、北朝鮮包囲網の足並みを乱すための切り崩し工作に日本を利用し、安倍政権はそれにまんまと乗せられただけ――という線が濃厚である。このことが明るみに出れば、政権は致命的なダメージを受ける。それをおそれて報告書の受け取りを拒否している、というのもじゅうぶんありそうなことではないか。
 報告書受け取り拒否というのが事実であるにせよないにせよ、北朝鮮の「拉致再調査」が切り崩し工作だったとすれば、それはある程度成功したということになるわけだが、それもまた、中韓との関係が冷え切っているためだろう。もともとぎくしゃくしているところに、安倍総理は安保法案審議で中国を名指ししてその脅威を訴えるなどということをしている。これでは、日中韓の三カ国が結束して北朝鮮にプレッシャーをかけることなどできようはずもない。つまりは、安倍政権は、その稚拙な外交のために、北朝鮮にも足元を見透かされているのだ。

 先日のロシア首相による北方領土訪問も、そういう背景があってのことなのである。
 先月ロシアのメドベージェフ首相は北方領土訪問を強行した。この訪問だけでも大問題だが、それを批判する日本人に対して、ロゴージン副首相がツイッター上で「彼らが本当の男だったら伝統に従って“ハラキリ”をして静かになっていただろうが、ただ騒いでいるだけだ」という暴言を吐いた。信じがたいような発言である。しかし、なぜこのような発言が出てくることを許してしまったかということを考えなければならない。日本が孤立しているからこそ、ロシアもいろいろな“配慮”をせずにこのように好き放題の挑発的言動に出られるのだ。この副首相の暴言に対して、菅長官は「びっくりしている」というしかなかった。これが日本外交の現状なのである。

 肝心の日米関係についても、じつは安倍政権がこのまま続いていけば危ういと私は考えている。
 日本が集団的自衛権の行使を容認し、米軍の行動を後方支援するというぐらいのところまでなら、アメリカも手放しで歓迎するだろう。だが、それ以上に踏み出すことはアメリカの側も望んでいない、というか、むしろそれはしてほしくない。それがアメリカの本音だ。安倍総理らの目指していることは、あきらかにアメリカが望ましくないと考える領域に入り込んでいる。そして、自分の望ましくないことをする国家に対しては――たとえそれがかつて友好的な相手だったとしても――アメリカが容赦なく手のひらを返すということは、歴史が示している。前回の記事にも少し出てきた話だが、アメリカはかつてイランに対抗するためにイラクのフセイン政権を支援していたものの、自分に都合が悪くなると、あっさりイラクを敵として攻撃をくわえ、二度の戦争でフセイン体制を崩壊させた。

 また、安倍一味の歴史認識とアメリカ側のそれには、致命的な不一致がある。安倍総理とその一味のネトウヨ的歴史観は、太平洋戦争を「アメリカを中心とする“正義”の連合軍が“悪”の枢軸国を破った戦い」とみなすアメリカにとって到底受け入れがたいものである。それを前面に押し出せば、アメリカとの関係もギクシャクし始めることは請け合いなのだ。つまり、いまはまだいいが、安倍政権の路線をこのまま進めていけば、やがてアメリカからも愛想をつかされることになる。そうなれば、中国、韓国、北朝鮮と敵対し、ロシアからは足元をみられ、アメリカからも見放され、日本は極東で孤立する……
 上記のように、安倍政権の外交は現時点でも相当に行き詰まりをみせているが、安倍政権が続けば対外関係がますますおかしくなっていくのは目に見えている。