親爺は朝起きると毎日パンを買いに行きまするが、途中七十ババ~の丁寧ながらも皮肉たっぷりの挨拶がありまして、今日も「おい!ナサラ!(白人!)お前は毎日パンを買うけど何でくれないんだ~?」と残っている前歯が二本だけやけに長く藪にらみで、見~るからに意地悪ババ~という形態でありまする。親爺はそこを少し笑いながら日本語で、うるせ~クソババ~と軽く交わし、何食わぬ顔で通り抜け角にあるキオスク(軽飲食屋)にパンがあるのでそこに入ると、そこの一等席に陣取っているのが八十爺(じじい)、爺はひょろひょろと痩せてアル中と見えていつも手にはエペロンというアルコール50%もある酒をストレートでおいしそうに、ちびちびと飲んでおりまする。風体がこれまたすごく粋でありまして、しわくちゃのスラックスに古~い背広、首にはいつも2本ネクタイを締めて分厚い大きな皮のかばんを持っているのです。初め見たころは何かを売って歩いているのかと思っていましたが、毎日早朝から昼過ぎまで座っている姿を見かけますのでたぶん仕事はしていないのかと思います。この風体はブルキナファソの爺にしては珍しく、ただの爺ではないと思い、あるとき店の人に爺についての話を聞く機会がありまして、店の旦那の話によりますと爺の若かりし頃はエリート実業家であったそうで一夫多妻のこの国で5人もの妻を娶り悠々自適に暮らしていましたが子供たちがろくでなしで親の財産を食いつくし、やけになった爺は酒におぼれ、妻たちには見放され、今では天涯孤独、毎日そこで酒を飲み、午後には家に戻るのが何よりの楽しみなんだとか。つい先日、爺との会話がありまして、爺は私に「なあジャポネよ。この国はこの国で悪いところでもあり良いところでもある。ジャポンはジャポンで良いところでもあり悪いところでもある。一概にどちらがいいか、ワシにはわからん。」これって簡単な言葉ではありますが、とても深い哲学的なことでもあります。爺は親爺も男に生まれてある意味でこの爺に対し尊敬の念を抱きまする。と申しますのは、昔日本の武士が尊んだ言葉に「潔し(いさぎよし)」などという言葉がありまして、永い人生には必ず成長期、円熟期、衰退期がありまする。自分の勢いのあるうちに人に迷惑をかけないならば思い切り悔いを残さず栄華を誇り、過ぎ去りし後は何も言わず、ただ粛々と自分の楽しみに浸る。爺に人生の機微を改めて気づかされた親爺でした。親爺になって、もう人生の勉強は卒業と高をくくっておりましたが先人からするとまだまだ洟垂れ小僧、これからも修行あるのみですかな。おそれいりました~。
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