友達によく聞いたりする。
『ねぇ、歯医者さんで溺れたことない?』
『そんなことあるわけないでしょ⁉️』と答えが返ってくる。
『えー、溺れたことがないの⁉️』
『そう言う、アンタは溺れたことがあるの⁉️』
『あるから聞いてるんじゃん❗️』
『うそ⁉️』
だいたいは、こんな出だしの会話となる。
しかし、話が進むにつれ
どうやら友達も溺れた経験者だとわかると、一気に話は盛り上がりをみせる(笑)
あの歯を削るドリル
水を出しながら削り進む
横になって我が身
私は舌で水の侵入を防ごうとする。
歯医者さんの手は、チカラがはいって
私の口のヘリをコテがわりに手を押し付けながら
中へ、奥へ侵入してくるので
その圧力で、一瞬喉が潰されそうになってしまう。
ドリルの水が口の中で溜まっていく。なんとも気持ちが悪い。
そう言うとき、
すかさず、歯科助手さんがバキュームを投入するも
水の溜まっている場所じゃなかったりする。
、、、そこじゃない、ちがう、場所確認してよ、ちがうって、、、
自分の舌の所在を確かめる。
歯医者さんの指に自分の舌をおしつけるわけにもいかず
唾液と、ドリルの水を口の中で
舌一つで分けているが
唾液をゴックンしたくなる。
一瞬、喉がせり上がり
舌が上下する。
歯医者さんは何事もなく
ドリルで突き進む
く、、、苦しい、、、
ドリルの水が舌の土手を超えて
喉に流れこもうとしてくる、、、
お、、おぼれる、、、、。
手足がバタバタしそうになるw
『ってね、そんなふうに、なったりしない?これが溺れるってことでしょ⁉️』
そう話すと
ほとんどの友達は、そうだ、そうだと、やっと笑いながら同意してくれる。
ホッとする
わかってもらえて良かったーって思う。
なにせ、若い頃のトラウマで
歯医者さんが大の苦手な私。
思い出すは、幼き頃
私の乳歯は親の気にするところにはなく
大人の歯が生えてきても
私の乳歯は頑張った。
要らぬ頑張りのせいで
両端の下顎の糸切り歯は
顎に沿って上に立つのではなく
口の中、喉の方向に生えてしまった。
鬼歯の反対だと言えばわかりやすい。
数々の虫歯があっても
その両端の歯は立派になりつつ
それでも、両親の事情で
なかなか歯医者さんには行けなかった。
父親の消息が消えたりする中
母の内職だけでは
保険証を取得するまでに至らず
小さな虫歯は現金でなんとかなっても、他の歯はどうすることもできなかった。
大人になって
自分が働き始めると
勤め先の近くの
評判だと言う歯医者さんを訪ねた。
私の口の中は、
問題の鬼歯の隣の歯が既に虫歯で
抜くことになってしまっていた。
おまけに親知らずが生えて来ていた。
まずは、あの鬼歯の隣の虫歯を抜いた。
歯肉が落ち着くまでは
ブリッジすらかけることはできない。
歯肉が固まる間に
親知らずを抜くことになった。
両下顎の奥の親知らずを
片方づつ、3日間をあけての抜歯
当時、それが当たり前だと思っていた。
なんの説明もないまま
親知らずは抜くと。
まして、3日だけあけて、、、。
一本目の抜歯には、なかなか血が止まらず、そんな中でも仕事をこなし、やっと止まったころに
二本目の抜歯。
二本目の抜歯のための麻酔を打ったあとに、目の前が真っ暗になり
心臓は動悸により息が苦しくなった。
失神には至らず
先生に話すと
舌打ちをされたあと
しばらく放置
少し落ち着いた頃に
先生がきて、抜歯を行った。
それから怖くなって
歯医者さんへは足が遠のいた。
のちに、親知らずは、命さえ奪うことになりかねないことを知り
余計に、その時の処置を怖く思った。
鬼歯の横の歯を抜いて放っておいたせいか、喉に向かって生えていた鬼歯は、
向きを変えて、本来あるべき場所へと移動して真っ直ぐに上をむいた。
これは、不思議なことだった。
長い間、方向の違う歯がある場所は
近くからみたら、少し隙間に見え、歯さえ一本抜けたままなんじゃないかと思うほど。
歯並び、虫歯、鬼歯は
私のコンプレックスになり
震えてしまうほどのトラウマになっていった。
しかし、歯というものは
手を入れてしまうと
数年間後には
また、やり直さなきゃいけなくなってしまう。
ある日、歯の痛みに耐えかねて
意を決して歯医者さんに行く決心をした。
今度は、片方のまだ一本残っていたあの、喉の方に向いたままの鬼歯の隣の歯を削ることになった。
被せるためにかなり歯を削った。
そこまでで、また私は
また気分が悪くなり
治療を残念してしまった。
その削った隙間をぬって
もう一本の鬼歯も
不思議なことに本来あるべき場所の上へと向き変わった。
歯医者さんに通うと
肩こりがし、頭痛がし、
どういう訳か、足の太ももさえ筋肉痛。体にチカラが入ってしまうのだろう。
そして、体調が悪くなる。
かなりのストレス。
私にとっては、歯医者に通うことは
臨戦体制をもって歯医者さんのドアに立つのと同じ。
椅子に座るのは、決死の思い。
今も、どうしても治療が必要な時、歯医者さんへの通院は
前の日からイライラが募り
当日は、他のことは考えられず
ただ、静かに、そのストレスと立ち向かうことしかなかった。
もし、普通の家庭で
保険証の心配なく
乳歯の処置をして、然るべき歯医者さんでの治療をしていれば、、
私のちいさな顎には
親知らずが出てくるスペースはなかったのかもしれないなどと思ってしまう時がある。
せめて、自分の子供にだけは、こんな思いをせずに済むようにと
こころを配ってやってきた。
自分の苦手は、子供の苦手にはしたくなかった。
これからも
まだまだ、歯との戦い?
いや、歯医者さんとの戦いは続くのだろう。
これまでの自分のコンプレックスやトラウマは、親しい友人にさえも語ってはこなかった。
ただ、面白おかしく
『歯医者さんで、溺れることはない⁉️』
友達から
賛同を得て、大笑いすることが
せめてもの慰めになる。
みんな同じなんだって思うと
少しは気が楽になるから