タイで子連れ狼

何の因果か運命か、異国の地にて親父単独で二人の子を育てることに。

さあ大変の、てんやわんや育児&生活日記

タイ国での受験は情報戦争だった

2016-11-16 14:01:05 | 育児
今回はタイの進学塾事情について。
まあその、育児や受験では大先輩であるブロガー・メンカームさんからは色々とアドバイスいただいて、彼のブログから「進学に有効な塾なんてのは心底得難し」なんていう話を数年前から知ってはいたが、さてわが身に降りかかってから右往左往するのである。

それに関してタイ人の母親といえば全くの役立たず、育児と教育は外国人の私に丸投げされている惨状で、いったいこれ以上どうすればいいのか?と虚空に向かって叫びたくなる時も多い。
生来落ちこぼれで、タイ国の教育事情など知り得ようはずもなしの私が、暗闇の中を手探りでサポートをするしかない。

前回記事にある通り、息子はY校の一次試験で不合格となった。
息子の学校からは6年生の43名が全員受験して、合格したのが5人のみ。
昨年の合格者も同じようなもんだと聞いたので、これは学校の対応不足ではないかと疑っていた。
昔のやり方がいつまでも通じるわけがなし、状況が変化したならば迅速に対応策を練り込んでいかねばならぬのは国家や会社の運営、また学校経営も同じ。
変化を拒んだものは淘汰される。
それは生物すべてに当てはまる適者生存の掟といえようか。



さて、合格発表後にも小学校のアクションがはっきりせず、とりあえずY校受験問題に中学校レベルの出題が多数含まれていたということで、土曜日の特別授業において中学一年生課題を先取り教示しているくらいだろうか。
しかし、それを教えるのが小学校の担任先生とあって、息子の反応は格別に鈍いものがあった。
「今日の授業は全部理解したのか?次にやれば100点とれるのか?」と問うたところで、「75%はできると思う」と自信無げに返事するのみで、聞いてる方の不安も収まらない。

かといって無策な親父にはどうする手立てもなし、「成績優秀なクラスメートが通う塾を探り当ててこい」と指令を出すくらいのもんだ。
何ら有効な打開策など見えてこないうち、早11月となり後期の授業が始まってしまった。(タイは前期と後期の二学期制)


先週の11日金曜日だったか、「ついに成績2番のガーン君が通っている塾が判明した!」と、高揚した声で報告があったのは下校時、バイクの上だった。

「どこだそりゃ?、誰が教えてくれた?、どういうルートで知った?」

走行中にたびたび振り返りながら矢継ぎ早に質問する親父。
「まあまあ」と両手をヒラヒラさせて得意げに説明を始める息子。

「親友のファースト君からだよ、だけど彼に教えたのはBBちゃんなんだって」

BBちゃんといえば、Y校不合格組でも順位300番前後っていう、成績あまり芳しくない学校経営者の孫娘じゃないか。
ファースト君はBBちゃんの従兄弟、そりゃ教えないはずがないな。

「そんで、BBちゃんがガーン君から聞き出したのか?」
「まあまあ落ち着いて、それがBBちゃんに教えたのがカオホームちゃんなんだ」

ん?カオホームちゃんといえば学校一のキレイどころ、タイ王国全体が王様の悲報により喪に服しているってのに、カラフルなアイスクリーム模様を全身にあしらったワンピースでブイブイ言わせたって、あのカオホームちゃんか?

