双極性障害関連のニュース記事です。
気分安定薬として定番のリチウム。
効く人と効かない人が遺伝子解析でわかる時代になりました;
■ 双極性障害のリチウム治療効果に関連するSNPs 国際共同研究による全ゲノム関連解析
(2016/2/10:日経メディカル)
リチウムは双極性障害の第一選択薬だが、治療に対する個々の患者の反応は異なる。症状がほぼ完全に消失する患者がいる一方で、全く反応が見られない患者もいる。米国立衛生研究所(NIH)のLiping Hou氏らは、双極性障害の患者を対象に全ゲノム関連解析(GWAS)を行い、リチウムに対する反応性にかかわる遺伝子座が21番染色体上に存在することを明らかにした。詳細は、Lancet誌電子版に2016年1月21日に報告された。
著者らは、2008年創設で、今では世界の28カ国が参加しているInternational Consortium on Lithium Genetics(ConLiGen)にデータを提供している22施設で採取された2563人の患者に由来する標本を用いて、GWASを行い、リチウムに対する反応に関係する一塩基多型(SNPs)の同定を試みた。
対象にしたのは、6カ月以上にわたってリチウムを使用する必要が有り、他の気分安定薬を併用せず、リチウムに対する反応を標準的な評価指標であるAldaスケールを用いて評価できた患者。表現型と遺伝子型のタイピングを行った時期により2つのグループに分け、1162人をGWAS1(年齢は47.8歳、男性が41%)、1401人(46.84歳、44%)をGWAS2に組み入れた。表現型はAldaスケールのスコアが7以上の患者を反応良好、6以下を反応不良と判定した。GWAS1とGWAS2についてそれぞれ別個に、末梢血のサンプルから遺伝子解析を行った。
その結果、21番染色体上に存在する、4つの連鎖するSNPsを含む遺伝子座が、リチウムに対する高い反応性と関係していた。rs79663003は反応良好の塩基がT(不良はC)、rs78015114はT(C)、rs74795342はG(A)、rs75222709はT(G)だった。この領域に蛋白質はコードされておらず、長鎖非コードRNA(lncRNAs)であるALL57359.3とAL157359.4が存在していた。この遺伝子座はGWAS1とGWAS2の中でも欧州系の患者のリチウムの反応性の予測に有用と考えられた。
なお、GWAS1とGWAS2の中のアジア系の患者集団を対象に分析したところ、8番染色体のrs7833426(反応良好の塩基はA、不良はG)のみがリチウムに対する反応性と有意な関係を示した。このSNPはグリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)受容体をコードするGFRA2遺伝子のイントロン中に存在していた。欧州系の集団では、このSNPのアレル頻度は5%未満と低かった。
原題は「Genetic variants associated with response to lithium treatment in bipolar disorder: a genome-wide association study」、概要はLancet誌のWebサイトで閲覧できる。
気分安定薬として定番のリチウム。
効く人と効かない人が遺伝子解析でわかる時代になりました;
■ 双極性障害のリチウム治療効果に関連するSNPs 国際共同研究による全ゲノム関連解析
(2016/2/10:日経メディカル)
リチウムは双極性障害の第一選択薬だが、治療に対する個々の患者の反応は異なる。症状がほぼ完全に消失する患者がいる一方で、全く反応が見られない患者もいる。米国立衛生研究所(NIH)のLiping Hou氏らは、双極性障害の患者を対象に全ゲノム関連解析(GWAS)を行い、リチウムに対する反応性にかかわる遺伝子座が21番染色体上に存在することを明らかにした。詳細は、Lancet誌電子版に2016年1月21日に報告された。
著者らは、2008年創設で、今では世界の28カ国が参加しているInternational Consortium on Lithium Genetics(ConLiGen)にデータを提供している22施設で採取された2563人の患者に由来する標本を用いて、GWASを行い、リチウムに対する反応に関係する一塩基多型(SNPs)の同定を試みた。
対象にしたのは、6カ月以上にわたってリチウムを使用する必要が有り、他の気分安定薬を併用せず、リチウムに対する反応を標準的な評価指標であるAldaスケールを用いて評価できた患者。表現型と遺伝子型のタイピングを行った時期により2つのグループに分け、1162人をGWAS1(年齢は47.8歳、男性が41%)、1401人(46.84歳、44%)をGWAS2に組み入れた。表現型はAldaスケールのスコアが7以上の患者を反応良好、6以下を反応不良と判定した。GWAS1とGWAS2についてそれぞれ別個に、末梢血のサンプルから遺伝子解析を行った。
その結果、21番染色体上に存在する、4つの連鎖するSNPsを含む遺伝子座が、リチウムに対する高い反応性と関係していた。rs79663003は反応良好の塩基がT(不良はC)、rs78015114はT(C)、rs74795342はG(A)、rs75222709はT(G)だった。この領域に蛋白質はコードされておらず、長鎖非コードRNA(lncRNAs)であるALL57359.3とAL157359.4が存在していた。この遺伝子座はGWAS1とGWAS2の中でも欧州系の患者のリチウムの反応性の予測に有用と考えられた。
なお、GWAS1とGWAS2の中のアジア系の患者集団を対象に分析したところ、8番染色体のrs7833426(反応良好の塩基はA、不良はG)のみがリチウムに対する反応性と有意な関係を示した。このSNPはグリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)受容体をコードするGFRA2遺伝子のイントロン中に存在していた。欧州系の集団では、このSNPのアレル頻度は5%未満と低かった。
原題は「Genetic variants associated with response to lithium treatment in bipolar disorder: a genome-wide association study」、概要はLancet誌のWebサイトで閲覧できる。