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『キネマと恋人』ストーリーと感想

2020-07-25 10:57:51 | テレビ
WOWOWライブで2020.3.21(土)放送の舞台『キネマと恋人』を録画したものを観ました。
感想を備忘録として書いていきます。

※ネタばれがありますのでご注意ください。
※敬称は省略させていただきます。





【番組の詳細】
妻夫木聡、緒川たまき出演。ウディ・アレンの『カイロの紫のバラ』にインスパイアされたKERA流ファンタジックコメディ。
各演劇賞を受賞した傑作舞台が蘇る。


【ストーリー】
1936年(昭和11年)の秋。東京から遠く離れた小さな島の小さな港町にたった一つだけある小さな映画館「梟島キネマ」で、常連客の森口ハルコ(緒川たまき)は時間があれば客席で映画を見ることが唯一の楽しみだった。映画『月之輪半次郎捕物帖』という娯楽時代劇に登場する間坂寅蔵を演じる俳優、高木高助(妻夫木聡)がハルコのお気に入り。
そんな中、映画を楽しんでいるハルコの目の前に突然、銀幕の向こうにいた間坂寅蔵(妻夫木・2役)が現われる。映画の中からハルコを見ていたという寅蔵は、ハルコの手を引き2人で映画館を飛び出していく。寅蔵がいなくなり、“映画の中”や映画関係者は大混乱に。
時を同じくして撮影で梟島を訪れていた高助は、知らせを受け、自らが演じる寅蔵の行方を捜し始める。そしてハルコと出会った高助も寅蔵と同様、ハルコに一目惚れ。虚構と現実、憧れと生活のはざまで揺れ動くハルコの恋の行方は…?


【感想】
KERAお得意の群像劇。不況の風が吹き荒れる1930年代の小さな梟島が舞台。ちょっとモダンスイマーズの『デンキ島』を思い出す。これは現代が舞台でもっときりきりとしてひりつく感じだったが。
市井の人々の暮らしは苦しく、哀しく辛いことが多い。ハルコの夫は乱暴で粗雑、暴力で自分の妻を従わせている最低なDV男だ。なんで逃げ出さないのかと観ていてイライラし、DV夫には不快感しかない。
ハルコの辛い現実逃避は映画だけ。映画館で映画を観ているときだけ、その世界に浸っていられる。そして上映が終われば、また変わらない辛い現実に戻っていくのだ。
これは昔も今も変わらない。だから、胸に迫るものがあるのだろう。

銀幕から飛び出してきた寅造、俳優の高助に思いもかけず好意を寄せられ、戸惑いながらも頬を染めるハルコ。寅造に別れを告げ、夫も捨てて古びた革のトランクひとつを持って高助と東京へ行く…はずだったハルコ。
待ち合わせの映画館で待つハルコに、彼らは先の連絡船で東京に帰ったと告げる支配人。妹と二人寄り添い、笑い泣きしながら映画を観るハルコ。
彼女たちの日常は、この小さな島で明日も明後日も続いていくのだ。どんなに辛い現実が待っていても、ここで生きていくしかない。
人の世の哀しさを笑いを散りばめた素敵な作品だと思う。

KERA作品ならではのプロジェクションマッピングは素晴らしく、場面転換も俳優陣がさりげなく行い、一人何役もこなし早替えだらけで、切っ掛けだらけの長時間舞台は演者はさぞ大変だろうな…と推察。

ハルコ役の緒川たまき(KERAの奥様)はとても可愛らしく魅力的。寅造と高助の二役の妻夫木聡は、若いときに売れた甘い容姿の人気俳優なのに、舞台に立っていても全然違和感がない。それどころか、とても魅力的に二役を演じきっていた。
ときどきいらっしゃるのだ…。舞台にきちんと立てていない映像畑の方が。観ていてもにょもにょした気分になるので困る。

ほかの方々も誰一人として浮いたり異質な感じがなく、群像劇にありがちな散漫とした印象を受けなかった。こういう作品はあまりない。同じKERA作品でも『祈りと怪物』は散漫だった印象しかない。


【余談】
初演時も再演時のときも気にはなっていたけど、どうしようかな~と迷っているうちに終演してしまった舞台。WOWOWライブで放送してくれて嬉しかった♪
観終わってから、この世界観、空気感の中にいたかったな…と思った。やっぱり舞台は生で直に劇場で観るのが一番だと再認識。
観劇は何気に、お金もかかるし〈チケット代+交通費+飲食費+パンフレットなどのグッズ代〉、時間も体力、集中力も必要なエンターテインメント。特にKERAの作品は3時間超えは普通なので尚更だし。
某有名俳優さんが「舞台ってお客さんにとって苦行だよね」みたいなことを言ってらして、苦笑しながら頷いたことを思い出した。俳優も観客もM気質が必要ということらしい。

ここ数年は観劇回数が一時期より格段に減ってきていて、また、おもしろそうな作品があればチケットをとって行きたいな~と思う。まめにぴあやイープラスをチェックしないとだけどね。


【リンク】



















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