私の音楽 & オーディオ遍歴

お気に入りアーティストや出会った音楽、使用しているオーディオ機器を紹介します(本棚8)。

AVISHAI COHEN TRIO WITH 17 STRINGS

2018年08月27日 | コンサート
アヴィシャイ・コーエン・トリオ with 17 ストリングス
紀尾井ホール、2018年8月26日
アヴィシャイ・コーエン(ベース、ボーカル)
イタマール・ドアリ(パーカッション)
エルチン・シリノフ(ピアノ)
※アーティスト都合により、オムリ・モール(ピアノ)→エルチン・シリノフ(ピアノ)へ変更

松本裕香、渡邉みな子、蓑田真理、西野絢賀、坂本尚史(1stバイオリン)
emyu:、土谷茉莉子、村津瑠紀、西原史織(2ndバイオリン)
惠藤あゆ、土谷佳菜子、西村葉子、吉田飛鳥(ヴィオラ)
山田健史、福井綾、岡本渚(チェロ)
永田由貴(コントラバス)


 

を聴いてきました。

アヴィシャイ・コーエンという名前、実はつい先日、YouTube で出会ったばかり。
フ〜ン、こんなベーシストがいるんだ、くらいの印象。
メロディアスな旋律より、インタープレイがメインの動画だったためかな。

なので、今回のコンサート・チケットは知り合いから譲り受けたものです。

さて実際に聴いていみると・・・“不思議で素敵な演奏”でした。

ストリングスの演奏から始まったので、“ジャズ”を期待した私の耳は「?」状態。
でも聞き慣れてくると、弦楽器のふくよかさや奥深さが効いてきます。

そこに絡むようにピアノトリオの演奏が入りました。
ドラマーによるブラッシュ・ワークが始まると、すうっとジャジーな雰囲気に染まりました。

ベーシストがリーダーなので、その低く太い音が主役になるにはベースの音を大きくする必要があるのか、最初はなんとなくアンバランスに感じました。
でもこれも、聴いているうちに馴染んできました。

室内楽のような雰囲気の曲あり、
コーエンのルーツであるアラビアの旋律を思わせる曲あり、
トリオが三位一体となった臨場感あふれる煌びやかなインタープレイあり、
リリカルでどこか懐かしさを感じさせる曲あり、
それから、コーエンのボーカルもあり・・・

と盛りだくさん。
アメリカのジャズよりはヨーロッパ的ではあるけど、エスニックな味付けもあるという微妙なスタンス。
純粋な“ジャズ”を聴きたい人にはぴんとこない曲もあったかもしれませんが、コーエンの才能、その音楽が十分楽しめる内容だったと思います。
bowing も見事でした。

それから、ドラムスのイタマール・ドアリはドラマーと言うよりパーカッショニスト(クレジットにも“パーカッション”とありますね)。
変幻自在のリズムで鼓舞し、メンバーから最高のパフォーマンスを引き出していました。
ふつうのドラムセットの他に、実に様々な打楽器系を配置して叩きまくり、“打楽器だけでもこんなにカラフルな音が出せるんだぜ”と主張しているようにも聞こえました。

ピアノのエルチン・シリノフはブラッド・メルドー系の雰囲気でした。
ソロは少なく、“ベースの伴奏”的演奏に終始していましたので、実力は未知のまま。

やはり YouTube で見聞きした経験と実際の演奏は格段に異なりますね。
目と耳だけでなく、体で臨場感を味わう感覚が大事なんだな、と再認識しました。
オーディオマニアでもある私は、コーエンのベースを自宅のオーディオで聴いたら低音がビシビシ響いて心地良いだろうな、と夢想。


ーーー(追加情報)ーーー

<アヴィシャイ・コーエンのプロフィール>
 1970年4月20日イスラエル生まれ。
 6歳からピアノを弾き始め、レッスンを受ける。14歳で渡米しジャズと出会う。16歳で帰国し空軍に従事するが、ジャコ・パストリアスの演奏を聴きミュ-ジシャンとして生きていくことを決意する。
 1992年に再度渡米し、ニューヨ-クで音楽活動を開始しウィントン・マルサリスなどと共演。1996年にはダニロ・ロペスの「パナモンク」に参加し脚光をあび、その後チック・コリアが彼の才能に注目し、チック主宰のストレッチ・レベ-ルに迎い入れた。チックのグル-プオリジンに参加しながら、自身のリ-ダ-アルバムを2枚リリ-スしている。
 ソロアルバムでは、アラビアやトルコといった中近東音楽とNYで学んだジャズの要素がミックスされ彼独自の世界が展開されていて、異才ぶりを発揮している。

