ホワイエでコーヒーを飲みながら♪

観劇の感想もろもろな備忘録
「つれづれな日々のつぶやき♪」からお引越し中

『ながされ・る君へ~足利尊氏太変記~』ストーリーと感想

2024-01-04 10:14:17 | 劇場・多目的ホール
明治座にて、シンる・ひま オリジナ・る ミュージカ・る『ながされ・る君へ~足利尊氏太変記~』12月28日(木)昼の部を観劇してきました。
今作で13作品目となる、る・ひまわり制作の年末お祭り舞台です。祝12周年!干支も一周したよ~♪
第一部はお芝居、第二部はショーの二部構成で、今年の第二部は「猿楽の日~近頃都で流行るものフェスティバル~1338」と銘打っております。

ストーリーと感想を備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。





【演出】原田優一 
【脚本】池田テツヒロ
【音楽】かみむら周平
【出演】相葉裕樹/内藤大希/石川凌雅、松田岳、前川優希、井澤巧麻、広井雄士、井深克彦/丘山晴己/井澤勇貴、伊藤裕一、加藤啓/大山真志、辻本祐樹/原田優一/上口耕平/ROLLY/水夏希

【ストーリー】
相葉裕樹と内藤大希が足利尊氏・直義兄弟として明治座で革命を起こす!!
世界初!足利尊氏を主人公としたオリジナルミュージカル!
誰よりも流されやすい主人公、ここに爆誕!

〈第一部〉オリジナルミュージカル「ながされ・る君へ~足利尊氏太変記~」
朝廷が南北に分かれる混迷の時代を描いた軍記『太平記』をモチーフに、朝廷と幕府の覇権争いに巻き込まれる武士たちの奮闘を描く。
主人公は源氏の血を引く足利尊氏。時代の大きな波や、周囲の圧に翻弄され、流され、それでも自分らしく生き抜いた足利尊氏の想いを描く壮大なミュージカル。
 日本全土を巻き込んだ史上最悪の兄弟喧嘩“観応の擾乱”はなぜ起きたのか?激動の時代を駆け抜けた男たちの歴史ロマン。

〈第二部〉ショー「猿楽の日1338 ~近頃都で流行るものフェスティバル~」
室町時代の音楽番組。今、都で流行中のアーティストたちが集合。
総合司会:鯨井康介

<登場ユニット>
●鹿るGENJI 「奈良ダイス銀河★劇場」
奈良で大人気の貴公子アイドル。 ようこそ古都へ、遊ぼうよナラダイス。

●ActSTONES「イミネーッショ・レイン坊」
悪党の原石たち6人組が歌うサンクチュアリ。 偽物の雨にうたれても。

●新しい都のリーダーズ「キゾクブルー」
貴族よりも貴族ぶる4人組。 青い烏帽子被り貴族ブルー。

●ミュージカル『ナラジン』より「三種のジンギー」「ア・ホーリュー・ジ・ワー(あ、法隆寺は?)」
大人気ミュージカル『ナラジン』の出演者が集結。劇中歌を披露。

●THE ZEN「JI-AI(慈愛)」
噂のサンスクリット系アイドル。 禅の教えは「愛」。ただただ愛したい。

◇日替わりゲスト
12/28(木)昼夜:平野良
12/29(金)昼夜:藤田玲
12/30(土)昼夜:蒼木陣
12/31(日)昼夜:安西慎太郎


【相関図】




公演の詳細は下の【リンク】から飛んでみて♪


【感想】
〈一部〉
客入れは和な楽曲が流れている。
美術はシンプル。盆の上に階段のあるモノクロな構造物があり回転する。場面転換ごとにプロジェクションマッピングで風景、地名、人名が投影される。わかりやすくて親切♪

オープニング、全員が舞台上に立ち合唱しているところから始まる。
冒頭のシーン、足利尊氏の弟 直義が死ぬシーンがラストにも出てくる。尊氏は直義を死なせないために奮闘するのだが、直義はやはり死んでしまう。だが実は違う世界線があった…。という感じを残して終幕する。
戦いと裏切りばかりで暗いといえば暗いのだが、根っからの悪人はいない。みなそれぞれ自分のすべきことを全うしようとし、背負った(背負わされた)責任を果たそうとした結果がこうなってしまった。時代がそうさせてしまったのだと思う。切ない…。

