【7月】
◆五月ウマチー
7月2日/(旧暦5月15日)
ウマチーとは方言で御祭りのこと。五月ウマチーは、豊作を祈願する旧暦5月の稲の初穂儀礼。
稲穂祭、シチマ、三穂祭ともいい、久米島ではツマ、またはツマガナシ、渡名喜島では新穂花(あらほばな)お祭り、八重山諸島ではスクマ、米スクマなどという。
古くは麦稲四祭のなかでも最も重んじられた祭儀で、歴代国王も稲作発祥地とされる南部の知念玉城の地を巡拝して、その順調な成長を祈り、さらに5月中に吉日を選び、国中に稲穂祭を挙行させた。
首里城内や村々でもノロを中心に御嶽や殿(祭場)で祈願した。殿での行事が終わると、それぞれの門中の宗家に集まり祖霊をまつる。平安座島や粟国島のような粟作地帯では、5月の祭りも粟穂や粟粥をそなえる粟作祈願である。
現在、祭りはノロ不在のため村落祭祀より門中祭祀に移行した地域もあり、簡素化が進んでいる。
知花部落においてはウマチーの際は公民館職員が神酒(ミキ/米を発酵させて砂糖を加えた飲み物)をつくり部落内の各根屋に配り訪れた各門中に振舞われるのが伝統行事となっている。
知っておきたいミニ知識
■供えもの②
ジュウバク(重箱)・ウジュウ(御重)、ウサンミ(御三味)
1.肴(料理)の種類
シミムン(煮しめ)・アギムン(揚物)・カマブク(かまぼこ)などの料理を奇数の品数(5、7、9品)詰めるのが一般的。
2.行事の種類と重箱の内容
地域や家庭によってさまざまだが、一例をあげると次のとおり。
ア、年中行事(彼岸・御清明・盆など)、大御焼香(二十五ヽ三十三年忌)
かまぼこ・・・赤カマブク
昆布・・・結び昆布
三枚肉・‥身を上向きに詰める
イ.七日焼香(七七忌)、新十六日、若御焼香(一、三、七、十三年忌)
かまぽこ・‥白カマブク
昆布‥・返し昆布
三枚肉‥・皮を上向きに詰める。
※田芋は子孫繁栄を意味するカリーナムン(縁起物)とされるので、法事には用いない(大御焼香でも使わないのが普通)。
3.久米村の御三味
肴は豚肉・鶏肉・魚の身をゆでて裂いたものなどで、醤油・酢・おろし生姜で作ったシタジ(つゆ)をつけて食べる。・・・中国の「三牲」にちかい。
・ムチ(餅)
白餅、あん餅、トーナチン(とうきぴ)を入れた餅など、重箱料理では肴と対にして供える→ひとつの重箱や皿に盛る数は奇数にするのが習わし。
【例】5個×3列=15個
7個×3列=21個
・ウチャヌク・ウチャナク
白餅を大中小の3段重ねたもので、普通3個をー組とする→おもに屋敷ヌ御願や拝所などへの神拝みに供える。
【8月】
◆六月ウマチー
8月1日/(旧暦6月15日)
沖縄諸島の稲の収穫儀礼。稲大祭、ウフウマチー、大折目(渡名喜島)とも。新穀を祖霊に供えて豊穣を感謝し、村や門中の繁栄を祈願する。村ではノロ、掟神、根神ら神役が〈殿廻り〉(祭場の巡拝)をし、それが終わると門中ごとにムートウヤー(宗家)に集まり、クディ(おこで)の司祭で祖霊を祀る。この祭りでは、新米の花米、ウンサク(粥を発酵させた飲物、神酒)、グシ(五水、泡盛)を供え、にぎやかに鼓を鳴らしウムイをうたって神遊びもする。王府時代は公儀の祭りであったが、しだいに地域差があらわれ、さらに村落祭祀から門中祭祀に移行しているのが現状である。
【御願する対象】ヒヌカン・トートーメー
【お供え物】
