私の音楽 & オーディオ遍歴

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オーディオショップで管球アンプ談義

2013年01月20日 | オーディオ
 先日手に入れた楽器のようなスピーカー「pino parlante Acer」(atelier il conforto)を真空管アンプ(=管球アンプ)で鳴らしたくなりました。
 しかし私は使用経験がなく、全くの初心者です。
 譲ったいただいた方に「お手頃価格でお勧めの真空管アンプを教えてください」と聞いたら「これがCPが高くお勧めですよ」と数十万円のアンプが提示されてきました。う~ん、やはり彼の感覚は私の金銭感覚よりゼロが一つ多い(苦笑)。

 Amazonで物色すると「USB端子付き」というそそる機能を装備した管球アンプが数万円で用意されています。
 自惚れているわけではありませんが、 Accuphase E-460 の音を知っている私の耳が、1~2万円のアンプの音で満足するとはどうしても思えません。

 そこで、また行きつけのオーディオショップ「エレックス」で教えてもらうことにしました。
 まずは、いつもの質問攻め;

Q. 真空管アンプの音は「柔らかい」「まろやか」などと表現されることが多いが、その正体は何か?
A. 放電とトランス移行のタイミングで高音が失われることが主因。
 真空管内に放電された電気信号が全て受け止められることはなくロスがある。また、第一トランスから第二トランス(出力トランス)へ移行する際に高音域の信号が失われる。すると相対的に中音域が目立つことになり、耳に優しい音になる。

 では、トランジスタの方が優れているのか?
 答えは「一概には言えない」。
 周波数特性などの計測データを比較すると、トランジスタの方が原音に忠実であり、真空管は劣ると云わざるを得ない。
 しかし、オーディオは「科学」ではなく「趣味」の世界。
 リスナーの耳に心地よければ、それでよいのである。
 そしてリスナーの好む音は一人一人異なり、「究極の音」は一つとは限らない。
 低音に押し出し感のある音を聞きたい、中音域が豊かな音が聞きたいとなれば、そのように再生してくれる球(タマ)とメーカーを選ぶという楽しみが広がっていく。

Q. 真空管は寿命があると聞くがどれくらいか?
A. 1日1時間程度聞くペースなら10年くらいは大丈夫。
 音がぼやけてきたと感じたら、真空管を引き抜いてコピー用紙にかざしてみる。黄色く曇っているように見えたら寿命と考える。

Q. 管球アンプの値段もピンキリであるが、何が違うのか?
A. 球(タマ=マニアは真空管のことをこう呼ぶ)と回路(特にトランス)が違う。
 同じ型の球でもいろんなメーカーが作っているのも特徴(ジェネリック医薬品みたい)。それからメーカー独自に回路を開発・構築してチューニングすることにより個性のある音を目指すので、その労力と音にどれだけの価値を認めるかという面もある。

Q. 球の種類とメーカーの違いのどちらが音への影響が大きいか?
A. 両方。
 球も低音のエネルギーが魅力的なものもあれば、大人しいけど美音というタイプもある。球の種類により適切な回路もある程度固定されてくるが、その上にトランスを中心としたメーカーのチューニングが乗ってくる。例えば Mackintosh は迫力のある音を出すが、Lux の音はどちらかというと大人しい。

Q. 初心者が管球アンプを選ぶときのポイントは?
A. まず、スタンダードでかつ流通している球を選択すべき。
 高級とか希少価値のある球は故障したときに大変。それに慣れて、さらに「こういう音を聞きたい」という気持ちが出てきたときに、それに見合う球を使ったアンプを探せばよい。

Q. 使用していると焦げ臭くなるような気がして・・・
A. 温度が半端でなく高くなるので周囲のホコリが焼けるニオイがする。
 真空管が燃えたりはしないので心配無用。

 というわけで、入門用の管球アンプを購入するに至りました。その店のお客さんが自作機を委託販売している品で、49800円也(さらに新年特別割り引きあり)。



 このEL34という球がポイントだそうです。Q&Aのところにあるように、スタンダードでバランスの良い音を出し、流通量も十分なので壊れた時にも入手可能な品。

 管球アンプは電源を入れて1時間くらいして温まらないと十分能力を発揮できないことも教えてもらいました。
 昔の真空管ラジオと同じ感覚ですね。

 さて、帰宅して早速スピーカーにつないで聞いてみました。
 確かに最初は縮こまったようなおとなしい音でしたが、1時間も経過すると蝶々が羽を伸ばしたように音が元気に出てくるようになりました。
 pino parlanteの楽器感にさらに磨きがかかったような気がします。
 音を大きくしなくても心地よく響くところが特徴かな。

