NHK ミッドナイトステージ館劇場中継『続々オールド・バンチ~カルメン戦場に帰る~』を観ました。
ストーリーと感想を備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。
【作】
山元清多
【演出】
流山児祥
【音楽】
林光
【美術】
妹尾河童
【出演】
戌井市郎、瓜生正美、岩淵達治、中村哮夫、本多一夫、肝付兼太、ふじたあさや、二瓶鮫一 ほか
【公演】
2009年2月 本多劇場
【ストーリー】
昭和最後の日、昭和天皇崩御の朝から物語が始まる。戦後、「男」をやっているのが嫌になり“椿”というゲイバーを始め、「女」として生きてきた、「おっかさん」こと「ローズ」。時代は流れ今は、ゲイバー“椿”は椿興行という会社がショーパブにしている。
昭和天皇崩御の日に時を同じくしてローズが亡くなり、葬式の準備をしているところに、かつての仲間たちが集まってくる。実はローズが甥夫婦に頼んで一芝居打ち、自分が死んだことにしただけだった。
かつての仲間たち、ローズの息子(実は嘘で他人)とその秘書、現在のショーパブの踊り子たち、彼らの思いともくろみが次々と現れてくる。
そして、昭和の葬式、戦後の葬式、ゲイバー“椿”の葬式、彼らの長かった戦後がようやく終わる時がきた。
【感想】
演劇界最長老93歳にして今も現役の演出家・戌井市郎をはじめ、演劇界のそうそうたるキャリアをお持ちの平均年齢80歳の方々による、3年限定の「パラダイス一座」の最終公演。
皆さん演劇界では立派なキャリアをお持ちだが、本業は俳優以外の方々ばかり。細かい技術的なことや台詞を噛んだりもあったりする。でも、そんなことはどうでもよくなるほど、一人一人の人として舞台に立っている様に感動させられた。
ラストシーンでかつての戦地であったビルマの砂浜に立ち、彼らは声を合わせてこう叫ぶ。「ただいま~!帰ってきたわよ~!」と。
照明がフェードアウトしていき、機関銃の炸裂音とオレンジ色の閃光が重なっていく。戦争体験の欠片も持たない自分でさえ、胸に迫るシーンだった。
戦後は彼らにとって、終わらない、終わらせられない、あまりにも大きく残酷なことだったのだろう…。
【余談】
「パラダイス一座」の第一回公演も同じミッドナイトステージ館で観たのだけど、その時に比べて完成度は高くなっていたように思う。