哀しみの行方
哀しみは
かさかさと
おおきな函の中で
時々鳴る
その音をきくと
いくつかの物語が
動画になる
哀しみは
かさかさと
砂漠みたいに寝そべって
空洞のような場所から
時雨のように
降ってくる
哀しみは
かさかさと
小さな動物のように
生きている
おおくは暗闇の中で
哀しみは
かさかさと
じぶんで這いだして
屋根のうえのペンペン草のかげで
滂沱の涙をながす
哀しみは
かさかさと
砂のようになったり
濁流のようになったりして
やがて青空のなかへきえる
かさかさという音は
風の音だったのかもしれない