〈駒崎弘樹の未来をつくる〉第61回 児童虐待をなくす 2019年2月2日
先週、千葉県野田市で10歳の女の子が虐待死するという大変悲しい事件の報道がありました。この事件の前、児童相談所は市から連絡を受け、おととし11月の段階で女の子を一時保護していましたが、翌月には一時保護が解除され、その後、事件に至ったのです。
この報道を知った時、昨年、東京都目黒区で5歳の女児が虐待死した事件を思い出しました。あれだけ世間が注目した事件だったにもかかわらず、そこから私たちは何も学んでいないと感じて、やるせない思いでいっぱいになりました。
ただ、折しも児童虐待が後を絶たないことを背景に、この通常国会で児童福祉法改正案が提出されました。そこで議論されている点の一つのポイントは、児童相談所に常勤弁護士の配置を義務付けることです。子どもを守るための一時保護を児童相談所が躊躇してしまうのは、保護者から訴えられるリスクを考えてしまうからです。そこで児相が法的権限をしっかりと行使し子どもを守っていくためにも、法律の専門的な知識を有する弁護士から日常的にアドバイスを得られる形が必要となります。この点はぜひ義務化を実現させていってほしいです。
また、専門性という点では、児相職員の専門性の養成も必要です。児相の職員は自治体の職員が異動によって就くため専門性があまり蓄積されません。社会福祉士という資格を持つ職員もいますが、これは比較的高齢者に関しての専門性が強いため、子どもに特化した部分は不十分と思われます。
加えて、現在のところ人口が多い中核都市については、児童相談所の設置が努力義務になっていますが、私は義務化が必要だと考えます。
一方で児童虐待防止に向けては、児相が関わる前の段階で食い止めることも必要となります。ここは、ショートステイや病児保育といった環境を整備するなど、市区町村がどこまで子どもファーストな施策を行えるかにかかってきます。
児童福祉法の改正と市区町村の施策、そのいずれもが子どもの命を守ることにつながる方向に進むことに強く期待しています。
(認定NPO法人フローレンス代表理事)
酷すぎる児童虐待。
どうしてこんな時代、状況になってしまったのか。
自分に何かできることはないものか。