オランザピン(ジプレキサ®)は統合失調症を中心とした精神疾患関連に用いられる抗精神病薬です。
効果のある薬である一方で副作用もあります。
肥満・糖尿病が有名ですが、心血管系副作用も無視できません。
オランザピン関連情報をいくつか集めました。
まずはオランザピンが引き起こす視交叉上核(SCN)経由の副交感神経緊張状態による心血管代謝系副作用(血圧低下、心拍数低下)がメラトニンにより保護されるという報告。
■ オランザピンの心血管副作用、メラトニンの保護可能
(2017/03/28:ケアネット)
第2世代抗精神病薬(SGA)は、患者の早期死亡の起因となる有害な心血管代謝系副作用と関連している。これら心血管代謝系副作用を引き起こすメカニズムは十分にわかっていないが、最近、3つの独立した研究において、メラトニンがSGA治療患者の心血管代謝リスクを防御していることが示された。循環するメラトニンの主要標的領域の1つである視交叉上核(SCN)が、SGA誘発性の早期心血管系効果に関連しているかを、メキシコ国立自治大学のFrancisco Romo-Nava氏らは、Wistarラットを用いて検討を行った。Journal of pineal research誌オンライン版2017年2月22日号の報告。
体内時計、室傍核および自律神経系におけるオランザピンとメラトニンの急性効果について、免疫組織化学、侵襲的心血管測定、ウエスタンブロットを用いて評価を行った。
主な結果は以下のとおり。
・オランザピンは、SCNにおいてc-Fos免疫反応性を誘導し、続いて室傍核および迷走神経の背側運動核を誘導し、副交感神経緊張の強力な誘導を示した。
・オランザピン投与後のSCN-副交感神経ニューロン経路の関与は、コレラトキシンB逆行性追跡および血管作動性腸管ペプチド免疫組織化学を用いてさらに記録された。
・オランザピン誘発性の血圧低下と心拍数低下が裏付けられた。
・メラトニンは、副交感神経経路および心血管作用を含むオランザピン誘発性SCN c-Fos免疫反応性を是正し、その一方、線条体、腹側被蓋野および側坐核を含むオランザピンの有益作用に関連する脳領域の活性化は維持された。
・SCNにおいて、オランザピンはメラトニンが関与した体内時計の調整因子であるGSK-3βをリン酸化した。
・SCNの両側病変は、オランザピンの副交感神経活性への影響を防御した。
著者らは「SCNは、心血管機能に対するオランザピンの初期効果を媒介する重要な領域である。さらなる調査が必要ではあるが、メラトニンは、その作用を是正し、潜在的な保護効果を有する可能性がある」としている。
次は、そのオランザピンによる心血管系副作用(平均動脈圧、静脈緊張および心収縮能を低下)の報告。
■ オランザピンによる急性期治療、心血管系に影響
(2014/07/11:ケアネット)
オランザピンの急性治療は、平均動脈圧、静脈緊張および心収縮能を低下することが、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のJoanne Y.T. Leung氏らによるラット試験の結果、明らかにされた。抗精神病薬による治療は、有害な心血管作用(たとえば起立性低血圧や不整脈)と関連している。また、統合失調症患者は心血管系合併症の有病率が高いが、抗精神病薬の血管緊張や心収縮への作用については、これまでほとんど注意が払われていなかった。Vascular Pharmacology誌オンライン版2014年6月23日号の掲載報告。
研究グループは本検討において、抗精神病薬の心血管作用を明らかにするため、非定型抗精神病薬オランザピンが心血管機能を変化しうるかどうかを、ラットを用いたin vivo試験で評価した。検討に用いられたのは雄のSprague-Dawleyラットで、留置カテーテルで調節した。手術から回復4時間後、オランザピン[3または15mg/kgを腹腔内投与(i.p.)]または溶媒の単回投与後60分のベースライン時点で、意識があり拘束をされていない状態のラットにおいて平均動脈圧(MAP)、循環系平均充満圧(MCFP;体静脈緊張の指数)、心拍数、左室最大収縮期圧(LVP)、心収縮能(+/-dP/dt)を測定した。
主な結果は、以下のとおり。
・溶媒投与群は、測定を行ったいずれの時点においても心血管測定値に変化はみられなかった。
・オランザピンの心拍数への影響はみられなかったが、投与後30分の最大効果到達時点において、用量依存性でMAP、MCFP、LVP、心収縮能の減少が認められた。
・ラットにおける急性期オランザピン治療は、MAP、静脈緊張および心収縮能を低下した。
・静脈緊張は、抗精神病薬治療の初期において患者にみられる起立性低血圧に寄与している可能性が示唆された。
