双極性障害は早期診断しにくい疾患とされています。
躁状態の時は本人ではなく周囲が困り、うつ状態の時は本人がつらい病気。
なので、うつ状態で受診するため、最初の診断名は「うつ病」になりがちなのです。
しかし、抗うつ薬への反応が悪いため、なかなか症状が改善しません。
そして数年後、躁状態が徐々に明らかになってきて初めて主治医が「この患者さん、もしかしたらうつ病ではなく双極性障害かもしれない」と診断を再考することになるのがパターンです。
双極性障害の有名人として、作家の太宰治や北杜夫が挙げられます。
天国と地獄の気分を繰り返し経験する病気という側面もありますから、人間の感情を深く掘り下げた作品を残せたのでしょう。
北杜夫氏がうつ状態の時に書いたとされる小説群(「幽霊」「木霊」など)、私は大好きです。一方の躁状態の時に書かれたどくとるマンボウシリーズには魅力を感じません・・・。
また、よく売れっ子ミュージシャンで「メロディーが降って湧いてくる、音楽の神様が降りてきた」なんて表現がありますが、これは躁状態に近いのでしょうね。
私は天才的と呼ばれるミュージシャンやアーティストは双極性障害の資質があるのではないかと以前から感じてきました。
うつ状態になると曲が書けなくなったり、ジャズミュージシャンではクリエイティブなアドリブができなくなるので、無理矢理薬で躁状態を造る目的で麻薬に手を出してしまう、というダークサイドの歴史もあるかと。
以下は、NHK放送の健康啓蒙番組を視聴した際のメモです。
とてもわかりやすい内容で知識の整理ができました。
とくに、I型とII型で薬物療法が異なることが明確に示されていて、勉強になりました。
■ 「気分の高まりと落ち込みが時期を変えて現れる!双極性障害」
解説:大分大学教授:寺尾 岳 (てらお・たけし)
□ 頻度:日本人の100人1人(統合失調症と同じ)。
□ 発症年齢:10代後半から20代の発症が最も多いが、高齢でも発症することがある。
□ 双極性障害の長期経過;
・うつ状態を繰り返している時期は、双極性障害と診断不能。
・そのうち軽躁状態が出現するが、“軽躁”は日常生活に支障がない程度で、活動的になったり明るくなったりする(周囲は何となくヘンに感じるが、本人の病識は生まれにくい)。
・その後躁状態が出現してくる。無治療で放置すると躁とうつを繰り返し、重症型の年間4回繰り返すと急速交代型(ラピッドサイクラー)と呼ばれる病態に陥ることがある。
※ 混合状態:躁とうつが混ざる状態。気分が落ち込んでいるのに活発に動き回るので、自殺の危険が高くなる。
□ なりやすい人
・エネルギッシュでへこたれない発揚気質
・気分が変わりやすい循環気質
・双極性障害の親がいる場合は可能性が高くなる
□ うつ状態の症状
・気分が落ち込む
・興味や喜びが減退する
・食欲の低下
・睡眠の低下
・思考と活動が緩慢、焦りや不安が強くなる
・疲れやすい、気力が減退する
・自分を責めてしまう
・思考力・集中力が低下する
・自殺してしまいたい思考が繰り返される
□ 躁状態の症状
・眠らなくても平気
・自分が偉くなったように感じる
・いつもよりおしゃべり
・考えが次々と頭に浮かぶ
・注意がそれやすい
・仕事や勉強をやり過ぎる
・買い物のしすぎ・投資などに熱中
□ 診断
(問診)躁・軽躁があったかを聞き取る(家族からの情報も重要)、他の精神疾患との判別
(脳の画像検査)脳腫瘍などの脳の病気の有無を確認
(血液検査)甲状腺機能障害などの病気の有無を確認
□ 治療:うつ病より薬物療法に重きが置かれることが特徴
・うつ病:心理教育・支持的精神療法 + 薬による治療
・双極性障害:薬による治療>>心理教育・支持的精神療法
□ 双極性障害のI型とII型と治療
I型では躁状態が生活に支障をきたす。その治療は、
再発予防が重要であり、まず気分安定薬を使用し、それでうまくいかないときに新規抗精神病薬を併用する。
・リチウム:最も使われている薬物
有効血中濃度を保つことが大切で、低いと効果が期待できず、高いとリチウム中毒(嘔吐・意識障害など)が出現する。
非ステロイド系抗炎症薬・高血圧の薬(ARB)を使用している場合は使えない。
・気分安定薬は躁とうつにどう効くか?
