3月ダイヤ改正「あの」名物列車は生き残るか 変わった経路の列車や長距離普通の行方は
2月20日月曜日、JR時刻表とJTB時刻表の3月号が発売された。いわゆる「ダイヤ改正号」と呼ばれるもので、3月4日に行われるJRグループのダイヤ改正後の時刻が掲載されている。
ダイヤ改正後の新幹線や特急列車の時刻は、1月に発売された2月号の時刻表に掲載されていたため、ほとんどの利用者にとって「真新しい情報」はない。さらに、今年のダイヤ改正はここ数年のように北海道新幹線や北陸新幹線の開業、夜行列車の廃止といった大きなトピックもなく、鉄道ファンが見ても「おおっ!」となることは少ない。なので、今回のダイヤ改正号は、鉄道ファンの間でも大きな話題となることはないだろう。
あの列車は改正を生き残ったか?
だが、ヒマな時には時刻表を開いて、長距離を走る普通列車をリストアップして、長い順にランキングをつけてみたり、変な区間を走る列車を見つけてニヤニヤしたり……そんな、時刻表好きの中でもとりわけ嗜好性がおかしい筆者にとっては、普通列車の時刻が明らかになるダイヤ改正号の時刻表は、どんなに地味と言われるようなダイヤ改正でも、楽しくて仕方のないものだ。
そこで今回は、ダイヤ改正号の時刻表と、ダイヤ改正前の時刻表を比較し、「変わったルートを通るあの列車は生き残ったのか?」「新しい長距離鈍行列車は誕生したのか?」などといったことを紹介していきたい。
内容としては、プロ野球ファンが居酒屋の席で「ヤクルトスワローズのこれまでの助っ人外国人選手について語ろう」というときにパリデス(1992年のみ在籍)の話で大いに盛り上がる、というようなマニアックなものだ。そのつもりで読んでいただけたら幸いである。
2016年春のダイヤ改正で誕生した、岡山16時17分発の下関行普通列車。岡山から山陽本線をひたすら西に進み、終点の下関には23時50分に到着するこの列車の走行距離は384.7キロメートルもある。北海道の根室本線を走る、滝川発釧路行き普通列車の308.4キロメートルを上回り、日本一長距離を走る普通列車として一部の鉄道ファンから注目を集めた。
あれから1年。今年3月号の山陽本線のページを見ると……残念なことに運転区間が糸崎(広島県)−下関間に縮小。走行距離は87.5キロメートル短くなり、297.2キロメートルになってしまった。
山陽本線は2016年のダイヤ改正で、広島エリアに土休日ダイヤを本格的に導入したばかり。岡山地区のダイヤ(平日・土休日がほぼ共通)と広島地区のダイヤ(平日・土休日のダイヤが異なる)を組み合わせた結果として偶然誕生した長距離列車が、今年のダイヤ改正ではうまく組み合わせることができず、運転区間が縮小となったのだろう。
岡山発下関行き普通列車の区間短縮で、北海道の根室本線・滝川発釧路行きが再び日本一となった。だが、こちらは昨年夏の台風被害で東鹿越−新得間が不通となっているため、時刻表上には存在するものの、現在は乗り通すことができない。このため、3月4日以降は「時刻表上の」日本一長距離を走る普通列車は滝川発釧路行き、「実際に乗ることができる」日本一長距離を走る普通列車は糸崎発下関行きとなりそうだ。
北海道の石北本線を走る、上川6時23分発の網走行普通列車も、走行距離189.1キロとなかなかの距離。しかも、途中の遠軽で1時間35分も停車するという、日本一長時間停車する列車として、ごく一部のファンが注目する列車だった。だが、3月4日からは上川発遠軽行きと遠軽発網走行きの2つの列車に分けられ、長時間停車は消滅してしまう。
大きな変化はなく「新顔」も
そのほかの長距離列車については大きな変化はほとんどなく、宗谷本線の稚内発旭川行き普通列車(名寄から快速)が、稚内発名寄行きと名寄発旭川行きの普通列車に分けられたぐらい。東能代(秋田県)と弘前(青森県)を結ぶ五能線全線を直通する普通列車や、豊橋(愛知県)と岡谷(長野県)を結ぶ飯田線全線を直通する普通列車も現行の本数を維持する。
また、「上野東京ライン」で最長距離を走る、土休日のみ運転の黒磯発熱海行きや、関西エリアの新快速で最長距離となる敦賀発播州赤穂行きも、現在と変わらない本数で運転されるほか、東海道本線の静岡発岐阜行き、鹿児島中央と宮崎県の延岡を結ぶ普通列車、香川県の高松と愛媛県の松山を結ぶ普通列車なども引き続き運転されることがわかった。
一方、中央本線には、東京都の高尾を14時2分に出発、甲府、松本を経由して、長野に18時53分に到着するという、走行距離245キロメートルの新たな長距離列車が誕生する。
では、変わったルートを通る列車たちはどうなったか。JR九州では、宮崎を出て日豊本線を鹿児島方面に進み、吉都線・肥薩線をグルリと回って隼人へ向かう列車や、田川伊田(福岡県)から日田彦山線・久大本線を通って大分へ向かう列車は残った。北海道の倶知安と苫小牧を結ぶ、日本で唯一のディーゼルカーと電車を連結して運転する列車も残った。
だが残念なことに、JR東日本では変わり種の列車がいくつか廃止される。高崎(群馬県)から上越線、両毛線、東北本線を経由して黒磯(栃木県)までを結んでいた列車は、時刻と運転区間を変更。黒磯ではなく、手前の宇都宮止まりとなってしまった。
岡谷(長野県)から中央本線の辰野支線を経由して松本へ、さらに大糸線に入り南小谷まで運転されていた普通列車は、岡谷−信濃大町間の列車と、信濃大町−南小谷間の2つの列車に分けられてしまった。111.1キロを3時間47分かけてのんびりと走る、味わいのあるダイヤだけに残念だ。もっとも、ダイヤが見直されたことで南小谷到着は現在より31分も早くなるので、一般の利用者にとっては嬉しい話なのだが……。
このほか、IGRいわて銀河鉄道・青い森鉄道・JR東日本八戸線の3社にまたがって運転されていた小鳥谷(こずや)発鮫行きの普通列車は青森行きに変更されてしまい、このエリアでの3社直通列車はなくなってしまった。3つの会社にまたがるため運賃は割高で、運転距離は59.9キロと短いものの全区間を乗り通すと1570円もかかる、ある意味では贅沢な列車だけに残念だ。
「味のある列車」を探して
ダイヤ改正は、各路線の利用状況に合わせて、鉄道会社が車両の運用効率をよくするために行うもの。長距離列車は、遠くで起こった事故や悪天候による徐行運転などで列車が遅れた場合、幅広い地域にダイヤの乱れを引き起こす原因となるので、なくなるのは仕方のないことだ。変わった区間を走る列車も、ポイントの切り替えなどは複雑になる。年々味のある列車が減って行くのもやむを得ない。
そんな中でも、今回の高尾発長野行きのように、時代に逆行するような長距離列車が誕生することもある。そういう列車を発見してニヤニヤするのが、時刻表ファンにとってのダイヤ改正号なのだ。
そんな楽しみ方をするのは、もしかしたら筆者だけなのかもしれないが……。
全国の長距離普通列車、ダイヤ改正でどう変わる
時刻表ファンだったのに、もう数十年、時刻表を買っていないなぁ。
時刻表改正号…久しぶりに買ってみるか。