次に、オランザピンによる代謝異常(体重増加を伴わない脂質異常症や糖尿病)の原因は膵臓β-細胞のアポトーシスであることが判明したという報告;
■ オランザピンの代謝異常、原因が明らかに:京都大学
(2013/08/30:ケアネット)
オランザピン服用患者の一部で認められる、体重増加を伴わない脂質異常症や糖尿病の原因について、オランザピンがインスリン分泌を制御する膵β細胞のアポトーシスを引き起こしている可能性があることを、京都大学大学院理学研究科教授・森 和俊氏らが明らかにした。Cell Structure and Function誌2013年第2号の掲載報告より。
統合失調症患者の症状軽減のためにさまざまな薬物投与が行われるが、いくつかの有効な第2世代(非定型)抗精神病薬、とくにオランザピンは一部の患者において、肥満や脂質異常、糖尿病を引き起こす。一般的にオランザピンは、肥満を誘発し、その後インスリン抵抗性が引き起こされることによって糖尿病発症に関与すると考えられているが、森氏らはインスリン分泌を制御する膵β細胞への直接的な薬物作用を、オランザピンほかリスペリドン、その他の非定型抗精神病薬についてハムスターを用いて調べた。また、その際に細胞への悪影響(ストレス)を生じさせる小胞体(ER)ストレスの喚起が認められるかについて、ERストレスセンサー分子PERKの低活性をエビデンスとして調べた。
得られた主な知見は以下のとおり。
・オランザピン治療細胞でのみ、アポトーシスの誘発が認められた。
・オランザピン治療細胞においては、PERK仲介翻訳減衰が選択的に損傷を受けており、そのためにERストレスの持続がみられた。
・インスリン分泌は顕著に阻害されていた。そして、プロインスリンとインスリンがいずれもオランザピン治療細胞に蓄積していた。
・蛋白質合成抑制とインスリンmRNAのノックダウンにより、それ以後はオランザピン誘発のアポトーシスは減弱した。
・以上から、オランザピンを服用する患者の一部で、体重増加することなく高脂血症と高血糖が臨床的に認められることについて、オランザピン治療による膵β細胞への損傷が好ましくない代謝の影響に関与している可能性が示唆された。
次は、オランザピンによる代謝異常(メタボリックシンドローム)が他の抗精神病薬であるアリピプラゾールへ切り替えることにより改善されるという報告;
■ オランザピンの代謝異常、アリピプラゾール切替で改善されるのか
(2015/04/01:ケアネット)
統合失調症患者では、抗精神病薬で誘発される代謝異常の頻度が高い。そして、そのために心血管疾患を生じやすい。このことを念頭に、インド・スリナガル医科大学のRayees Ahmad Wani氏らは、オランザピンでメタボリックシンドロームを発症した安定期統合失調症患者における、アリピプラゾール切り替え後のさまざまな代謝パラメータへの影響を、非盲検試験で調査した。Neuropsychiatric disease and treatment誌オンライン版2015年3月13日号の報告。
対象は、オランザピンで安定しており、NCEP ATP III(National Cholesterol Education Program Adult Treatment Panel III)の基準でメタボリックシンドロームを発症した統合失調症患者62例。対象患者は、アリピプラゾール切り替え群とオランザピン継続群に1:1で無作為に割り付けられた。アリピプラゾール切り替え群は、1ヵ月にわたる漸減漸増にて切り替えを行った。代謝パラメータは、ベースラインおよび試験開始8週および24週時点で評価した。有効性は、ベースラインおよび24週目におけるPANSS(陽性・陰性症状評価尺度)、ベースラインのCGI-S(臨床全般印象・重症度尺度)と24週時点のCGI-I(臨床全般印象・改善度尺度)にて評価した。
主な結果は以下のとおり。
・メタボリックシンドロームのすべてのパラメータ(腹囲、血圧、トリグリセリド値、空腹時血糖値、HDLコレステロール)は、アリピプラゾール切り替え群の継続的な改善と比較して、オランザピン継続群では悪化したままであった。
・研究終了時点で、NCEP-ATP-III基準を満たすメタボリックシンドロームを有する患者の割合は、オランザピン継続群100%(26例)、アリピプラゾール切り替え群42.8%(15例)であった。
・PANSS総スコアやCGI-Iスコアで示された精神病理学的変化は、両群間で統計学的に有意な差は認められなかった。
・本結果から、代謝異常が認められるオランザピン使用中の安定期統合失調症患者では、アリピプラゾールへ漸減漸増で切り替えることにより、有効性を維持したまま、代謝異常を改善できることが示唆された。