ミュージカルと銘打っているだけあって全員歌が上手い!安心して聴いていられる。過去作品では誰とは言わないが、ちょっとな~という方もおられたので。やはり無理っぽい方には歌パートはふらないほうがよいと思う。
ダンスも殺陣もキレッキレ!“ザ・ミュージカル”という感じの作品。ストレートプレイより複雑なストーリーがすとん!と入りやすく、ストーリーや人物を追っていく集中力が何割か少なめで済んだ。

相葉裕樹、センターが似合う華がある俳優だと思う。歌もダンスも殺陣もできるし、なにより容姿が綺麗♡
水夏希、さすが元宝塚雪組男役トップスター!娘役のときは可憐で可愛らしく、妻役のときは凛として美しく。カーテンコールにお召しの着物から仕立てたドレスが素敵♡
ROLLY、意外(失礼)にも演技が上手く、いろいろ面がありな後醍醐天皇役が似合っていた。
井深克彦、今年も出演おめでとう!かっちは永遠に“可愛い”枠で出演し続けていただきたい。“ドジっ子”ふゆ役は可愛いかったよ♪
上口耕平、相変わらずの色気っぷり♪

大山真志(兄役)、原田優一(弟役)の年齢逆転兄弟の衣装だけが現代風、というか兄が佐川急便、弟がクロネコヤマトの配達員の制服にそっくり。パクリ…じゃなくてたまたまということにしておく。るひまだから。登場した途端に客席がざわざわくすくす、急に動揺する大山真志。
「混ぜるな危険!取扱注意!」と演出の原田優一に言われてしまう加藤啓には絡まれて、舞台上で笑ってしまう大山真志。ゲラだね~。

〈二部〉
今年もやっぱり頭おかしい(誉め言葉)るひま。日比谷方面や元J事務所などから怒られないかと心配してしまう。公演タイトルからして危ない気がする。某公共放送の歴史ドラマにかぶせてくるスタイルは変わらないな~。
司会の鯨井康介は安心安全、良心的。ゲストの平野良とも息がぴったり。
ちなみに「ここは治外法権」と平野良。るひまのお祭り舞台第二部は日本の法律の範疇ではないらしい。そうか~納得♪

●鹿るGENJI 「奈良ダイス銀河★劇場」
元J事務所所属アイドルを彷彿させるアイドルグループ。ローラースケートはエアー。原田優一が笑わせにかかっていて、もちろん観客は爆笑。

●ActSTONES「イミネーッショ・レイン坊」
悪党の原石たち6人組が歌うサンクチュアリ。 偽物の雨にうたれても。
こちらも。。以下略。衣装もダンスもかっこいいのに、歌詞が微妙なのが安定のるひま。

●新しい都のリーダーズ「キゾクブルー」
貴族よりも貴族ぶる4人組。 青い烏帽子被り貴族ブルー。
紅白出場グループとは関係ないはず。。多分。
加藤啓がいるのでコントパートがあり、そして相変わらずひどいクオリティ(褒め言葉)。
ゲストの平野良「大人の膝小僧が見られるのはここだけ」だそうな。意外にみんな小学生の制服とランドセルが似合っているのもよきよき♪

●ミュージカル『ナラジン』より「三種のジンギー」「ア・ホーリュー・ジ・ワー(あ、法隆寺は?)」
大人気ミュージカル『ナラジン』の出演者が集結。劇中歌を披露。
危ない、、Dには触れてはいけないと思うぞ。見つからないとよいね~。歌が上手いのでなおさら苦笑。

●THE ZEN「JI-AI(慈愛)」
噂のサンスクリット系アイドル。 禅の教えは「愛」。ただただ愛したい。
もう登場しただけで脱力しそうな雰囲気。
相葉裕樹、キャラがものすごく変~!怪しい宗教の人みたい。

相葉裕樹、『戦国鍋TV』を思い出したのは私だけではないはず。「ミュージックトゥナイト」のコーナーとかね。
松田岳、毎年第一部の芝居より第二部に命をかけているといわれていて、今年は更にステップアップしていた。狂気の沙汰で怖い~。
ROLLY、ギターを持って登場。細い!ぴったりと身体に張りつく革の衣装が似合う似合う。かっこいい♪


