11月7日(日)
のど自慢みている外のうららかな
寝ながら読んでいた本に音を立てて食べる人は男性に多い、と書いてあった。大体が飲み会など騒々しい場所でビールをぐいぐい開けているものだから人さまが食べているときの音など耳にすることはまれである。どこかで人は音を立てて咀嚼することがみっともないことだと教わる。男性は親からのようだと書いてあったった。このまま縁が続けば一緒に暮らしてもいいかと思う人がいた。
ある日我が家で食事ということになったときである。大きな猫がテーブルを囲んでいるのかと思うくらいその人は音を立てて食い始めたのだった。勢いが付けばつくほどけたたましくなっていく。付き合いも日がたっておりかりにもこの人と共に暮らすこととなったとしてここまで音を立てて物を咀嚼しているのに耐えられるかろるむという選択肢を迫られた。そしてどうにもいたたまれなく何も言わずしてそっと離れたのだった。この人は親から注意をされず成人してしまったのだ。マリコさんと知り合う前だった。ずいぶん昔のことである。
何年か前そんな昔ではなかった。この人と再び相まみえる機会があったのだった。アタシも十分に歳を経ていて事の善悪などどうでもよくなってきている。いわずもながのことを言ってそのことを告げたのだ。食事時のマナーなどいきなり切り出されて不愉快な思いをさせたに違いない。しかし気になる人であったからこそ言わねばならなかったのだ。一度結婚はしたもののすぐに分かれたということも耳にしていた。むろん何があったのかはわからない。アタシはこの時この人の親になっていたのだった。
たぶんものすごく傷つけたことであろう。と同時にどうでもいいことを告げてアタシは恨まれている。気が付けば発行している個人誌も届かなくなっていた。抹消されたのだ。たぶんコロシタイほどキライであろうなあ。
寝ながら読んでいた本は 月夜の散歩・角田光代 であった。