効果のある薬である一方で副作用もあります。
肥満・糖尿病が有名ですが、心血管系副作用も無視できません。
オランザピン関連情報をいくつか集めました。
まずはオランザピンが引き起こす視交叉上核(SCN)経由の副交感神経緊張状態による心血管代謝系副作用(血圧低下、心拍数低下)がメラトニンにより保護されるという報告。
■ オランザピンの心血管副作用、メラトニンの保護可能
(2017/03/28:ケアネット)
第2世代抗精神病薬(SGA)は、患者の早期死亡の起因となる有害な心血管代謝系副作用と関連している。これら心血管代謝系副作用を引き起こすメカニズムは十分にわかっていないが、最近、3つの独立した研究において、メラトニンがSGA治療患者の心血管代謝リスクを防御していることが示された。循環するメラトニンの主要標的領域の1つである視交叉上核(SCN)が、SGA誘発性の早期心血管系効果に関連しているかを、メキシコ国立自治大学のFrancisco Romo-Nava氏らは、Wistarラットを用いて検討を行った。Journal of pineal research誌オンライン版2017年2月22日号の報告。
体内時計、室傍核および自律神経系におけるオランザピンとメラトニンの急性効果について、免疫組織化学、侵襲的心血管測定、ウエスタンブロットを用いて評価を行った。
主な結果は以下のとおり。
・オランザピンは、SCNにおいてc-Fos免疫反応性を誘導し、続いて室傍核および迷走神経の背側運動核を誘導し、副交感神経緊張の強力な誘導を示した。
・オランザピン投与後のSCN-副交感神経ニューロン経路の関与は、コレラトキシンB逆行性追跡および血管作動性腸管ペプチド免疫組織化学を用いてさらに記録された。
・オランザピン誘発性の血圧低下と心拍数低下が裏付けられた。
・メラトニンは、副交感神経経路および心血管作用を含むオランザピン誘発性SCN c-Fos免疫反応性を是正し、その一方、線条体、腹側被蓋野および側坐核を含むオランザピンの有益作用に関連する脳領域の活性化は維持された。
・SCNにおいて、オランザピンはメラトニンが関与した体内時計の調整因子であるGSK-3βをリン酸化した。
・SCNの両側病変は、オランザピンの副交感神経活性への影響を防御した。
著者らは「SCNは、心血管機能に対するオランザピンの初期効果を媒介する重要な領域である。さらなる調査が必要ではあるが、メラトニンは、その作用を是正し、潜在的な保護効果を有する可能性がある」としている。
次は、そのオランザピンによる心血管系副作用(平均動脈圧、静脈緊張および心収縮能を低下)の報告。
■ オランザピンによる急性期治療、心血管系に影響
(2014/07/11:ケアネット)
オランザピンの急性治療は、平均動脈圧、静脈緊張および心収縮能を低下することが、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のJoanne Y.T. Leung氏らによるラット試験の結果、明らかにされた。抗精神病薬による治療は、有害な心血管作用(たとえば起立性低血圧や不整脈)と関連している。また、統合失調症患者は心血管系合併症の有病率が高いが、抗精神病薬の血管緊張や心収縮への作用については、これまでほとんど注意が払われていなかった。Vascular Pharmacology誌オンライン版2014年6月23日号の掲載報告。
研究グループは本検討において、抗精神病薬の心血管作用を明らかにするため、非定型抗精神病薬オランザピンが心血管機能を変化しうるかどうかを、ラットを用いたin vivo試験で評価した。検討に用いられたのは雄のSprague-Dawleyラットで、留置カテーテルで調節した。手術から回復4時間後、オランザピン[3または15mg/kgを腹腔内投与(i.p.)]または溶媒の単回投与後60分のベースライン時点で、意識があり拘束をされていない状態のラットにおいて平均動脈圧(MAP)、循環系平均充満圧(MCFP;体静脈緊張の指数)、心拍数、左室最大収縮期圧(LVP)、心収縮能(+/-dP/dt)を測定した。
主な結果は、以下のとおり。
・溶媒投与群は、測定を行ったいずれの時点においても心血管測定値に変化はみられなかった。
・オランザピンの心拍数への影響はみられなかったが、投与後30分の最大効果到達時点において、用量依存性でMAP、MCFP、LVP、心収縮能の減少が認められた。
・ラットにおける急性期オランザピン治療は、MAP、静脈緊張および心収縮能を低下した。
・静脈緊張は、抗精神病薬治療の初期において患者にみられる起立性低血圧に寄与している可能性が示唆された。