【余談】
今年はあまり寒くなくてよかった~。明治座は都営浅草線浜町駅からすぐだが、それでも冷えこんでいて風が強いと寒いから。
明治座は改装後だったようで客席の椅子が新しくなり、長座布団まで付いていてもともとよい座席だったのが更に快適になっていた。るひまのお祭り舞台は4時間越えの長時間公演なので嬉しい♪


【リンク】


長くなるので次の記事に続きます。→ 「『ながされ・る君へ~足利尊氏太変記~』画像とリンク」

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2023年大晦日のご挨拶です

2023-12-31 11:38:14 | ご挨拶
2023年令和5年も今日で終わろうとしていますね。
今年もいろいろありつつも、穏やかな大晦日を迎えることができました。
みなさまはどんな一年だったでしょうか?


私事ですが今年の6月に母が亡くなり、喪中につき新年のご挨拶を失礼させていただきます。
みなさまよいお年を迎えください。







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『フェイクスピア』ストーリーと感想

2023-12-24 09:30:45 | テレビ
WOWOWライブで2022年6月10日放送の舞台 NODA・MAP『フェイクスピア』を録画したものを観ました。

ストーリーと感想を備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。




【作・演出】
野田秀樹


【出演】
高橋一生
川平慈英
伊原剛志
前田敦子
村岡希美
白石加代子
野田秀樹
橋爪功


【ストーリー】
恐山のイタコを中心にシェイクスピア、サン・テグジュペリの世界へと展開していく。虚構と現実が混沌としながら行ったり来たりする。そこに真実はあるのか…。


【感想】
美術はシンプル。中央に後方が上がった板状のものが置かれており、そこにキャストが立っている。上手側、下手側には柱が数本立っている。
前衛書道の筆跡を思わせる黒い筋が見られる。

同じような柄の布を持った男性アンサンブルが下手側から上手側に走り抜け、飛行機を表したりする。野田秀樹お得意の布使いが今回もふんだんに観られた。
言葉遊びも健在だが、以前より随分と少なくなったと思う。

高橋一生が父親役で橋爪功が息子役を演じていて、時間によって大人だったり子供だったりする。
“箱”、“ことのは”がキーワード。
シェイクスピア、『星の王子様』、恐山のイタコが時間と虚構と現実の狭間をぐるぐると回り続ける。一見なんの脈絡もなく無関係に見えるものが、全部繋がり伏線はしっかりと回収される。
冒頭の「頭を下げろ!」と怒鳴る高橋一生、後半も「頭を下げろ!」と怒鳴る。それは旅客機のコクピットで制御不能に陥り、必死でコントロールをしようとするパイロットの姿と声だった。
記憶されている方も多いと思う。あの大惨事となった36年前(上演時)の飛行機事故、“日本航空123便墜落事故”がモチーフになっている。“言葉の一群”はノンフィクションであり、本物のボイスレコーダーの言葉なのだ。
冒頭に高橋一生が錆びた金属製の箱を持って立っている。これは飛行機のボイスレコーダーだ。そこには父(橋爪功)の“ことのは”が入っていた。生きた“ことのは”の一文、希望の一文が…。
「頭を下げろ!」

ラスト、橋爪功が箱を持ち独白する。後ろには霊のように浮かび上がる父(高橋一生)。そして静かに消えていく。
白石加代子のイタコに「父に合わせてくれてありがとう」と礼を言う橋爪功。イタコの白石加代子と橋爪功は同級生という設定だ。二人で空を見上げ「頭を上げろ!雲ひとつないいい天気だ!」と言う。

悲しみの果てに長い年月を経て辿り着いた希望の光。それはとても哀しく美しい。涙が流れた…。

カーテンコール、鳴りやまない拍手とスタンディングオベーションが続いていた。


【公演後のアフタートーク】
野田秀樹、高橋一生、橋爪功、白石加代子の四人でアフタートークを繰り広げる。

Q:好きなシーンは?
A:高橋一生「冒頭のシーン」、橋爪功「高橋一生のやりたい放題のシーン」

高橋一生「白石加代子の存在感がすごい!いつも新鮮」
白石加代子「あら~もっと存在感を消さなくちゃね~」
橋爪功「高橋一生が好き♡稽古初日に告白した」
高橋一生「何日か後に僕も好きです♡と言いました」
高橋一生「終盤の“言葉の一群”が難易度が高かった。いつまで経っても台詞が入らなかった」

