ラヴェル スカルボ (夜のガスパール) - Ravel Scarbo (from Gaspard de la nuit)
こころもたびをする
たびはおもしろいが
それなりに面倒でもある
いつずけてしまうと
ちゅうとはんぱのデッサンみたいに
いつかんせいするのかわからなくなる
小路にはいりこんで
どこへでるのかスリルもあるが
たいていはどこにでもある
工場の裏口かドブにかかったちいさい橋にゆきあたる
それでもいろづいた秋の木の葉が
絨毯を敷いて
さあどうぞといわんばかりの景色にであうと
股旅ものの映画をおもいだす
居続けるとすぐいとおしいきぶんになって
もときた道をもどってゆく
これをさかのぼり旅という
時雨など降ると、きみがこころに秋や来ぬらん(*1)
袖触れ合うも旅の縁とかおもい
寅さんのように鼻歌でつぎの街めざして(*2)
秋晴れのそらのしたテクテクとゆく
山頭火のように白い雲をめざしてゆくか(*3)
こころなんて死活問題のひとつだけれど
なんてことはないふつうにいえば、気分です
蒲団のなかのダウンです
左右上下からおされてははねかえしたり
圧力にたえていることもある
たいせつな麦藁ですが
これでは蟻がおおきな獲物を
巣にはこんでいるすがたににている
そういえば旅には荷物がついてくる
(*1)古今和歌集より
(*2)映画の「寅さん」
(*3)山頭火句集より