(躁に有効)
・リチウム(前述)
・バルプロ酸:再発回数が多い例、焦燥感の強い例、混合状態、ラピッドサイクラーに有効
・カルバマゼピン:鎮静作用が強く、興奮や怒りの強い場合に使うと速く落ち着く
(うつに有効)ラモトリギン
・双極II型の治療:うつ状態の治療がより重要
気分安定薬のリチウムあるいはラモトリギンを基本に、オランザピンあるいはクエチアピンのいづれかを併用する。
この4つの薬物は抗うつ薬ではないが、いずれも単剤で双極性障害のうつ状態に有効であることがわかっている。
・双極性障害には抗うつ薬は単独では使わない(併用することはある)
□ 生活上の注意点:迷ったらしない!
・生活リズムを一定に保つ(特に睡眠と覚醒)
・人が集まる場所は避ける
・疲れた時はしっかり休養
※ 薬物の一般名と(商品名)
・リチウム(リーマス®ほか)
・バルプロ酸(デパケン®、バレリン®ほか)
・カルバマゼピン(テグレトール®)
・ラモトリギン(ラミクタール®)
・オランザピン(ジプレキサ®)
・アリピプラゾール(エビリファイ®)
・クエチアピン(セロクエル®)
・リスペリドン(リスパダール®ほか)
・アセナピン(シクレスト®)
躁状態の時は本人ではなく周囲が困り、うつ状態の時は本人がつらい病気。
なので、うつ状態で受診するため、最初の診断名は「うつ病」になりがちなのです。
しかし、抗うつ薬への反応が悪いため、なかなか症状が改善しません。
そして数年後、躁状態が徐々に明らかになってきて初めて主治医が「この患者さん、もしかしたらうつ病ではなく双極性障害かもしれない」と診断を再考することになるのがパターンです。
双極性障害の有名人として、作家の太宰治や北杜夫が挙げられます。
天国と地獄の気分を繰り返し経験する病気という側面もありますから、人間の感情を深く掘り下げた作品を残せたのでしょう。
北杜夫氏がうつ状態の時に書いたとされる小説群(「幽霊」「木霊」など)、私は大好きです。一方の躁状態の時に書かれたどくとるマンボウシリーズには魅力を感じません・・・。
また、よく売れっ子ミュージシャンで「メロディーが降って湧いてくる、音楽の神様が降りてきた」なんて表現がありますが、これは躁状態に近いのでしょうね。
私は天才的と呼ばれるミュージシャンやアーティストは双極性障害の資質があるのではないかと以前から感じてきました。
うつ状態になると曲が書けなくなったり、ジャズミュージシャンではクリエイティブなアドリブができなくなるので、無理矢理薬で躁状態を造る目的で麻薬に手を出してしまう、というダークサイドの歴史もあるかと。
以下は、NHK放送の健康啓蒙番組を視聴した際のメモです。
とてもわかりやすい内容で知識の整理ができました。
とくに、I型とII型で薬物療法が異なることが明確に示されていて、勉強になりました。
■ 「気分の高まりと落ち込みが時期を変えて現れる!双極性障害」
解説:大分大学教授:寺尾 岳 (てらお・たけし)
□ 頻度:日本人の100人1人(統合失調症と同じ)。
□ 発症年齢:10代後半から20代の発症が最も多いが、高齢でも発症することがある。
□ 双極性障害の長期経過;
・うつ状態を繰り返している時期は、双極性障害と診断不能。
