母に目標を持ってもらおうと、2月から5月の連休が終わったら東京のおばさんのところへ行ってみようと言っていた。
駒込で美容院を経営している叔母。母とは腹違いで年も一回り下。元気な叔母。母が入院した時もとっても心配していたが、年末で忙しくなかなか時間が取れなくてこちらへこれなかった。(こちらでも、忙しそうだったので遠慮したのだが)
その頃、本人は元気なのだが血液検査をするとクレアチニンの値が(腎臓機能を表す)3.4ぐらいあった、基準値は0.4~1である。4になると透析が必要になるそうだ。しかし、母の場合は90歳では透析はできないようだ。
それでも、1月半ばには2.24まで下がり退院。それから、毎月下がり5月2日にはなんと、1.92になった。これには担当の腎臓内科の医者も喜んでいた。
毎日飲んでいる薬は近くの内科の病院でもらっている。そこの先生も、喜んでいた。「気持ちが晴れるようだよ。この年では一度数値が悪くなるとなかなか回復することはなく、だんだん悪くなるんだけれど。うれしくなるね」と言っていた。
妻も喜んでいる。毎日、母の食事を作っていた。野菜は何度も湯でこぼし、ゆでられないものは水につけ少しでもカリュウムをのぞいていた。コメは低たんぱく米をインターネットで取り寄せ、塩分は低塩でもおいしいように苦労をしていた。それだけでなく、毎日何を作るかで苦労をしていた。もう、4か月以上になる。
これならば、いけるかなと5月の24日に叔母と相談をして決めた。
杖をついて、そろりそろりと歩くので、ながくは歩けない。これではと、手押し車のような補助具をリースすることにした。ケアマネージャーに相談するとすぐにカタログをもってきてくれた。
ちょうどよさそうなのがあったので、それにするとなんと、介護保険を使って毎月200円だというではないか。リースとはいえ5千円ぐらいはかかるのかなと思っていたので大喜びである。
いよいよ出発の日である。天気は花曇り。ちょうどよい。暑すぎず寒くはない。朝9時に出発をして、1時間ほどでパーキングエリアで、トイレ休憩。駐車場からトイレまでなるべく近くに止めても30mぐらいはある。補助具を使って押して歩くと、杖とは比べ物にならないほど楽に歩く。普通の人がゆっくり歩くぐらいで歩ける。トイレの中には妻がついてくれる。ここだけは僕が入れない。
そこから、45分ぐらいすると、ナビが「目的地に着いたので案内を終了します」といった。どこが叔母さんの美容室だっけなと見回すと、そこは美容室の真ん前だった。以前来た時から改装してあって一瞬わからなかった。割と地味なつくりだが品のいい作りだった。
叔母さんが飛び出してきた。
「さっきまで外に立って待っていたのよ。元気になったわねー。お寿司屋さん、もうすぐ開くから、それまでに頭を切ってあげる」そういうと、母だけでなく僕も妻も椅子に座らされて、おばさんだけでなく、お弟子さんやお客さんの頭を終えた店長さんも入って、僕たちの頭を洗いどんどんカットをはじめ、あれよあれよという間に終わってしまった。
「それではお寿司食べに行こう」とおばさんは元気。母の90歳から見ると、78歳は若い。
いかにも下町のお寿司屋さんだ。おいしいお寿司を気取らずに食べさせてくれる。シャリもいくらか大き目。マグロは絶品。おいしかった。
帰りには、母はやはり疲れたようだ。車で少し横になっていた。
ちょっと。遠くまで来てしまったが、楽しい一日だった。