若い人が書いた本が読みたくなって、探したら、朝井リョウという人がいたので、この本を買ってきて読んでみた。
これは19歳の大学生の時に書いて小説すばる新人賞をとったようだ。
新人賞とはいえ19歳だから、どんなものなのかな。なんて、思って読み始めた。
タイトルのとおり、桐島くんが高校の部活をやめることにより、おなじ部活のものはもとより、違う部活にいる人や、部活に属さない人までに、影響が及んでいく。
桐島くんのことを知らないだけでなく、やめたことを知らない人までにもである。
そんなことを、オムニバス形式で書いてある、青春群像。
これを読んでいたら、もう40数年前にもなる高校時代のことが蘇ってきた。
読み進むうちにその頃との距離が縮まって来た。
「自分は誰より『上』で、誰より『下』で、っていうのは、クラスに入った瞬間になぜだかわかる』
こんなところを読むと、小学校、中学校、高校の時の自分の姿がそのまま思い出されてきた。
それは胸の中のモワーッとしたものと一緒に。
みんな、仲は悪くはなかったけれど、「差別」はあった。
僕は幼稚園や小学校の頃には人と口を聞くのが苦手だった。
心の中では、人には負けないという自身だけはあったのに。
それでも、だんだんと話せるようになり、高校の頃には普通の人と同じようになった。
しかし、傍目には普通に見えても、内面はさほど変わってはいなかった。口を聞けないことの裏返しのように妙に明るく振舞っていた。
前田涼也がカメラ越しに好きな子をみるとき、
「かすみは僕をらを笑わないで、カメラを指ささないで、しんとそこに存在する。
僕はこのレンズが僕の瞳になればいいと思った」
ここを読んだときには、胸の中にあの頃の甘酸っぱい思いが、昨日のことのように湧き上がってきた。
胸の中の熱を、どう表現していいかわからなかったあの頃を、心の僅かな動きを見逃さずに書いてくれた。
やはり、新人賞を取るだけのことはことはあるなと本を閉じた。
未来を目指して生きる力を思い出させてくれた。