公式HP 

<コンサートの内容紹介>
 イスラエル出身のベーシストで、コンポーザーでもあるアヴィシャイ・コーエンによるオーケストラ・プロジェクト公演が2018年8月26日に紀尾井ホールにて、1日限定で開催される。この度、コーエンに話を聞くことができた。
 アコースティック・ベース。ウッド・ベース。ダブル・ベース。コントラバス。アップライト・ベース。いろんな呼び名があるものの、その重低音を担う楽器はサウンドの屋台骨を担う、縁の下の力持ち的な楽器である。だが、秀でた使い手にかかると、それは敏感なハンドル役を担いサウンド総体をぐいぐいと動かしたり、ちょっとしたフレイジングや間(ま)でサウンドの情緒や奥行きを望外に与える。そこらあたりに着目すると、いかにも木の楽器という感じのこの大型の弦楽器に対する興味は倍加するだろう。
 そして、今のジャズ界において間違いなくトップ級の面白さ、味わい深さを持つベーシストがアヴィシャイ・コーエンだ。彼はNYで修行をしているときに、その力量を重鎮ピアニストのチック・コリアに見初められ、彼のバンドに参画。そこでの確かな技巧に支えられた風景を鮮やかに浮き上がらせるような雄弁な演奏は多大な印象を受け手に残し、1998年以降はリーダー・アーティストとして百面六臂の活動をしてきている。
 そんなコーエンを語る際にまず外すことが出来ないのが、彼がイスラエル人であることだ。彼はNYに出る事でジャズ界でエスタブリッシュされたが、12年前からは本国に戻り活動している。
 「イスラエルのジャズ・シーンはここ数年で随分と大きなものになりましたが、大きな理由がそこにはあります。イスラエルは今まで常にモロッコやギリシャ、トルコ、ブルガリア、スペイン、そして東ヨーロッパ諸国の多くの異なる文化、そして世界各国にいるユダヤ人の子孫たちから影響を受けてきました。その影響は音楽や言語、そして美味しい食べものなど多岐にわたって見られ、様々な場所にそれぞれ違ったように吸収され、より独創的なものにする助けとなっています」
 また、イスラエルのジャズ界について、彼はこうもコメントしている。
 「ここ最近はイスラエルにも、本当に多くの才能にあふれた若い音楽家が出ています。彼らと一緒に活動することで私自身、彼らからインスパイアされますし、同時に学ばされてもいます。私はその成長の手助けとなることに大きな関心を持っていますし、彼らを好きですね」
 そんな出自を抱えるコーエンの音楽営為はとてもしなやか。トリオでの活動を柱に置きつつ、ジャズの本質を浮き彫りにするようなストーリー性にあふれた即興演奏を鋭意求めたり、一方ではイスラエルのフォーク・ソングを題材に置き(時には、ザ・ビートルズ・ソングも)悠々とベースをつま弾きながら歌ってみたり。さらには、ストリングスやオーケストラと共演する特別仕立ての公演も彼はたびたび行ってきている。
 「2013年に『アルマー』を作った時、その収録曲のためにオーケストラを使ったアレンジメントを書くという事は、私にとって大きなステップとなりました。まわりにいる皆んなは私の楽曲はオーケストラと合うと言ってくれていましたが、5年以上の歳月をかけて新しい編曲と楽曲を進化させるべく練り上げました」
 今度東京で持たれる17人の弦楽器奏者を擁する<アヴィシャイ・コーエン・トリオwith 17ストリングス>は、過去試みてきたそうしたクラシック奏者たちとの邂逅を磨いたものとなる。『アルマー』に収録されていた2曲をはじめ、数々のマテリアルがトリオとチェンバー・オーケストラ用に新しく編曲されるという。
 「殆どの楽曲が私のアレンジです。私のアイディアとイメージを基に、何人かの音楽家/編曲家のちょっとした何かが足されていたりもします」
 基本となるトリオの同行者二人を、コーエンは以下のように説明する。
 「ピアニストで作曲家のエルチン・シリノフはアゼルバイジャンの出身で、私のトリオの新しいパートナーです。これから一緒にやっていく年月で一緒に成長していけることを、とても楽しみにしています。そしてもう一人のステージにおけるパートナーであるイタマール・ドアリはマルチなタレントで、才能あるイスラエルの打楽器奏者です。彼とは最新のアルバム『1970』のレコーディングも一緒に行っており、また遡れば2009年と2011年に出した『オーロラ』と『セヴン・シーズ』でもフューチャーしています。彼は今までも私と世界中のいろいろな所で、様々な違った編成のもと一緒に演奏しています」
 様々な楽曲素材をめくるめくチェンバー・オーケストラと紐解くその出し物は、多様な文化や音楽様式を思うまま超え、結果的にコントラバス、そしてジャズという楽器や表現の自由な可能性を浮き上がらせるものになるに違いない。
 「一連の活動は様々な文化や音楽のスタイルを求める長い旅路なんです。それを求めるからこそ、私は音楽家たりえると思っています。音楽が発展していくことや動いていくのを止めることはできませんし、それは私を高みへと導いていってくれます」
 彼は新しいプログラムを用意、それをもとに日本で新しく出会う音楽家と一緒に事にあたることを、今心待ちにしている。
(取材・文=佐藤英輔)

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