10年以上前から、たまに足が向く地元のオーディオ・ショップがあります。
「エレックス」という名前です。
新品より中古がメインで、スピーカー中心にオリジナル商品も自作している、マニアックなお店。
数ヶ月前に店舗移転のハガキが来ていたのですが、本日ようやくその気になり覗いてみました。
店舗移転の経緯を尋ねると、前オーナーが亡くなったためとのこと。
以前は高層アパートの1階でしたが、現在は大きなプレハブ造りでガレージ・ショップという雰囲気です。
戸を開けて中に入ると、おびただしい数のオーディオ機器が雑然と並んでいます。
中央には大きな木製ホーンが重なるスピーカーシステムが鎮座していました。
あれ? 嗜好が変わったのかな?
以前はアルミ無垢のスリムなスピーカーがメインで「抜けのよい音」を目指していると前オーナーが熱く語ってくれたものでした。
その昔のスピーカーは端によけられ、なんと値札がついて売りに出されており、一抹の寂しさを感じました。
さて、巨大なホーンを従えたスピーカーを試聴させてもらいました。
うん、すごく素直でストレートな音。
こもるでもなく、大げさに広げるでもなく、聴いていて飽きない疲れない音。
特徴を解説してもらいました。
まず、各スピーカーユニットの位置に注目。
ウーファー、スコーカー、ツィーターは微妙に前後にずれて配置されています。
音の位相がずれてまとまりがなくなりそうなものですが、これを最新技術が支えているとのこと。
デジタル・チャンネル・デバイダーという機器が、位相を調節してピタリと合わせてくれるらしいのです。
昔のアナログ機器の時代には不可能だったと説明されました。
それから ホーン型のメリット。
「音圧を強くするには大きな口径が必要だが、口径が大きくなるほどコーン部の強度が低下する。強度を保ちつつ音圧を強くするには、口径をそこそこにしてホーンで増幅という形式が有利に働く。」
とのこと。
最近、ネット上で見つけたJBLの古いスピーカーが気になっています。
その型番は「4425」。1985年発売で今は廃番となり、4428→ 4429と進化して現在に至ります。
4425はスタジオモニターの位置づけで、30cmのウーファーとバイラジアル・ホーンを備えたシステム。
「音は荒いけど音圧で勝負」タイプで、ジャズがジャズらしく聞こえるJBLの名作と評され、今でも愛好家がたくさんいます。
一方、クラシック系の弦楽器を繊細に表現するのは苦手です。
久しぶりにお店へ行く気持ちになったのは、25年前のスピーカーは買いか?という疑問に答えが欲しかったからかもしれません。
現オーナーに意見を聞いてみました。
すると想定外の答えが返ってきました。
レコードを再生する目的がメインのスピーカーと、デジタル録音時代のスピーカーは、別のスピーカーと考えた方がよい、とのこと。以下に要点を記します;
レコード時代の録音は、低音部は弱く、高音部は強くが原則だった。
これは低音をないがしろにしているわけではなく、低音部の情報量を多くするとレコードの溝を掘るときに深く蛇行し、再生時に針が滑ってトレースが難しくなると云う技術上の理由から。
なので、低音部は抑えめにして録音し、再生するときに「フォノイコライザー」で増幅・調整してスピーカーに信号を送る羽目になった。
当時のスピーカーは、1000Hz以上の中高音部、つまり情報が詰まっているところをキレイに再生できるよう作られた。
なぜって、低音部にお金をかけても、元々情報量が少ないからよい音にはなり得ない。
実際にスピーカーの駆動力に直結する裏面の磁石は、ウーファーよりスコーカーの方が強力なものが使用された。
CD時代となり、そのような機器の欠点がなくなると、すべての周波数をフラットに録音・再生できるようになった。その時代のスピーカーは、低音部も手抜きがされないようになった。
よく「レコードの方が音が柔らかく豊かだった、CDはなぜあんな硬い音がするんだ。」という声を耳にするが、あれは情報量の少ないぼやけた低音部に耳が慣れてしまったからだ。
と、こんな解説でした。
だから昔のスピーカーにこだわって中古品を買うよりは、近年の技術を詰め込んで開発された新しいスピーカーの方がよいでしょう、とアドバイスされました。
御意!
他にもスピーカー関係の蘊蓄を聴いてきました;
■ スピーカーに箱は要らない。
スピーカーのコーンは電圧で前後に振動して音を出す仕組みだが、一番ストレスなく自由に動けるのは前後の空気圧が同じ時。
しかし、箱に取り付けると内圧がどうしても高くなるので、前に動きやすいが後ろに戻りにくいという欠点を抱えてしまう。なので、箱をなくした、板にスピーカーユニットを取り付けるだけの方がよい音が出る。
さらには、スピーカーユニットの裏面には当然ながら金具と磁石がついており、これも前後の空気圧に差を作ることになりコーンの振動にとっては邪魔になる。
この欠点を解決したのが「シーメンス社の鉄仮面」という愛称で知られるスピーカーユニット。前面についている金具は保護のためではなく、前後の空気圧を均等にするための装備。
■ ユニットを複数並べると位相の関係で高音域が出なくなる
複数(3つ以上)のウーファーを並べているトールボーイ型スピーカーを見かけるが、低音域は周波数が低く波長が長いので同調してパワーアップする一方で、高音域は周波数が高く波長が短いので同調しにくくお互いに打ち消し合ってしまう傾向がある。なので性能のよいツィーターが必要となる。
このようなお話を、珈琲をすすりながら、音楽を聴きながら拝聴し、楽しい午後となりました。
昔のオリジナルスピーカーのスカッと抜けのよい音もよかったなあ、買っちゃおうかなあ・・・。
「エレックス」という名前です。
新品より中古がメインで、スピーカー中心にオリジナル商品も自作している、マニアックなお店。
数ヶ月前に店舗移転のハガキが来ていたのですが、本日ようやくその気になり覗いてみました。
店舗移転の経緯を尋ねると、前オーナーが亡くなったためとのこと。
以前は高層アパートの1階でしたが、現在は大きなプレハブ造りでガレージ・ショップという雰囲気です。
戸を開けて中に入ると、おびただしい数のオーディオ機器が雑然と並んでいます。
中央には大きな木製ホーンが重なるスピーカーシステムが鎮座していました。
あれ? 嗜好が変わったのかな?
