発達障がい・こころのやまい

専門外ながら相談を受けることがあり、その際に読んだ本や集めた情報を書き留めました(本棚9)。

リチウム処方の変遷

2024-09-22 06:57:34 | 双極性障害
リチウムは双極症(旧名:双極性障害、もっと昔は躁鬱病)の特効薬であり、欠かせない薬として君臨してきました。
しかし近年、その考えが少し変わってきたようです。
各疾患(他の病気でも使用されていた?)への使用率が減少してきたという記事が目に留まりましたので紹介します。

やはり双極症で多く処方されていますが、20年間の推移は約40% → 30%と減少傾向、
いやいや、双極症でも30〜40%しか処方されていないことに私は驚きました。

さらに、統合失調症にも2〜3割で処方されていることも以外でした。

以前調べた際は、リチウムが双極症に効くことは偶然発見され、メカニズムが不明ながらもずっと使われてきたことを知りました。
現在のエビデンスはどうなっているのでしょうね。

▢ 双極症に対するリチウム使用、23年間の変遷
  
 薬剤の疫学データによると、双極症に対するリチウムの使用は、徐々に減少しており、他の適応症への注目も低下している。ドイツ・ミュンヘン大学のWaldemar Greil氏らは、1994~2017年のリチウム処方の変化を調査した。Pharmacopsychiatry誌オンライン版2024年8月22日号の報告。
 ドイツ、オーストリア、スイスの精神科病院を含む精神医学における薬物安全性プログラムAMSPのデータを用いて、1994~2017年のリチウム処方を分析した。さまざまな疾患に対するリチウムの使用は、2001年以前と以降および3つの期間(T1:1994~2001年、T2:2002~09年、T3:2010~17年)により比較を行った。
 主な結果は以下のとおり。

・対象は、成人入院患者15万8,384例(女性の割合:54%、平均年齢:47.4±17.0歳)。
・リチウム処方は、統合失調症スペクトラム患者で2001年以前の7.7%から2001年以降の5.1%へ、情動障害患者では16.8%から9.6%へと、統計学的に有意な減少が確認された。
・各疾患サブグループにおいてもリチウム処方の減少が認められた。
【統合失調感情障害(ICD-10:F25)】27.8%→17.4%(p<0.001)
【双極症(ICD-10:F31)】41.3%→31.0%(p<0.001)
【うつ病エピソード(ICD-10:F32)】8.1%→3.4%(p<0.001)
【再発性うつ病(ICD-10:F33)】17.9%→7.5%(p<0.001)
【情緒不安定、境界性パーソナリティ障害】6.3%→3.9%(p=0.01)
・T1、T2、T3における比較は次のとおりであり、双極症に対するリチウム処方は、2002年以降、あまり減少していなかった。
【統合失調感情障害】26.7%→18.2%→16.2%
【双極症】40.8%→31.7%→30.0%
【うつ病エピソード】7.7%→4.2%→2.7%
【再発性うつ病】17.2%→8.6%→6.6%
・リチウムと併用された主な向精神薬は、クエチアピン(21.1%)、ロラゼパム(20.6%)、オランザピン(15.2%)であった。
 著者らは「入院患者に対するリチウム処方は、双極症だけでなく、さまざまな疾患において減少していることが確認された」としている。

<原著論文>


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