私の音楽 & オーディオ遍歴

お気に入りアーティストや出会った音楽、使用しているオーディオ機器を紹介します(本棚8)。

「朝崎郁恵」

2010年04月15日 | ヴォーカル
 NHK-BSで「新日本風土記」という番組を見たとき、そのテーマ音楽に惹かれました。
 里山の田んぼに向かう百姓夫婦の後ろ姿・・・その背景に流れる歌声。
 「ハッ」としました。体を何かが突き抜けたよう。
 なんと言っているのか歌詞は聞き取れません(方言なのでしょう)が、まぎれもなく日本の歌。
 裏声を多用した、荒削りで力強く、そして哀しい歌声。
 民謡のようにも、古老の昔語りにも、子守歌にも聞こえます。

 そして、私の目には涙が溢れていることに気づきました。
 「悲しいから泣く」のではありません。
 体から沸き上がる感情が抑えられず、止めどなく涙が流れるのです。

 こんな経験、今まであったでしょうか?

 調べてみると、その声の主は朝崎郁恵さんであることがわかりました。
 私のお気に入りのピアニスト、ウォン・ウィン・ツァンさんも尊敬してやまない唄者(ボーカリスト)。
 元ちとせで知られるようになった奄美島唄の第一人者だそうです。
 1935年生まれですから、御年75歳になります。

 手に入るCDをまとめ買いして、その声に浸りました。
 車のCDプレーヤーで聴いていると、涙で前が見えなくなり困りました。

 彼女の声は日本人のDNAに刻まれている琴線にすうっと触れてきます。
 上手いとか下手とかのレベルではありません。
 祖先の魂の声が時空を超え、口寄せの如く朝崎さんを通じて聞こえてきたような気がしました。

 「生きることはつらく哀しい、でも生きることは楽しい、命をつなぐことは喜びに満ちあふれている・・・日本人はこうして暮らしてきたんだよ」