Q:演劇の未来について
A:白石加代子「コロナで辛い」、高橋一生「観測、観察することで何かが生まれてくる。劇場でしかあり得ないと思う」、橋爪功「野田秀樹の稀有なものを繋げていって欲しい」、野田秀樹「批評する力が小さくなっていると思う」

Q:言葉が残ることについて
A:野田秀樹「無記名の言葉が膨大にあるのは大きな問題。YouTubeなどにオカルトや興味本位でやっていいものではない」 


【余談】
今回の舞台もチケットが取れなかったのだった。NODA・MAPは本当にチケットが取れない~!
録画したら早めに観たほうがいいのだが、上演時間が長い舞台は時間をとるのが自宅だと難しい。なにかと雑事やら家事やらの邪魔が入るし。
劇場に出かけたほうが時間を気にしなくていいのだ。このあたりがもにょもにょするな~。

そういえば高橋一生と橋爪功はドラマでも親子役で共演していたな~。橋爪功と高橋一生ラブラブ♡?








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『向こうの果て』ストーリーと感想

2023-11-02 14:13:42 | テレビ
WOWOWライブで放送の舞台『向こうの果て』を録画したものを観ました。

ストーリーと感想を備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。






【脚本】
竹田新


【演出】
山野海


【出演】
塚原大助
浜谷康幸
佐藤正和
泉知束
かなやす慶行
渡邊聡
44北川
関口アナン
皆川暢二
小泉今日子


【演奏】
小山豊(津軽三味線小山流三代目)


【ストーリー】
昭和60年。小さなアパートの一室で殺人事件が起こる。池松律子(小泉今日子)は同居人の君塚公平(塚原大助)を刺殺し、証拠隠滅のためにアパートに放火した罪で逮捕される。
裁判が進むにつれ、2人の過去が明らかになっていく。律子を知る男たちの証言から、夜叉のような女、売春婦のような女、嘘つきな女、ぜいたくな女、残酷な女、柔らかな女……と、律子のさまざまな顔が見えてくる。


【感想】
舞台は黒い背景。「ザーザー」という雑音のような雨音が響く。下手側に木製のテーブルと椅子が置かれている。
三味線が悲しげな音を奏でている。

青森の田舎で貧困と妬みと嫉妬で、できあがった人たち。彼らはうんざりするような、人の心の醜さをこれでもか!というほど見せつけてくる。その醜さが哀しく、切ない。真実がそこにある…。

律子の生い立ちは悲惨だ…。実父からの暴力に耐え、両親の死後、引き取ってくれた独身の叔父と15歳で関係し妊娠、堕胎。18歳で大手メーカーの御曹司と結婚、ようやく幸せをつかむことができたと思った矢先、夫は傾きかけた会社の債権者の娘と不倫。律子も夜遊びを繰り返し離婚する。
その後、幼馴染の売れない作家の君塚公平と同棲する。実質ヒモの公平に暴力を振るう律子。そして殺害してしまうのだ。
いつも律子は相手が望むだろうことを本能的に感じとり、それを実行してしまう。結果がどうであろうとだ。それが律子の生きていくための術だったから。
律子の心は一体どこにあるのだろう? 空っぽな律子の心はふわふわと空中浮遊をしているようだ。

土地の呪いのような風習、経済的な貧困と心の貧困はほぼ同じ。悲しみ、妬み、憎しみからは何も生まれない。生まれるのは不幸の連鎖だ。
「親ガチャ」親の負の遺産を受け継ぎ、みんなでよってたかって追い込み、全てを背負わされた律子の心は死んでしまった。

律子を取り調べている検事は、律子と結婚で苦労した姉とを重ね合わせ混乱する。検事としての職務を正しく遂行できず、職を辞すことになる。

公平が最後に書いた小説は「太陽のような女」。公平と律子と子供たち4人の幸せな暮らしを描いた小説だ。
律子を本当の世界に戻したかった公平。律子の人生を狂わせてしまったのは公平だからだ。
律子を父親の暴力から守ろうとして、父親を殺そうと持ちかけたのは公平だった…。