次に、オランザピンによる代謝異常(体重増加を伴わない脂質異常症や糖尿病)の原因は膵臓β-細胞のアポトーシスであることが判明したという報告;
■ オランザピンの代謝異常、原因が明らかに:京都大学
(2013/08/30:ケアネット)
オランザピン服用患者の一部で認められる、体重増加を伴わない脂質異常症や糖尿病の原因について、オランザピンがインスリン分泌を制御する膵β細胞のアポトーシスを引き起こしている可能性があることを、京都大学大学院理学研究科教授・森 和俊氏らが明らかにした。Cell Structure and Function誌2013年第2号の掲載報告より。
統合失調症患者の症状軽減のためにさまざまな薬物投与が行われるが、いくつかの有効な第2世代(非定型)抗精神病薬、とくにオランザピンは一部の患者において、肥満や脂質異常、糖尿病を引き起こす。一般的にオランザピンは、肥満を誘発し、その後インスリン抵抗性が引き起こされることによって糖尿病発症に関与すると考えられているが、森氏らはインスリン分泌を制御する膵β細胞への直接的な薬物作用を、オランザピンほかリスペリドン、その他の非定型抗精神病薬についてハムスターを用いて調べた。また、その際に細胞への悪影響(ストレス)を生じさせる小胞体(ER)ストレスの喚起が認められるかについて、ERストレスセンサー分子PERKの低活性をエビデンスとして調べた。
得られた主な知見は以下のとおり。
・オランザピン治療細胞でのみ、アポトーシスの誘発が認められた。
・オランザピン治療細胞においては、PERK仲介翻訳減衰が選択的に損傷を受けており、そのためにERストレスの持続がみられた。
・インスリン分泌は顕著に阻害されていた。そして、プロインスリンとインスリンがいずれもオランザピン治療細胞に蓄積していた。
・蛋白質合成抑制とインスリンmRNAのノックダウンにより、それ以後はオランザピン誘発のアポトーシスは減弱した。
・以上から、オランザピンを服用する患者の一部で、体重増加することなく高脂血症と高血糖が臨床的に認められることについて、オランザピン治療による膵β細胞への損傷が好ましくない代謝の影響に関与している可能性が示唆された。
次は、オランザピンによる代謝異常(メタボリックシンドローム)が他の抗精神病薬であるアリピプラゾールへ切り替えることにより改善されるという報告;
■ オランザピンの代謝異常、アリピプラゾール切替で改善されるのか
(2015/04/01:ケアネット)
統合失調症患者では、抗精神病薬で誘発される代謝異常の頻度が高い。そして、そのために心血管疾患を生じやすい。このことを念頭に、インド・スリナガル医科大学のRayees Ahmad Wani氏らは、オランザピンでメタボリックシンドロームを発症した安定期統合失調症患者における、アリピプラゾール切り替え後のさまざまな代謝パラメータへの影響を、非盲検試験で調査した。Neuropsychiatric disease and treatment誌オンライン版2015年3月13日号の報告。
対象は、オランザピンで安定しており、NCEP ATP III(National Cholesterol Education Program Adult Treatment Panel III)の基準でメタボリックシンドロームを発症した統合失調症患者62例。対象患者は、アリピプラゾール切り替え群とオランザピン継続群に1:1で無作為に割り付けられた。アリピプラゾール切り替え群は、1ヵ月にわたる漸減漸増にて切り替えを行った。代謝パラメータは、ベースラインおよび試験開始8週および24週時点で評価した。有効性は、ベースラインおよび24週目におけるPANSS(陽性・陰性症状評価尺度)、ベースラインのCGI-S(臨床全般印象・重症度尺度)と24週時点のCGI-I(臨床全般印象・改善度尺度)にて評価した。
主な結果は以下のとおり。
・メタボリックシンドロームのすべてのパラメータ(腹囲、血圧、トリグリセリド値、空腹時血糖値、HDLコレステロール)は、アリピプラゾール切り替え群の継続的な改善と比較して、オランザピン継続群では悪化したままであった。
・研究終了時点で、NCEP-ATP-III基準を満たすメタボリックシンドロームを有する患者の割合は、オランザピン継続群100%(26例)、アリピプラゾール切り替え群42.8%(15例)であった。
・PANSS総スコアやCGI-Iスコアで示された精神病理学的変化は、両群間で統計学的に有意な差は認められなかった。
・本結果から、代謝異常が認められるオランザピン使用中の安定期統合失調症患者では、アリピプラゾールへ漸減漸増で切り替えることにより、有効性を維持したまま、代謝異常を改善できることが示唆された。