▲<2020.8.13琉球新報記事抜粋>
<▼沖縄タイムス2018.8.12>
◆六月カシチー
(旧暦6月25日)
新米の収穫祝いの折目(年中行事の中で、生産休養日の〈遊び〉をともなう収穫祭や予祝行事の日)。沖縄本島とその周辺離島に分布する。各家庭ではカシテーと称される新米や轜米の強飯とお汁を、火の神や祖霊に供える。部落行事として夜は綱引が行われる。
この綱引は、カシチー綱(大人綱)といい、6月15日の頃のミーメー綱小(童綱)を大き<作り直したものとなる。
【御願する対象】ヒヌカン・トートーメー
【お供え物】白カシチー(小豆などを入れずに炊いた白い強飯)、汁物など
◆旧七夕
(旧暦7月7日)
墓掃除をし、墓前で線香をたき、酒などを供えてお盆の案内をする。かつては、虫干しや洗骨なども行われた。宮古の砂川や狩俣では墓参しないという事例もみられ、自宅近くの畑から墓の方へ向かって遥拝するか、仏壇に線香をたいて七夕を報告するにとどまっている。沖縄の七夕は、八重山のナンカソーロン(七日精霊)という語に示されるように七夕盆であり、盆の一環として捉えられている。墓の移転は日取りに制約があって容易でないが、七夕は日なしとされ、タブーを伴わずに移転できる。位牌を仕立てるにもいい日とされる。
【御願する対象】墓・トートーメー
◆旧盆・ウンケー
8月28日(旧暦7月13日)
各家で精霊を迎える盆入りの行事。迎え盆。
門の両側でトウブシあるいは竹を焚く。墓参りして先祖を迎えるところもある(石垣島・与那国島など)。位牌の洗い清めや仏壇の掃除をし、仏壇には、地域によって多少異なるが、サトウキビ2本(精霊の杖)・ミソハギ(精霊の手足を清める帯)・アダンの実・餅・リュウガン
・スイカ・クネンボ・ナス、さらに、精霊が手土産運搬に用いるとしてガンシナ(ワラなどを輪の形にした敷物)が供えられる。呼称はウンケー(沖縄諸島)・ンカイ(宮古諸島)・ンカイピー(石垣島)などの盆迎え・精霊迎えの語意にちなむものと、ソーロンヌシキルヒー(石垣島)・シキルピン(波照間島)にみられる仏壇に関連するものがある。
【御願する対象】トートーメー
【お供え物】花、お茶、お酒、ロウソク、線香、ウチカビ、果物類、提灯、グーサンウージ(クーザンは杖、ウージはさとうきび)、葉付きしようが、ガンシナ、ミンヌク(餓鬼や無縁仏用の食べ物)、ウンケージューシー(炊込みご飯)・酢の物等の夕食
◆旧盆・中の日(ナカヌヒー)
8月29日(旧暦7月14日)
14日は中の日といい、3度の食事を仏壇に供える。また、お中元を持って親戚宅へ焼香に回る。
【御願する対象】トートーメー
【お供え物】冷素麺や素麺の吸物等
◆旧盆・ウークイ
8月30日(旧暦7月15日)
15日の夜から16日未明にかけて各家で祖霊を送る。送り盆。3日間仏壇に飾っておいた供え物を下げ、その初物をとって精霊の土産とし、ウチカビとともに各家の門口、あるいは村境や墓への道の途中まで持っていき、線香を焚いて送る。奄美大島では墓まで送る。呼称はウークイ(沖縄諸島)・ウフーイ(宮古島)・ウクルヒー(石垣島)などがある。各地でエイサーなどの芸能も行われる。
【御願する対象】トートーメー
【お供え物】重箱料理(肉、かまぼこ、煮物、揚げ物など)、餅、団子、ウチカビなど
〈文/沖縄国際大学・沖縄大学非常勤講師・稲福政斉〉