・そのうち軽躁状態が出現するが、“軽躁”は日常生活に支障がない程度で、活動的になったり明るくなったりする(周囲は何となくヘンに感じるが、本人の病識は生まれにくい)。
・その後躁状態が出現してくる。無治療で放置すると躁とうつを繰り返し、重症型の年間4回繰り返すと急速交代型(ラピッドサイクラー)と呼ばれる病態に陥ることがある。
※ 混合状態:躁とうつが混ざる状態。気分が落ち込んでいるのに活発に動き回るので、自殺の危険が高くなる。
□ なりやすい人
・エネルギッシュでへこたれない発揚気質
・気分が変わりやすい循環気質
・双極性障害の親がいる場合は可能性が高くなる
□ うつ状態の症状
・気分が落ち込む
・興味や喜びが減退する
・食欲の低下
・睡眠の低下
・思考と活動が緩慢、焦りや不安が強くなる
・疲れやすい、気力が減退する
・自分を責めてしまう
・思考力・集中力が低下する
・自殺してしまいたい思考が繰り返される
□ 躁状態の症状
・眠らなくても平気
・自分が偉くなったように感じる
・いつもよりおしゃべり
・考えが次々と頭に浮かぶ
・注意がそれやすい
・仕事や勉強をやり過ぎる
・買い物のしすぎ・投資などに熱中
□ 診断
(問診)躁・軽躁があったかを聞き取る(家族からの情報も重要)、他の精神疾患との判別
(脳の画像検査)脳腫瘍などの脳の病気の有無を確認
(血液検査)甲状腺機能障害などの病気の有無を確認
□ 治療:うつ病より薬物療法に重きが置かれることが特徴
・うつ病:心理教育・支持的精神療法 + 薬による治療
・双極性障害:薬による治療>>心理教育・支持的精神療法
□ 双極性障害のI型とII型と治療
I型では躁状態が生活に支障をきたす。その治療は、
再発予防が重要であり、まず気分安定薬を使用し、それでうまくいかないときに新規抗精神病薬を併用する。
・リチウム:最も使われている薬物
有効血中濃度を保つことが大切で、低いと効果が期待できず、高いとリチウム中毒(嘔吐・意識障害など)が出現する。
非ステロイド系抗炎症薬・高血圧の薬(ARB)を使用している場合は使えない。
・気分安定薬は躁とうつにどう効くか?
(躁に有効)
・リチウム(前述)
・バルプロ酸:再発回数が多い例、焦燥感の強い例、混合状態、ラピッドサイクラーに有効
・カルバマゼピン:鎮静作用が強く、興奮や怒りの強い場合に使うと速く落ち着く
(うつに有効)ラモトリギン
・双極II型の治療:うつ状態の治療がより重要
気分安定薬のリチウムあるいはラモトリギンを基本に、オランザピンあるいはクエチアピンのいづれかを併用する。
この4つの薬物は抗うつ薬ではないが、いずれも単剤で双極性障害のうつ状態に有効であることがわかっている。
・双極性障害には抗うつ薬は単独では使わない(併用することはある)
□ 生活上の注意点:迷ったらしない!
・生活リズムを一定に保つ(特に睡眠と覚醒)
・人が集まる場所は避ける
・疲れた時はしっかり休養
※ 薬物の一般名と(商品名)
・リチウム(リーマス®ほか)
・バルプロ酸(デパケン®、バレリン®ほか)
・カルバマゼピン(テグレトール®)
・ラモトリギン(ラミクタール®)
・オランザピン(ジプレキサ®)
・アリピプラゾール(エビリファイ®)
・クエチアピン(セロクエル®)
・リスペリドン(リスパダール®ほか)
・アセナピン(シクレスト®)