 古いヴァイオリンの調べをBGMに、穏やかな午後のひとときを手に入れたのでした。

参考> 
(2013.1.18付けのオーディオショップ「逸品館」の配信メールからの抜粋)

 新品や中古を含めて数多くの真空管アンプを聞きましたが、音の「暖かさ」が「高域の丸さ」という欠点の裏返しであったり、低音が出なかったり、高域特性が悪かったり、真空管アンプの基本性能はトランジスターに劣るものがほとんどでした。トランジスターアンプは、真空管を超える音響性能が認められて世に出たので、それは当然と言えば当然のことです。
 真空管アンプの「価格」の決め手はどこにあるかご存じでしょうか?それは「真空管のブランド(形式)」です。人気があり、高く売れる「形式」の球を使うことが、その価格の基準です。しかし、人気のある300Bを使うアンプの価格が高いことには、科学的な根拠はまったくありません。さらに言うなら、音質的な根拠もありません。真空管の「形式」が出てくる音とは深い関連性がないことは、様々な真空管と出力トランスの組み合わせを自作で確認すれば容易に分かることです。
 つまり「無名で音の良い球」を見付けられれば、安くて良い音のアンプを作れるのです。しかし、真空管を「出力管」として使うには、それにマッチした「出力トランス」が不可欠です。無名の球には、ベストマッチする出力トランスがありません。出力トランスもまた「人気のある球」に用途を絞って作られているからです。それでは「オリジナル設計/特注品」で出力トランスを発注すればよいのですが、それでは「絶対」に良い音が出ません。真空管と出力トランスのマッチングは、机上で設計して良い音が出せるほど簡単なことではないからです。
 また、真空管アンプの世界で「オリジナルトランスを搭載」あるいは「オリジナルパーツを採用」と謳われるスペシャルモデルが存在します。しかし、コストの関係で無限のトライアンドエラーが許されない「オリジナルパーツ」が、豊富なユーザーによって行われた無限のテスト結果がフィードバックされ、切磋琢磨の原理で性能を高めてきた「安い汎用品」を確実に上回る保証はありません。間違いないのは「価格が高い」という事実です。私の「オーディオ機器の音質は、必ずしも価格と比例しない」という主張には、このような裏付けがあります。
 つまり、音の良い真空管アンプを作るためには「真空管」よりも「真空管を生かせる出力トランス」がより重要です。どんなに素性の良い球でも「マッチした出力トランス」というパートナーなしでは、良い音が出せません。
 真空管アンプの音の良さの秘密は、トランジスターアンプで乏しい「響きの豊かさ」を持つことです。真空管とトランスが生み出す「美しい響き」が、音の美しさと音楽の情緒をより深めるのです。ではなぜアンプの生み出す「響き」が音を良くできるのでしょう。それは、次のように考えていただけると分かりやすいと思います。
 ギターを例に挙げて説明しましょう。ギターは「弦」と「胴」で構成されます。ギターには多くの種類がありますが「弦」は、それよりずっと種類が少なく消耗品なので安価です。同じ弦を使っていても、高級なギターはよい音で鳴り、安物はそれなりの音しか出ません。ギターの音は「胴の響きの美しさ」で決まるのです。
 オーディオ機器に置き換えるとき「弦」を入力される音楽信号、「胴」を真空管式アナログ回路と考えていただければ、真空管アンプが入力された音楽信号よりも「良い音を出す」理由がおわかりいただけると思います。つまり、真空管やトランスがギターの「胴」のように美しく響いて、音をさらに美しくし、音楽の情緒を深めているのです。


 エレックスで聞いた話とだいたい同じでした。

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