以前はアルミ無垢のスリムなスピーカーがメインで「抜けのよい音」を目指していると前オーナーが熱く語ってくれたものでした。
その昔のスピーカーは端によけられ、なんと値札がついて売りに出されており、一抹の寂しさを感じました。
さて、巨大なホーンを従えたスピーカーを試聴させてもらいました。
うん、すごく素直でストレートな音。
こもるでもなく、大げさに広げるでもなく、聴いていて飽きない疲れない音。
特徴を解説してもらいました。
まず、各スピーカーユニットの位置に注目。
ウーファー、スコーカー、ツィーターは微妙に前後にずれて配置されています。
音の位相がずれてまとまりがなくなりそうなものですが、これを最新技術が支えているとのこと。
デジタル・チャンネル・デバイダーという機器が、位相を調節してピタリと合わせてくれるらしいのです。
昔のアナログ機器の時代には不可能だったと説明されました。
それから ホーン型のメリット。
「音圧を強くするには大きな口径が必要だが、口径が大きくなるほどコーン部の強度が低下する。強度を保ちつつ音圧を強くするには、口径をそこそこにしてホーンで増幅という形式が有利に働く。」
とのこと。
最近、ネット上で見つけたJBLの古いスピーカーが気になっています。
その型番は「4425」。1985年発売で今は廃番となり、4428→ 4429と進化して現在に至ります。
4425はスタジオモニターの位置づけで、30cmのウーファーとバイラジアル・ホーンを備えたシステム。
「音は荒いけど音圧で勝負」タイプで、ジャズがジャズらしく聞こえるJBLの名作と評され、今でも愛好家がたくさんいます。
一方、クラシック系の弦楽器を繊細に表現するのは苦手です。
久しぶりにお店へ行く気持ちになったのは、25年前のスピーカーは買いか?という疑問に答えが欲しかったからかもしれません。
現オーナーに意見を聞いてみました。
すると想定外の答えが返ってきました。
レコードを再生する目的がメインのスピーカーと、デジタル録音時代のスピーカーは、別のスピーカーと考えた方がよい、とのこと。以下に要点を記します;
レコード時代の録音は、低音部は弱く、高音部は強くが原則だった。
これは低音をないがしろにしているわけではなく、低音部の情報量を多くするとレコードの溝を掘るときに深く蛇行し、再生時に針が滑ってトレースが難しくなると云う技術上の理由から。
なので、低音部は抑えめにして録音し、再生するときに「フォノイコライザー」で増幅・調整してスピーカーに信号を送る羽目になった。
当時のスピーカーは、1000Hz以上の中高音部、つまり情報が詰まっているところをキレイに再生できるよう作られた。
なぜって、低音部にお金をかけても、元々情報量が少ないからよい音にはなり得ない。
実際にスピーカーの駆動力に直結する裏面の磁石は、ウーファーよりスコーカーの方が強力なものが使用された。
CD時代となり、そのような機器の欠点がなくなると、すべての周波数をフラットに録音・再生できるようになった。その時代のスピーカーは、低音部も手抜きがされないようになった。
よく「レコードの方が音が柔らかく豊かだった、CDはなぜあんな硬い音がするんだ。」という声を耳にするが、あれは情報量の少ないぼやけた低音部に耳が慣れてしまったからだ。
と、こんな解説でした。
だから昔のスピーカーにこだわって中古品を買うよりは、近年の技術を詰め込んで開発された新しいスピーカーの方がよいでしょう、とアドバイスされました。
御意!
他にもスピーカー関係の蘊蓄を聴いてきました;
■ スピーカーに箱は要らない。
スピーカーのコーンは電圧で前後に振動して音を出す仕組みだが、一番ストレスなく自由に動けるのは前後の空気圧が同じ時。
しかし、箱に取り付けると内圧がどうしても高くなるので、前に動きやすいが後ろに戻りにくいという欠点を抱えてしまう。なので、箱をなくした、板にスピーカーユニットを取り付けるだけの方がよい音が出る。
さらには、スピーカーユニットの裏面には当然ながら金具と磁石がついており、これも前後の空気圧に差を作ることになりコーンの振動にとっては邪魔になる。
この欠点を解決したのが「シーメンス社の鉄仮面」という愛称で知られるスピーカーユニット。前面についている金具は保護のためではなく、前後の空気圧を均等にするための装備。
■ ユニットを複数並べると位相の関係で高音域が出なくなる
複数(3つ以上)のウーファーを並べているトールボーイ型スピーカーを見かけるが、低音域は周波数が低く波長が長いので同調してパワーアップする一方で、高音域は周波数が高く波長が短いので同調しにくくお互いに打ち消し合ってしまう傾向がある。なので性能のよいツィーターが必要となる。
このようなお話を、珈琲をすすりながら、音楽を聴きながら拝聴し、楽しい午後となりました。
昔のオリジナルスピーカーのスカッと抜けのよい音もよかったなあ、買っちゃおうかなあ・・・。