「しかも、カオホームに教えたのが、正直者オーン君なんだよ」
「そのオーン君にこっそり耳打ちしたのがガーン君というわけ」

「なるほど!、そういうルートで回って来たのか…」
「逆から言うと、ガーン君はオーン君だけに教えたわけで、もしかしてオーン君はカオホームちゃんのことが大好きだから口を割った?」 
「そしてカオホームちゃんは、学校の重鎮であるBBちゃんへ伝え、BBちゃんは従兄弟のファースト君へと」
「いやそんなこたどうでもいい、これはチャンスかもしれん、教えてくれたファースト君にはスペシャルサンクスだな」


という訳で、善は急げと次の日には塾まで視察に行った親父。
事務所にいた厳格そうな女教師に問い合わせたところ
「もう定員オーバーですから一月まで待ってください」と、つれない門前払いを食らってしまった。

「やっぱりな…、もう11月も二週目だからな」と、あきらめ半分で申し込み書に記入。
私のタイ語能力があまりにも拙いので先方も困惑気味だし、もしかすると一月になったところで後回しにされて電話連絡が来ないかもしれないなと思った私は、とっさに「母親の携帯番号がありますが…」と話を横に振ってみた。
これにはポジティブな反応があり、「お母さんはタイ人なの?それはいい」と急に笑顔になって申込書を受け取ってくださったwww
まあ、この大事な時にバンコクへ出張だとかぬかして、着信総拒否で連絡もつかない母親であるが、居ないよりはマシだと利用することにした。

そうはいっても申請書の束を見ると順番待ちは10数人、その束の一番下に差し込まれたからにゃぁ入塾も望み薄というもんだ。
「やるだけやったんだからしょうがない」、そう自分をなぐさめながら土曜授業を終えた息子を迎えに学校へ。

帰りのバイクの後ろから息子の弾んだ声が聞こえてくる。
「先生に塾のことを話したら、散髪して明日の朝一で行ってみなさいだって!」

「あん?、ああ、あれね、無理かもしれんぞ…」
「さっき、行ってきたんだけど、来年の一月まで待ってくださいだと!」
途端にバイクの後ろが静かになり落胆の空気が伝わって来る。

こりゃいかんな、やる気を失ったかな?と思った私は、
「見学でもいいから行ってみようぜ。先生から行ってみろと指示があった訳だし、ダメもとでお願いしてみよう」と元気付けた。
そう思った理由は、受験メンターであるメーンカムさんから「待っていても塾からの連絡は来ない」というコメントを頂いたからだが、バイクの後ろから「当然だよ、僕は行くよ!」と妙に強気な返事が返って来たので少し安心した。


さて日にちが代わって日曜日、早く到着しすぎたのか建物のドアが閉まったまま。
15〰20人程の塾生に混じって外のベンチに座って待っていると、昨日に応対してくれた先生が現れて施錠を外した。
そして隅に突っ立っている電柱状態の我々親子を見つけた先生は、少し驚いたように目を見開きわざわざ挨拶に来てくれた。
「オーー、サワ・ディーカ!」
思わず大恐縮モードで「サワディー・カッポム!」と満面笑顔で両手を合わせる親父。
息子の顔をマジマジと見た先生は、何を話しているのか「…勉強しましょうか、ね?ね?…」と息子に話しているが、ペラペラ早くてよく意味が聞き取れない。

息子を振り返ると真剣なまなざしモード、少し涙ぐんだ瞳が充血していて、彼の得意技である眼力をMAXで使用しているのが見て取れた。
勝負どころでたびたび使うこの目ぢからを見た人は(特に年配女性は)無下には扱えなくなるというココ一番の大技である。

「お!」と圧倒されながら、「い、今先生はなんていったの?」と質問すると、その眼力のままキッと睨み返してきて、「今から勉強してもイイって言ったんだよ…」と気張りながら通訳してくれた。

「よっしゃー!!」、人知れずガッツポーズの親父は、「昨日の定員オーバーって話はなんだったの??」という疑念に駆られながらも、そそくさとカウンターで授業料を前払いし、引き換えにブ厚いテキスト数冊を頂いた。

そして手ぶらの息子のために文房具と昼飯を調達すべくセブンイレブンへ向かうのだが、その間に登校してきた学友たちが8人ほど集まり息子と片間っていた。
見ると、ファースト君の隣にはBBちゃんのお母様(学校経営一族、会計室長)がいて、付き添いで居てくれるようなので後はお願いして離脱することにする。

