マイルス・デイビスはジャズファンである私のアイドルです。
マイルス以前のジャズは、スイングや Be-Bop など、高速のアドリブで盛り上がる傾向がありました。
マイルスはそこに一石を投じ、
抑制されコントロールされた音による美(というかカッコ良さ)を求めたのです。
“秘すれば花”という日本美の精神に通じるのかもしれません。
さて、録りためてあったTV録画から、
『巨匠たちの青の時代 マイルス・デイビス 帝王への扉を開けたサウンド』
(NHK-BS、2017.6.19)
を視聴しました。
巨匠達の“青”の時代を扱うシリーズの一つとして制作され、
地元のジャズ・バンドではスターだった彼が、
チャーリー・パーカーとディジー・ガレスピーの演奏に衝撃を受け、
親にウソをついてまでニューヨークに進出し、
自分の音、スタイルを身につけていく過程をクローズアップした内容です。
それまでの譜面通りに演奏するスイング・ジャズから、
時代は短いテーマをアドリブで展開し、ソロをつないでいく Be-Bop へ変化していました。
当時大人気の天才的トランペッター、ディジーの演奏に憧れたマイルス。
トランペットで高速&高音を吹き続けることはプロでも難度が高く、
ディジーにしかできないテクニックでした。
多くの肺活量と、唇をすぼめ続ける筋力が必要なのだそうです。
「ディジーにはなれない・・・」
体が小さく唇の筋力も弱いマイルスには無理であることをある日、悟りました。
そして自分の音、演奏スタイルを目指すよう、方向転換したのでした。
マイルスは友人でもあるフレディ・ウェブスターの“間”を活かした演奏に惹かれました。
ゆったりしたテンポと強弱、そして“間”。
高速の Be-Bop とは異なる方向性。
彼はフレディの演奏をまねし、取り入れ、唯一無二のサウンドのキッカケにしました。
★ フレディは若くして亡くなりました。
それが最初に花開いたのがパーカー名義の「ナウズ・ザ・タイム」(超名盤!)。
そこで初めてのミュートプレイも録音されました。
これは高音の出ないマイルスを見て、パーカーが勧めたそうです。
★ 伝説的なジャズ評論家のアイラ・ギトラー氏や名盤「カインド・オブ・ブルー」のドラマー、ジミー・コブ氏が“生きて”出演していることに驚きました。