「殺して!」「時間を止めて!」と公平に懇願し、包丁を手渡す律子。だが誤って律子が公平を刺してしまう。流れる血は公平が生きている証。
マッチで火をつける公平。「おまえは生きてくれ!」と言い残して。
これが真実だった…。
鳴り響く三味線の音。

ラスト、下手側の天井から光芒のような照明があたる。
みっともなく、哀しく、美しい作品。


【余談】
以前に観たモダンスイマーズ『デンキ島~松田リカ篇』を思い出した。地方の風習や習慣、抗いがたい現実。窒息しそうな閉塞感や湿度の高さが同じように感じられたからだ。
映像、舞台、小説などの中にも、同じようなものが脈々と流れていると感じる。いいとか悪いとか、上とか下とかではない、なにかしらがそこにあると思う。

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『阿修羅のごとく』ストーリーと感想

2023-10-08 09:00:32 | テレビ
WOWOWライブで放送された舞台『阿修羅のごとく』を録画したものを観ました。

ストーリーと感想を備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。







【作】
向田邦子


【脚色】
倉持裕


【演出】
木野花


【出演】
小泉今日子
小林聡美
安藤玉恵
夏帆
岩井秀人
山崎一


【ストーリー】
とある日、三女・滝子(安藤玉恵)の話したいことがあるという連絡により、四姉妹が集まることに。
数日前、70歳を迎える父親が愛人らしき人物といるところを目撃した滝子は、興信所に父の身辺調査を依頼したのだ。
四人は母親に知られることなく、父に浮気を解消してもらうための作戦を練る。そんな姉妹だが、実は自身の生活にもそれぞれ悩みを抱えていた。
長女・綱子(小泉今日子)は仕事先の妻子ある男性と不倫関係、次女・巻子(小林聡美)は夫の浮気の予感にもやもやした日々を過ごし、三女・滝子(安藤玉恵)はその潔癖さで男性との出会いもなく、四女・咲子(夏帆)はボクサーの彼との不安定な生活に疲弊していた。
ままならない現実にあたふたと、それぞれの業を抱えて正直に生きようとする四姉妹の闘いの日々は続く。阿修羅のごとく…。



【感想】
美術はとてもシンプル。客席が四方に設えられたセンターステージの素舞台。
黒子がテーブルや椅子、電話などを運びこむところから物語は始まる。全体的に暗く色味のない舞台上で、公衆電話の赤色がひと際目立つ。
暗転で転換されるとき、静かな雅楽、太鼓、三味線が響く。フラメンコの激しい楽曲も流れる。この音楽の使い方がとても印象的だった。

ストーリーは原作に忠実だったが、後半の四女の件がカットされていて、母親の葬儀までだった。後半をばっさりカットしたのはどういった意図なのだろう?

キャスト全員が実力のある方々なので「ん??」と感じることなく、ノンストレスで安心して作品を楽しめる。
長女・綱子の妙に色っぽい未亡人、次女・巻子の良妻賢母、三女・滝子のお堅い潔癖さ、四女・咲子の恋愛第一主義と献身。もうそのままなのではないか?と思うほどはまっていた。
次女・巻子の夫の言動にいらっとするのは変わらないな~。いい悪いではなく、男の本音にいらっとするからだ。

ラスト、四姉妹が明るく雑談しながら母親の葬儀に参列するため、喪服に着替えている。現実はなにも変わっていないし、問題も解決していないだろう。
それでも、彼女たちはそれぞれの立場で、今日も明日も踏ん張って生きていくのだ。
舞台をかすかな涼風が流れ、カタルシスを連れてきてくれた。


【余談】
『阿修羅のごとく』は原作も既読で蔵書にもある作品。
NHKのドラマ版(1979-1980 和田勉・高橋康夫)、映画版(2003 森田芳光)も観ていたし、今はないセゾン劇場で上演された舞台も観に行ったことがある。
何度観てもいいものはいい!と感じさせてくれる作品だと思う。

向田邦子の作品はどれも人の業が描かれていて、ときどきしんどくなることがある。メンタルが下がり気味のときは近寄らないことにしている。引っ張られるからだ。
それでも嫌いではないので、読むし観る。そこに人という生きものの真実があると思うから。
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