「いいか、なるべく前の方に座れよ。わかんない事があれば遠慮せずに質問しろ」
メーンカムさんから頂いた作戦を受け売りして、ウザそうな目で頷く息子を残し、娘が一人で留守番する家へと向かった。


そういうわけで、なんとか念願叶って有効な進学塾へと駒を進めることができたのだが、何かが引っかかる。
気分的には一日にして地獄から天国だし、幸運に感謝すべきである。
まるで地獄でもがく餓鬼が、いきなり天国へと続く蜘蛛の糸を掴んだ気分なのだが、それにしても何かが引っかかる。
BBちゃんのお母さんは、息子の学校の経営者一族
「なのに、この塾を知らせてくれたのはファースト君のみ…」

もやもやとしたわだかまりは、帰りのバイクの上で話す息子の報告により確信へと変わっていった。

「すごいよこの塾、先生が違うよY校のトップクラスの先生たちだもん」
「すんごく厳しいよ、寝てる子にチョーク投げつけたんだよ、おでこにバシッと当たったよ、おでこ真っ白!僕が投げても当たらないのにね」
「そして私語してる子の手を引っ張って外に連れ出したんだ、出ていきなさい!って。あなたたちは、わざわざここで勉強しなくてもいいんですよ、だって!」
「でも教え方がわかりやす〰い、質問にも丁寧に答えてくれるし」

「なるほど、なるほど?」と満足げに聴いていたが、ふと頭にわだかまる疑問を投げかけてみた。
「そんで、おまえの学校からは何人来てたんだ?8人ほどは見えたが」
「それが…、ほぼ全員の18人が来てたんだよ、うちのクラスから…」
「ナニ!!!、じゅーはち人?(;゚Д゚)」

来てない子は、学校トップのAKBちゃんと飛び級のアンフィル君の二人だけ。
そして息子に声が掛かったのは始業から2週間が過ぎた頃。
主席のAKBちゃんは来る必要がないとして、アンフィル君は年下のくせに態度が生意気だからだろう。
「では、息子にはなぜ連絡が遅れた…」

しばらく無口になった息子は、唐突に「BBの顔を見た?」という別の話題を振って来た。
「んんや、見てないけど、どれがなにか?」
「BBのやつ、めっちゃ気分悪い顔で睨みつけてきたよ。 そしてお母さんから、なにその顔、笑いなさい!って叱られたんだ」

クラスの皆さんは、BBちゃんから口止めされてた可能性があるなと思った親父は
「もしかして、BBちゃんって、お局様なの?」と失礼な質問をしてみた。

「そうだよ、スンゴイおつぼね。 みんな怖がってるし、対等に話せるのはカオホーㇺとファーストだけ、あとは僕かな?」
「僕かな?って…、おまえ(-_-;)」

お局様と思しきBBちゃんに向かって悪態をつく息子にはかねがね注意を促して来たが、今回驚いたのはBBちゃんのお母様だ。
「笑いなさい」というセリフを考えても、明らかにBBちゃんが日頃から我が息子を嫌っていることを知っている。
学校の経営陣であるのに、娘の暴挙を知ってて知らぬ顔をしていた可能性。
裏返せば、ライバルは一人でも少ない方が良いということだろうか。

「やっぱり、ファースト君か…」そうつぶやく親父に、
「彼には、ホントに感謝しないとね…」と息子が返したあたり、不安定な自分の立ち位置を認識しているようでもあった。

しかしクラスメートは友達にして仲間であると信じている息子には、いまだ皆を疑いライバル視する気もなさそうだし、
これから受験という振るい落しが仲間意識に亀裂を生み、互いに戦い、蹴落とし合うことを方向づけられるのだろうか。

受験戦争とはよく言ったもの。
変化を拒んだものは淘汰されるが、戦いに負けたものも淘汰される。
そんな浮世の習わしに向き合うのだろう息子は、まだ12歳の夢の中。
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