2017年2月4日 聖教新聞
2017年度から、ついに「給付型奨学金」が創設されることになりました。学ぶ意欲のある子どもたちが経済的な理由によって進学を諦めることなく、教育の機会が得られる。給付型奨学金は、その環境づくりにつながります。貧困の連鎖を防ぐ施策として期待したいと思います。
ただ、子どもの貧困を生み出してしまう問題は、まだ他にもあります。例えば、「最後のセーフティーネット」ともいわれる生活保護を受給している家庭の子どもが、大学に進学できないという制度上の問題があります。
昔は大学に行くことはある種、贅沢なことでしたので、「税金を使ってそこまでは」という考えがあったのだと思います。しかし、今の時代は安定した仕事に就き、貧困の連鎖から抜け出すために、大学進学は有効な道筋の一つとなるものです。にもかかわらず、貧困の再生産を強化するような制度のバグ(欠陥)が依然としてあることは問題です。
実際には、生活保護家庭の子どもが大学に進学しようとした場合、同じ住居に住んでいても、子どもを世帯から外す「世帯分離」をすることによって大学に進学することはできます。
しかし、世帯分離をすると生活保護費は減額されてしまうため、子どもはその分をアルバイト等で稼がなければならなくなります。そして学費や生活費のために勉強する時間を削らざるを得ないのです。
驚いたことに2005年までは、生活保護の高校生たちの授業料支給もしていなかったのです。私たちの社会は、つい最近まで、貧困の再生産にこれほど無関心だったのですが、こうした制度のバグは早急に修正していくべきでしょう。
その他にも、たとえば高等学校では、生徒が妊娠をした場合に退学させるというルールがあります。十分な教育投資がなされずに学校を辞めてしまう生徒の人生がどうなるのかに、もっと想像力を働かせるべきだと思います。
また、ランドセルや絵の具箱といった教育関連費用にお金が掛かり過ぎること、あるいは児童扶養手当が毎月ではなく4カ月に一度のまとめ払いであることなど、子どもの貧困を防ぐために改善できることは、まだまだあります。
ぜひ、福祉政党の公明党には、このようなところにも改善の手を入れてもらいながら、より一層取り組んでほしいと思います。
(認定NPO法人フローレンス代表理事)
知らなかった!
昔のシステムが、現実に即して変わっていないからなのか?