湖のほとりから。

花と空と心模様を写真と詩と文に託して。

花火の音と残るもの

2018-08-25 19:53:20 | ポエム
遠くで
ドンッ

ドンッと
聞こえてくる


ここからは見えないけれど


彩られた空気の爆発音


四方八方に飛び散る火薬の塊たち


夏の風物詩


花火大会は
その時や年代によって
見た人の
一生に一度の思い出となる



夏の湿った空気のなか
肌にぬるく
まとわりつく風を受けながら
人混みをぬって歩く道
カタカタと下駄の鼻緒の親指が痛くなる


屋台のオレンジ色がかった電球の
色と湯気の立ち昇る匂い


迷子にならないように
握りしめあった手のひらさえも
だんだんと汗ばんでくる


人並みに割かれそうになって
絶対離してなるものかと
かたく、かたく握りしめていた


ひゅ〜〜と
尾を引いて
花火が打ち上がると


ポニーテールを揺らしながら
思わず振り向いて
色が広がる空をさがす


わけのわからない
不思議な高揚感


誰かの小説で
その音が『子宮に響く音』と書いていたっけ


思わず
浴衣の帯の下までも
本当に届いていくものかと
フッと恥ずかしくなってみたり


嵐の時の風のように
空に通じる空気が
何かによって
かき回されることは


いつもと違う感覚が
何かをつれてきて
現実から体の感覚を引き離していく



次から次に繰り出されていく
色とりどりの光のページェントに
手を離すことを忘れていた


爆音と共に
見上げる空を覆い尽くす
色と色が重なり
細かな光の粒たちが放たれて


落ちながら
きらめきながら消えていく


花火の儚さと
夢のような高揚感は隣り合わせ


ため息のような
悲鳴のような


いつまでも
続く夢なんかないんだと


これでもかと
チカラを振り絞りながら
登りつめていくように
最後を彩った空の色たちも


終わってしまえば
ただの空に帰るだけなのに


もう一度
もう一度と


空を見続けていた


彩られた空とのコントラスト
暗闇にさえ思える空に
なおさら寂しい気持ちになっていく


花火は美しいもの


美しさが去ったとき
それと引き換えにやってくるものの悲しさ


残ったものは
汗ばんだ君の手のひらの感触

























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